第14話 鋼鉄の勇者
あっけにとられボカンと口を開けた人々の前を、そのあまりにも巨大な鉄の箱は轟音を立てながらゆっくりと進んでゆく。
その後には十数台の馬車が続き、さらに、数百はいるだろうか、数えきれない武装した男達が続いている。
男達は薄汚れて古びた王国時代の兵装だが、不思議な凛々しさを身にまとっている。
あちこちに混じる、もはや白髪の老兵となった男の目にも、かつての光は消えていない。
使命と決意を心に秘めた戦士の瞳だ。
港の広場で、ふいにその鉄の巨体が歩みを止めた。
「エレファスここでいいのだな。」
パオーン〜
鉄の箱からするすると一人の男が下りてきた。
「私は港の長をしているニコと申す。あなたは?」
「わしはバーリ。そしてこいつは戦友のエレファス。
わしが作り、あの美しい王女様に名を授けていただいた栄光ある戦車だ。」
「この町を助けに来てくれたんですか?」
「いや、エレファスがわしらをここに導いてきた。
わしと兵士達は、ただエレファスが目指す場所に続いてきただけだ。
そこに答えがきっとあると。
王女様が旅立ったあの日から、わしの時間は止まっていた。もう時は永遠に動き出すことはないと思っていた。
ところが、行方が分からなかったエレファスが突然動き出し南へ向かっていると聞き、居ても立ってもいられず彼を追いかけ一緒にここまで来たのだ。
この男達は皆、王女様とエレファスにゆかりのあるかつての戦士。
彼らも同じ。
再び動き出したエレファス。
彼に続けば、きっとあの日止まった時計を動かし、やり残したことを成すことが出来ると信じてな。」
「途中で早馬に会って事情は聞いた。
大変なことになったな。
それで、今どんな状況だ。」
「我々は馬車と徒歩で逃げる準備を始めようかと。」
「ああ、それか。
奴らの言う、無傷で町を引き渡せば逃がすと言う話か。
むごいようだが、それは大嘘だ。
奴らは、あの戦いで人的、物理的に莫大な損害を受けた。
王女様の驚異的な回転魔法によってな。
それこそ、国が傾くほどに。
それから、長い年月をかけて彼らは力を取り戻してきた。
全ては我々への復讐のため。
奴らをつき動かしているのは、果てぬ欲望と恨み。
欲望に従い、勝手に他の国を攻め、そして大敗し、勝手に恨んでまた攻めてくるとは。
情けをかける?
そんなものは最初から持ち合わせていないのだ。
王女様がいない今なら、
容易にそれを成すことが出来ると奴らは考えている。
我々への徹底的な復讐をな。
はなから、誰も助ける気などない。」
「もはや、戦う以外に生き残る選択肢は無いのだ。
我らは兵力では大きく劣るだろう。
敵は数千、我らは数百。
しかし彼らは、そこいらのただの兵士ではない。
自らの意思で、成すべきことを成すために集まった猛者達だ。
そして、エレファス。
こいつの魂は、今赤々と燃えている。
かつてない程にな。
こいつはただの鉄の塊ではない。
鋼鉄の勇者エレファス。
魂まで鋼鉄で出来ている。
奴らは、けして起こしてはならないものを起こしてしまったのだ。
奴らは、けして怒らせてはならないものを怒らせてしまったのだ。
余計なことをせず、眠らせておれば良いものを。
しかし、もう遅い。
エレファスの怒りが収まるまで、奴らは地獄を見るしかあるまい。」




