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猫
電車に揺られ僕は窓から外を眺めていた。「前の席、いいかしら?」「ああ、どうぞ」
女は手に持っていた網かごを膝の上に置き、僕と向かい合った。僕はそのかごに興味を持った。
「それは?」「飼い猫ですの」
「へぇ、ちょっと見せて貰っていいですか?」 どうぞ、と女は僕にかごを差し出した。僕は笑みを浮かべながら、かごを開けた。
「!」
中を見て、僕は思わずかごを投げ捨てた。「何するの!」
女は慌てて席を立つ。
「すみません、しかしそれは…」
女はかごと『中身』を拾いながら呟いた。「数日前、この子ったら動かなくなったのよ」
完