四月 第五部
四月の終わりが近づき、五月が迫りくる頃、月崎 一叶の姿は放課後の図書室にあった。
土岐さんが、彼女が委員会の当番の時は、僕と一緒にしたいという提案をしてきた。
僕の仕事量増えるくね?と思ったが拒むことはしなかった。いつも天麻と遊ぶくらいの用事しかなく、これといって大変な仕事でもないので、特に断る理由が無かったからだ。
委員会の先生も「ま、上級生がいた方が安心か」と言って許可を出した。まあ、そうだよね。先生的には僕がいてもデメリットないもんね。
と、いうわけでかっこいい名前のクラスメートより、初々しくかわいい後輩をとった。当然だな。
「月崎先輩、ほんとーにありがとうございます。言い出しっぺは私ですけど、助かります」
「全然いいよ、僕は僕でメリットがあるから」
「そうなんですか?」
「ああ、合法的にこのエアコンの効いた空間に居座れる。ただ涼みに来ただけだと後ろめたさがあるから」
理由としては嘘ではないが、気を遣われないようフォローしておこう。
「うーん、確かに涼みに来ただけだと白い目で見られそうですね」
おお、こんなてきとうな理由で納得してしまった。素直な子だ。大丈夫かな、悪い人に騙されたりしないかな、お兄さん心配だよ。
こうしてカウンター内で話していても、怒られることはない、大きすぎなければ。まあ、注意するような人もいないけど。
「あ、そうだ。先輩、LINE交換しましょ。ね?ね?」
何かに気が付いたような声を上げたかと思うと、なかなか強引に迫ってきた。既にスカートのポケットからスマホ出して準備している。
「ああ、いいよ」
特に気にせず、快諾して僕もスマホを出す。
「はい、交換っと。ん?」
すんなり終わり、映し出されている画面を見ると、
「とっきー…」
どこかで聞いたことがあるような名前だった。背中がむず痒くなってきた。
「はい!とっきーです。いいあだ名だと思いませんか?先輩も私のこと、とっきーって呼んでいいですよ」
「う、うん。いいあだ名だとは思うよ。でも、僕はこれまで通り土岐さんって呼ばせてもらうね」
「えぇー、呼んでくれないんですかぁ。まあ、無理強いはできないですけど」
ごめんよ土岐さん。それだけはできないんだ。許してくれ!
「えへへ、これで何かあったとき先輩に連絡しますね。なくてもします!」
「うへへ、これで…」って悪い笑みが零れてますよ、お嬢さん。まさか、何か企んでいないだろうな…怖くなってきた。
悪いようにはしないだろう。そう、祈るばかりだ。
てってれー!一叶は土岐さんのLINEをゲットした!こちらインベントリの大切なものに入れておきますね~
LINE交換する時ってなんか音とかでるの?わからないから詳しく書けなかったよ…