自己満足じゃ満たされなくて
ドンっ! ガンっ!! この街で一番栄えてる商店街の路地裏で今日もぼくは殴られる。ぼくの顔はきれいらしいから殴られるだけでお金がもらえるんだって。殴られるのは痛いし怖いけどそれが嫌だと思ってことないは。だってぼくは、悪い子だから。
お金を稼ぐのには理由があるんだ。
「こんにちは、ティナに会いに来ました!」
ティナはぼくの幼なじみ。いつも夕方に会いに来てるんだ。
「こんにちは、ティナちゃんはいつものところにいるよ」
ティナは持病が悪化して寝たきり。手術するにはたくさんのお金が必要だけど、ティナの家族が払わないからぼくが払ってるんだ。そういえば、ぼくはティナの家族に会ったことがないし、そもそも居るのかすら知らない。でも、そんなこと気にならないし考えてる時間があんまりないんだ。だって、今日の夜にはぼくの肺を買ってくれるおじさんが来るんだよ。手術代は学校に行ったことがないぼくでも分かるぐらいに高いから、いっぱい買ってもらわないといけないんだ。
そういえば、ぼくに使うのは持ったいないからって麻酔?っていうのは使ってもらったことがないけど、それを使うと痛くなくなるらしい。気になるけど、使ってもらえないって分かってるから考えない。
もうすぐおじさんとの集合場所につくんだ。そこはティナがいる病院から少し離れるけど、よその町から来るおぞさんよりは近いからいつもぼくが先にいるんだ。
「こんにちはおじさん、今日は肺だよね?」
「いや、今日は肺のほかにもう一つもらいたくてね」
「、、いいけど、ちゃんと買ってね。それで?どこがほしいの?」
そう聞くとおじさんは手を伸ばしてぼくの頬に触れて目元をなぞり、何時も帽子をかぶっていて見えないおじさんの目が大きくひれかれていて、頬は赤く、、口からは荒い息が吐かれていた。
「君の瞳だよ。一つでいいんだ。うってくれるだろう?」
そういうとおじさんはぼくの手足を押さえつけて口を布でふさいだ。ぼくは初めてお金を稼ぐのを怖いと感じた。けど拒まない、、だってぼくは悪い子だから。
ぼくの青緑色の瞳がだんだんと暗くなっていく、、、
目の前は真っ赤で、手足がべとべとしている。肺を買ってもらった影響か、息がしづらい。ぼくの胸のあたりは大きく切れていて、縫われていないようでぐちょぐちょしている。
動くだけで意識が飛んでしまいそうなぐらいに痛い。声は外に出なかったけど、ずっと叫んでいたからか喉もとても痛い。立ち上がった時に手に水が降ってきた。今は雨が降っている様子はないけど、頬が少しだけ濡れているから雨が降ってたのか、血がついているのかの二択だと思う。ここに鏡はないし、水たまりもないから確認することができない。
ぼくは右側がよく見えない体で、路のはじの方に置いてあった真っ赤なお札の束をリュックに入れて背負った。
だんだんと寒くなってきて手足の感覚がなくなっていく、、、今日肺を買ってもらえば手術代に届くはずだったけど、そこに瞳の代金も乗せてもらったから、後はティナがいる病院の人にお金を渡して手術してもらうだけでいい。
今のぼくには手術の失敗や成功したとしてもティナが起きない可能性とかは考えているよゆうはなかった。
おぼつかない足取りで病院まで歩いていく。ぼく自身は急いでいるつもりだけど、とてもゆっくりしか進まない。右側が見えないから何度も壁にぶつかったし、たくさん転んだ。そのせいで体中痛いし、もっと赤くなったけど、、病院に着いたらどうでもよくなった。
いそいでティナの担当の先生を探した。先生はぼくを見た時に驚いていたけど、すぐにお金を受け取って手術室にティナを連れてった。
「ティナ、、手術がんばって、、、」
ティナの手術が成功することを願いながら、病院を出て路地裏に向かった。ここは月明りで明るく、文字を読むには最適だ。ぼくは、ティナからもらった手紙を開けた。
〈大好きな幼なじみへ〉
いつも体がよわいわたしといっしょに遊んでくれてありがとう。いっしょに先生に教えてもらった漢字をたくさん使って書いているからよめるかな?わたしはじぶんで書いたあとに読めなくなってしまって先生といっしょにお手紙のまちがいをさがしました。
この前先生が 「もう外で遊べませんね」 って言ってたから、いっしょに雪遊びができないの。ごめんね。この冬のあいだにわたしはねむっちゃうって先生が言ってたからあと少ししか遊べないね。
おへやでなら遊んでいいって先生が言ってたからいっしょにあそべるね!お父さんとお母さんはいそがしくてわたしに会いに来れないって言ってたからいつ来てもだいじょうぶだよ!トランプやすごろくがあるし、まだいっぱい遊べるね!
おたんじょうびが来る前にわたしはねちゃうらしいので、早めのプレゼントまってます!
〈ティナ・トゥーラーより〉
「ティナともっといっぱい遊びたかったなぁ、、プレゼント、もう寝ちゃっててあげれなかった」
目の前が滲んできた。ただでさえよく見えないのにもっと見ずらくなっちゃった。もうぼくの意思で動かせない体でその場に倒れこんだ。今は夏だからとても暑いはずなのにぼくはとっても今寒いんだ。だんだんとやってくる眠気にあらがわずにぼくは夢の中に入ることにした。
「、、、、ばかだなぁ、、ティナはもういないのに、、、、、」
おやすみ。今会いに行くよ、、、、、、ティナ、、、
瞳を閉じる間際、暖かな青緑から色が失った。