四月 第二部
思う存分天麻と遊び、日が沈みかけた夕方、帰り道で見知った顔を見かけた。
(あれは、睦姫か?部活帰りでみんなと寄り道か。元気だな)
そんなことを考えていると、心の声が聞こえたかのように、睦姫がこちらを見た。
「あ!一叶だ!おーい!」
ぶんぶんと大きく手を振ってくる。本当に元気だな。あと、名前呼びながらはしゃがないで、恥ずかしい。
小走りで睦姫のもとへと近づく。
「元気なのはいいことだけど、大声で呼ぶのはやめてくれ。恥ずかしさで逃げたくなる」
「もぉー、一言目にそんなこと言うー?別にいいじゃん」
まったく、こちらの気も知らないで。呼ばれる身にもなってほしい。
「でも、そんなこと言いつつ逃げずに来てくれる優しい一叶が好きー」
「はいはい、来なかったら来なかったで追いかけてくるくせに」
「それはそれだよ。一叶から来てくれるからいいんじゃん」
「お前が呼んだんだろ」
そんなやりとりをしていると、後ろにいた睦姫の部活仲間たちがニヤニヤとこちらを見ていた。
「じゃ、一緒に帰ろ一叶」
「ああ」
「じゃあねー」「また明日ー」と睦姫の挨拶を見守り並んで帰る。
「それにしてもよかったのか?」
「なにが?」
「いや、お前ひとり抜けてきて。まだ、寄り道したりとかないのか?」
そう言いながら、少し後ろを振り返る。
「大丈夫。もともとあそこで解散する予定だったから」
「そうか、ならいいんだけど」
「なーにー?一叶は私を心配してくれてるのかなー?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。さっきの女子たちと同じ顔しやがって。
「ああ、部活内で睦姫がギスギスしだしたら、僕のせいみたいで嫌だからな」
「ふーん、そっかー、一叶はやっぱり優しいね」
まだ、ニヤニヤしてやがる。腹立つ顔してるな。
「このまま部活内でギスってしまえ」
「ひどーい!そんなこと言ってほんとになったら一叶のせいだからね!」
「なんでだよ、僕を呼んだのはお前だろ。責任転嫁するな」
「一叶が言ったんじゃんかー」
そんな言い合いをしながら家路についた。なんだかんだと言いつつ短く感じた帰り道だった。
四月編までは主要キャラたちには読み方を振っておこうと思います。とはいえあと一人くらいですけど。
一叶と睦姫は付き合っていません。ただの幼馴染です。付き合ってるとコンセプトが崩壊するので。