表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/49

四月 第一部

  ___四月



 今年の桜は良くか悪くか三月の卒業式ではなく四月の入学式に満開日となった。満開になったそばから、地面に花びらを敷き詰める桜を横目に入学式は執り行われた。


 一年生が入学式を終え教室へ移動し、残りの二・三年生は、いつもより広い体育館で始業式が始まった。


 いつも通りの長い話「上級生として新入生の見本になること」「学生らしく勉学に励むこと」などのお決まりの話が終わり各々の教室へと移動し、HRが始まる。


 新学年恒例の担任の先生や生徒の自己紹介がつつがなく済み、二年生ということもあり早速、クラス委員長やその他委員会を決めていく。


 こういう場合クラス委員長には、その素質がある人が真っ先に立候補するものだから任せておこう。…ほら、案の定立候補者がいた。


 担任の…確か若井先生が他に立候補者がいないことを確認して、いかにもといった人物を任命した。そして、「あとのことはよろしくね~」と言って丸投げした。生徒の自主性を重んじているんだろう、面倒くさがったわけではない、きっと。


「それじゃあ、こういうのはさっさと決めるに限るから、委員会の名前を読み上げるから希望があれば、挙手をして名前を言ってくれ」


 さすが自分から名乗り出るだけある。手慣れた様子で、委員長の南都香くんはテキパキと進行していった。


 そんな委員長の様子に感心していると、後ろから背中をつつかれ名前を呼ばれた。


「なあ、月崎(つきさき)。お前、何になるかきめてるか?」


 後ろを振り向き、呼んだ人物を確認し答える。


「ああ、一年の時と同じでいいかなって思ってる。そういう天麻(てんま)はどうなんだ?」


 こいつとは一年の時同じクラスになり、それからの付き合いだ。まさか、また同じクラスになるとは。というか、こいつの苗字いつ聞いてもかっこいいな。


「一年と同じってことは…なんだっけ?ちなみに、俺はなにもしたくねえ」


「僕は図書委員だった。あと全員なにかしらしなきゃいけないらしいぞ」


「まじかよ~」


 目に見えてテンションが下がっている。実際、机に突っ伏している。


「ほら、さっさと決めとかないと、とんでもないことになるぞ」


「くそ~、俺も図書委員になろうかな…」


「おい、やめろ。図書委員は一枠しかないんだぞ。ほかのとこに行け」


 そんなやりとりをしていると、当然のごとく委員長に注意された。


 この後は、何事もなく進んだ。いや、一つだけあった。まさか、天麻(てんま)が本当に図書委員に立候補するとは思わなかった。なんとかジャンケンに勝ち、枠をもぎ取ったが。


 長いHRが終わり、昼前の早い時間で放課後となる。挨拶を済ませた教室内では、勉強などという酔狂な真似をするものはおらず、皆が一様に話に盛り上がっていたり、遊びに行こうとしている。


「なー、月崎(つきさき)ー、俺らもこれからどっか遊びに行こうぜー」


 たいしてない荷物をまとめていると、また後ろから声がかかった。


「まあ、そうだな。特にやることもないし」


「よっしゃ!じゃ早速いこうぜ。善は急げだ」


 この行いは善なのか?学生としてはむしろ悪なのでは?始業式でもなんか言ってたような、と思っていると───


「いいなー、私も行きたーい」


 立ち上がろうとする僕と天麻(てんま)に、明るい声が聞こえた。


 振り返るとそこには、


「おう、一之瀬(いちのせ)、お前もくるか。いいぞー」


 一之瀬(いちのせ) 睦姫(むつき)

 胸のあたりまで伸びた黒い髪が印象的で僕の幼馴染にして、こちらも一年の時から同じクラスである。


「いいの?やった!あ、でも…」


 花が咲いたような笑顔になったかと思うと、一瞬にしてしぼんだ。


「でも、今日も部活があるんだった~」


「新学期早々部活とは、大変だな」


 ケラケラと天麻が笑う。悪趣味な道化師みたいだ。


「ま、部活なら仕方ないな。頑張って来いよ」


 僕は、ささやかなエールを送る。


「んー、私も遊びたいなぁ。部活休もうかな…」


 こらこら、二年生はこれからが主役でしょうが。新学期早々さぼりはまずい。


「遊びに行くのはまた今度にしよう。今日は部活がんばれ」


「んー」


 まだ渋っている。そんなに遊びたいのか。遊びたいか…

 

 だがその様子を察するかのようにクラスの部活仲間から声がかかり、「今行くー」と返事をした。


一叶(いちか)、じゃあ今度ね、絶対だからね」


「ああ、もちろん」


 念を押すように確認した後、荷物を持って教室を出て行った。


「つっきー、もしかして俺との遊びもお預けか?」


 睦姫(むつき)との会話が終わると、天麻が捨てられる子犬のような目でこちらを見ていた。


「いや、そんなことはない。さっさと行こう」


 荷物を持ち、二人で教室を出る。


「ん?待てよ、おい、さっきのつっきーって僕のことか?」


「早くいこうぜ、つっきー。時間は有限だ」


「まてまて、その変なあだ名をやめろ、気持ち悪いぞ」


 言い合いながら下駄箱へと向かう。

登場人物

月崎つきさき 一叶いちか

一之瀬いちのせ 睦姫むつき

ちなみに、担任の先生は若い(わかい)先生、委員長は南都香((なんとか)くんと読む。

あと、天麻は名前ではなく苗字、名前は今後わかるかもしれない。


追記、睦姫の名前を他の子と間違えていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい文章でサクサク読めました。 これからの展開に期待が持てます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ