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殺人者の遺影
遺影が増える。
僕の脳内、遺影が増え続けている。
僕は喪服のネクタイをほどき、洗面台で顔を洗った。もう誰が死んでも覚えていられない。遺影が僕に笑いかけてくる。そんなはずはない、彼らは僕を憎んでいるのだろう?
数ヶ月後、愛犬が死んだ。僕は死体を庭に埋めに行く。
遺影が増える。
死体が半分ほど埋まった頃、遺影が僕に囁きかけてきた。走れ、と。
僕はどこへともなく走った。正面から大型トラックが迫ってきた。
あぁ。
また、遺影が増える。
僕が殺した者達に混ざって。僕の遺影が。 僕の遺影に居場所はない。
完