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27【欺瞞】

転職!

土日祝が休みになるって素晴らしい!

 瞳に若干の涙を湛えたサラが、俺に抱きかかえられた姿勢でこちらをのぞき込んでくる。


「さ、サラ……! よかった、生きて……!」

「こ、これ、なに? 私、肩……!」


 サラは俺の顔を見上げ、そして右肩に視線を落とす。


「痛っ……!」

「サラ、大丈夫か……!?」


 俺はサラを抱きかかえたまま、その傷口を見る。

 出血はしていないようだが、傷口は形容しがたいほどに酷く、思わず目を背けてしまいたくなる。


「カンザキ、あの人たちに銃を下ろすように言って!」

「……え? わ、分かった。……おい、男! 銃を下ろしてくれ! サラは戻った!」


 ……だが、男と三ノ輪さんは微動だにしない。


「な、なにしてる……!?」

「あまり絆されない方がいいぞ」


 俺の呼びかけに、男は答えとなっていないような返事をした。


「だ、大丈夫だって。ほら、サラは戻ったんだ。なぁ?」

「カンザキ、助けて……」

「ほら、見ろ! サラはさっきのアイツじゃない!」

「ハッ」


 どれだけ必死に呼びかけたところで、銃を下ろす素振りを見せない男。


「おい、下ろせって言ってんだろ!! 三ノ輪さんも何とか言ってくれよ!!」

「……うん。それは出来ない相談だねェ」

「どうして!!」


 サラは戻った。意識もある。なのにどうして言うことを聞いてくれない?

 俺のイライラが頂点に達した時、サラが動いた気がした。


「……サ」


 衝撃。


「……………………ラ?」


 どうした? そう言おうとしたが、それ以上言葉を紡ぐことはできなかった。

 首元に何かが勢いよくぶつかってきた。

 目線だけで首を見下ろすと、そこには首に噛みつくサラ。


「愛いヤツよの」


 首から口を離したサラがそういう。その口元は、俺の血で真っ赤に濡れていた。

 ニヤリ、と気味の悪い笑顔を浮かべたあと、ペロリと舌なめずりするサラ。


「お、まえ、は……」

「多少演技してみたら、すぐ信用しよる。先程も、サラという少女はもう居らんと申したじゃろうに」


 ……嵌められた。が、気づいたところでもう遅い。

 男が撃ち抜いたはずの肩も、足も、傷口はすっかり完治しており、動くのにもう障害はないようだった。


「……やはりか」


 遠く離れた男が、再びサラに向かって銃を撃つ。


「くどい。それはもう見切ったわ」


 だが、それももう効かないようだった。

 全身を包むように両翼で身体を覆うと、その羽にはじかれたように、銃弾は明後日の方角へ飛んでいく。


「どうだ、少年。三度(みたび)問おう。お主、我が元へ来る気はないか?」


 再度の勧誘。

 おそらくこれを断れば、俺は今度こそ確実に死ぬであろう。


「……無理、だ」


 だが、それでも。

 俺は、人類の敵となってでも、生きたいとは思わない。

 たとえ俺が、スーパーヒーローのような力を持っていなくても。ラノベで言うところの、転生者のようなチートを持っていなかったとしても。

 それでも。


「俺は、志だけは、高くありたいんだ……ッ!」


 未だ首筋を伝う血は止まらない。

 だが、それでも、精一杯の力を込めて、カモヒガンナと名乗った女を睨みつける。


「……つまらん」


 俺の決意を、カモヒガンナはその一言で片付けた。

 力のない自分が恨めしい。

 できることなら、魔術を使ってコイツの精神を引き剥がし、サラが使ったように、俺もサラをよみがえらせたい。

 だが、初めから地球に生まれていた俺には、そんな芸当は無理な話だった。


「…………」


 静まり返る倉庫。


「……はっはっは。実に素晴らしい。これでこそ、現当主というものだ!」


 そんな空間を引き裂くように、三ノ輪さんが声を発した。


「いやァ、まだ時は早いかと思っていたが、そんなこともなかったようだね。なぁ、カンナギ君?」


 カンナギ君、と呼ばれた男は、それを聞いてニヤリと笑い、無言で頷いた。


「神崎君、君は気づいていないようだが、君には特別な力があるんだよ」

「……力?」


 俺は失血で遠くなる意識を無理やり保ち、三ノ輪さんがこれから発しようとしている言葉を聞き逃さないように力を振り絞る。


「さっきの男が言っていた『契約』の魔力導線に意識を集中するんだ」


 俺は、この世界に生きている筈の三ノ輪さんがどうしてそんなことを知っているのか、そんなことにすら疑問を抱かず、体内に意識を集中した。


「……でも、そんなもの、俺に分かるはずは……」


 そこで、気づいた。

 掴んだカモヒガンナの腕から、何か、気力のような、『何か』が吸われるような感覚に気づいた。


(これか……? これが、三ノ輪さんの言っていた……?)


 分からないが、今はこれに意識を集中するしかない。


(これだけが、今のこの状況を打開する手段なんだ……! 頼む、どうにかなってくれ……!)


 これによって、何が起こるかは分からない。

 だが、これによって、何か、現状が打開できるなら……!


「……これは、不快だな」


 目の前のカモヒガンナが、動こうと体に力を入れたのが分かる。

 が、その感覚はすぐに霧散した。


「……なッ! 小癪な……!」


 明らかにカモヒガンナの雰囲気が変わった。俺の腕を振り払おうと、全力を振り絞ったのは分かる。

 が、しかし、その抵抗もすぐになくなった。


「何故、こんな小童が、童の力を超える……!?」


 そう言うカモヒガンナに、三ノ輪さんは笑う。


「アンタの誤算は、神崎君と契約したサラちゃんを依り代にしたことだよ」

「なっ、何が……!?」

「なァ? 神より先に生まれし者の子孫、()()君?」


 三ノ輪さんの声に、耳を傾ける余力はもうない。

 今はただひたすらに、魔力に集中するだけだ。


 不意に、魔力の繋がりが強くなった気がした。


(カンザキ……)


 悲しそうな、悲痛な声。


「……サラか!!」


 その声を頼りに、意識をそこへ向かうように……!



 瞬間、周囲が光に包まれた、ような気がした。


「巫山戯るなァァァアアア!!!」


 カモヒガンナの怒号が、聞こえた気がした。

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