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四月 第四部

前回の話から数日経っています


 睦姫(むつき)の作ってくれた弁当を食べた昼休みが過ぎ、放課後となった。


 ちなみに、天麻(てんま)はあのあと、一度だけ睦姫(むつき)の弁当を食べ、次の日からはいらないと断った。天麻(てんま)曰く、「ただの興味本位」「一度だけ食べてみたかった」とのこと。あいつなりに気を遣ったんだろう。


 直前の授業で使ったもの片づけながら、この後のことを考える。今日は確か委員会があったな。


「なあ、月崎(つきさき)一緒に帰ろうぜー」


 お馴染みとなった天麻の声がした。


「悪い、今日は図書委員なんだ。たぶん、一年が来るからさっさと行くわ」


 そそくさと片づけを終え、カバンを掴んで立ち上がる。


「くそー、俺の図書委員がー」


 なぜか項垂(うなだ)れている。


「別にお前のじゃないだろ」


 てきとうに返事をして「じゃあな」と言い教室を出る。まだなにか言ってるがそこは無視する。


 図書室は教室棟の一階、その奥にある。さすがにまだ来てないだろうと思いつつ一応、図書室の入口を確認する。


(よかった、まだいないな)


 一息つき、図書室へ向かう前に、先に職員室にカギを取りに行く。


 職員室の扉を開けようと手を伸ばすと同時に、中から扉が開いた。


「おっと」


「わぁ」


 僕は突然扉が開いたことに、相手は扉の前に僕がいたことに驚いた。


「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」


「ああ、僕の方こそごめん。そっちも大丈夫?」


「はい、大丈夫です。すみません」


 お互い謝りあってしまう。


「あっ、それでは私はこれで。委員会の仕事があるので」


 そう言うと会釈をして行ってしまった。そうだ、僕も委員会があるんだった。それにしても一年生ながらもう委員会に前向きとは真面目だな。


 なんて考えながら、彼女の向かった方向は見ずに職員室に入る。


「失礼しまーす、図書室のカギ借りに来ました」


 用件を伝えながら中に入る。「おう」と誰のかもわからない返事を聞きカギを取りに行く。しかし───


(あれ?カギがない?)


 不思議に思っていると、近くにいた先生が話しかけてきた。


「図書室のカギって言った?それならさっき一年生の女の子が持って行ったよ」


 一年生の?女の子が?持って行った?腑に落ちないが「失礼しました」と職員室を出た。まあ、無くなったわけじゃないならいいかと思い、図書室に向かう。


 カギを持たぬまま、図書室の扉に手を掛けると、抵抗はなく開く。そのまま中に入る。


「あっ、貸出ですか?ご、ごめんない私一年生でどうすればいいのかわからなくて…その…」


 中に入ると、一人の女子生徒がこちらを見て慌てている。前髪をピンで留め、顎のラインで揃えられたショートの黒髪がかわいらしい。


 わたわたと慌てているその姿はかわいいが、さすがにこのまま何も言わないのは可哀そうか。


「いや、僕は利用者じゃなくて君と同じ…って君は…」


「え…?あっ、あなたはさっきの」


 そこにいたのはさっき職員室の前で会った女の子だった。


「君がカギを借りていった後輩だったのか」


「あなたが同じ図書委員の先輩だったんですね」


 二人してくすくすと笑いだす。とりあえず、二人ともカウンターに入り椅子に腰を落ち着かせた。


「じゃあまずは自己紹介を。僕は月崎(つきさき)、よろしく」


「あ、はい。私は土岐(とき)っていいます。よろしくお願いします」


 椅子に座ったままお互いにお辞儀する。


「んじゃあ早速だけど、仕事の説明するか~」


「はい!でも、大丈夫なんですか?だれか来たら…」


 ちらりと、入口の方を見る。


「ま、その心配はごもっともだけど大丈夫。どうせ誰も来ないから」


「あー、そうなんですね…」


 ずいぶんとやる気があったようだが、今日、そのやる気を活かす機会は訪れなかった。


月崎(つきさき)先輩…もしかして、この委員会ってすごく楽では?」


 説明が終わるころには、すっかり閉館時間が迫っていた。


「その通り。めちゃ楽だよね~」


 この一日で既に察したらしい。よかったな、楽な委員会で。


「微妙にやりがいを感じないけど…ま、いっか」


 もうちょっと骨のある仕事がしたかったらしい、諦めたみたいだが。


「そろそろいい時間だし、閉めようか。最後の閉め作業の説明するよ」


 そう多くない作業の流れを説明して、外に出る。


「で、最後に扉のカギをかけて終わり。あとは、カギを返すだけ」


「なるほど、なるほど」


 相槌を打ちながら、一から十までメモを取っている。ごめんね、こんなてきとうな先輩の教えで…。真面目にメモ取るほどのものでもないだろうに。


 メモをカバンにしまい、歩き出す。


「それでは、職員室にカギを返しに行きましょう」


 張り切ってずんずん進んでいく。


「ああ、いや、土岐(とき)さんは先に帰っていいよ。僕一人で行くから」


「えぇ、でも…」


「カギのことは最初に一人でできてたし、大丈夫でしょ。じゃ、お疲れー」


「あぁ、はい、お疲れ様です…」


 少し不満そうだったが、下駄箱の方へと歩いて行った。


 カギを返し終え、職員室から出る。そのまま下駄箱に向かい、靴を履き替える。


 下駄箱とは逆方向のグラウンドからは運動部の元気な声が聞こえてくる。睦姫(むつき)はまだ、部活中だろうな。


「先に帰るか」


 今日は一人で家までの道を歩いた。


新キャラ土岐さん登場!投稿時点では、下の名前が決まってません。

ちなみに、プロローグの場所は図書室です。

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