一話
「出てけ!!使えもしねぇクソガキが」
その一言で俺が13年間築きあげた家族の絆というものが崩れた
いや元々なかったのかもしれない
だって父母が求めていたのは俺の才能だったのだから
それからアリスはさまよい続けた
俺の住むベルムーン王国はネオ大陸にあり五つの国のうち南東に位置する
そして国同士の戦争や魔族との戦いは常にあり毎年多くの村人が軍学校へ行く
その際、魔力測定と神器継承を行い、そこで素晴らしい人材を輩出した家には莫大な報酬が渡され一生安泰なのだが、俺は神器を継承できなかった
一応軍学校には通えるが神器を継承できなかった家にお金は一円も払われない
神器の力は絶大であり個々で差はあるが一般人が使用しても普通の武器を持った超一流騎士に匹敵する
十人に一人ぐらいで神器を授かれないのだが、残念なことにアリスはこの一人に選ばれてしまった
それが原因でこの結果を招いた
「(あぁここでつまづくのか 全てうまくやってきたはずなのに でも、神器なんかなくたって俺には才能がある きっと、きっと周りより優れた者に、、、)」
人生で味わったことのない感情に揺さぶられ気力を失いかけるアリス
心身共に疲れ切ってボロボロになりながらも歩き続けると、国境を越えていた
アリスはふと周りを見渡したが周りには木しか見えない
「気づかないうち魔族領まできてしまった 早く戻らないとめんどくさいことに、、、って戻るところもないか」
帰るところもなく半ば自暴自棄になっていると一人の女性が現れた
「君はどうしてこんなところにいるんだ?」
その女性は鎧をまといたくましい姿で誰もが後ろからついてきたくなるような風貌だった
アリスもこういう立派な騎士に憧れたことはあり、少しだけ見惚れていた
「、、、言葉がわからないのかい?もしかして魔族なのか?」
人間と魔族は似ているが違いは一目でわかる 翼と角があるからだ
もちろんアリスにはないが、ここが魔族領であることと言葉がわからない雰囲気を見れば魔族と疑ってしまうのも無理はない
今でこそ優しさを感じるが魔族と思われたら豹変するだろう
それを避けるため口を開いた
「いえ、、魔族ではありません いろいろあって歩いていたらここに着いたんです」
アリスにはこれを言うのでやっとだった
「魔族なわけなかったか でもそうなると一人で返すわけにはいかないな 仕方ない、今日はもう遅いから私が担いで連れて帰ろう 私は元騎士のレイ・マグワイアだ よろしくな
それじゃあ案内してくれ」
このテンポよく明るい自己紹介を聞いていなかったかのようにアリスは返した
「…です」
「ん?なんか言ったか?」
「帰る場所なんてないです、、、今日家から追い出されたので帰る場所なんてないです」
予想以上に深刻な事態で戸惑うレイ
「困ったな 私にはどうにもできないしな、、そうだ!
とりあえず今日はうちにくるか! そうと決まれば今日はご馳走だ」
少し浮かれているレイはアリスのことなど気にも留めず担ぎ上げ自宅へ足を運んだ
アリスは何か言いたかったがそのまま目を閉じてしまった
レイは少年をつれ森の中にある小屋へはいりベッドに寝かせた
「しかし、家がないというのはどうしたものか
とりあえずこの子がおきたらいろいろ話を聞こうか」
レイはアリスが起きるのを待ちご飯を作っていたが結局その日は起きなかったため一人で全て食べた
翌朝になってアリスから事情をきいたレイは悲しみの表情を浮かべつつ優しい声で話した
「アリス 今日からお前は私の子だ アリス・マグワイアだ
これからは私と一緒に暮らそう」
この問いにアリスは何も言えなかった
そこには大きな恐怖と少しの期待があった
なんとなくアリスの気持ちがわかるレイは少し間をあけて言葉を続ける
「心配いらない なんせ私が引き取るのだから! 魔族がいくら来たって返り討ちにしてやるさ それに町へ行きたいなら今すぐ引っ越そう お金もたくさんある そしてなにより美人なお姉さんの子になれるんだ こんなこと滅多にないぞ?」
急に変なことを言われ戸惑いを隠せなかったがなんとなくこの人なら大丈夫、そう感じたレイは首を一度だけ振った