女神
「うッ」
斎藤勇也は目を覚ます。
そこは見知らぬ世界。
見渡す限りの真っ白な世界であった。
「目を覚まされましたか?」
声の方に目を向けると、そこには絶世の美女が居た。
勇也は思わず唾を飲み込んだ。
「あなたは死ぬところでしたが、私がお救いしました」
どういう事なのだろう?
確かいつものように夜中にスケボーを練習していたはず…
勇也はそこでトラックに跳ねられそうになった事を思い出す。
「あんたが助けてくれたのか?」
「はい、私は女神ミアム。私はこの天界から地上の様子を見ていたのですが、あなたがトラックに跳ねられる所を見てしまい、思わずここに召喚し助けてしまいました」
女神はそう言うと勇也に微笑んだ。
「へー女神様かー。すげぇ美人だなーとは思ったけど女神様かー」
勇也は納得したように頷く。
「そんで俺はいつ帰れんの?」
「あなたはもう元の世界にお帰りになる事は出来ません」
女神は悲しそうな表情になりそう答える。
「あんた神様なんだろ?だったら何とでも出来るんじゃない?」
「いいえ、神は万能ではありません。あなたをこのまま元の世界に帰すことは出来ます。しかし帰してしまうと召喚前の状態に戻り、あなたはそのままトラックに跳ねられてしまいます。死ぬとわかっていてお帰り頂くことは女神である私には出来ません」
「じゃあどうすればいいんだよ?」
「あなたには別の世界に行ってもらいましょう」
「は?」
「私が管理をするガイアスという世界で、あなたは勇者として召喚して貰えるように私が聖女と呼ばれる者に神託を下しましょう」
「勇者?なんか聞いたことのある話だな」
「ガイアスの世界ではあなたの居た地球とは違い、魔物や魔族が居ます。あなたはそれらと戦い世界を平和に導いてほしいのです」
「いや普通に無理だろ…」
「普通では無理ですね…ですから私から力を授けます」
「ガイアスには魔法が存在します。火や水や氷の魔法が一般的ですが、あなたには勇者にしか使えない雷の魔法を授けます。それに加えて能力が急成長するギフトを授けます。これによりあなたは数年訓練するだけで世界最強の剣士にもなれるでしょう。いかがですか?これで魔物や魔族と戦ってはいただけませんか?」
「まぁそういうとこなら行ってもいいかな」
「では能力を授けますのでお名前をお聞かせください」
「斎藤勇也」
「いいお名前ですね。では勇也さん、能力を授けるので下を向いていただけますか?」
「こうですか?」
女神は両手で左右から勇也の頭を押さえる
女神の胸が勇也の頭に当たり
勇也は下を向いたままニヤニヤする
「フフフッではこのまま動かないでくださいね」
女神は勇也の頭から手を離し、手を両手で組み念じ始める。
「斉藤勇也に勇者の力を…エイ!エイ!エーイ!」
勇也の両頬、後頭部、両頬と衝撃が走る。
「これで勇也さんは勇者の力に目覚めました」
左手で顔を撫でながら勇也は右手を握る開くを繰り返す。
「これで勇也さんは勇者の力に目覚めました。まだ実感は無いと思いますが、ガイアスで戦いの経験を積むとすぐに実感できると思います」
女神はそう言うが勇也は納得できないような顔をしている
「仕方ありませんね…これは全てが終わってから言うつもりでしたが、勇也さんが望むのであれば私と一つになる事も出来ますよ?」
「は?」
女神は両腕で大きな胸を少し持ち上げる。
「ガイアスを平和に出来たなら、あなたがガイアスで寿命を全うした後、またこちらにお呼びしましょう。再会した後、勇也さんと私が一つなる。いかがしょう?」
「一つになるって?」
「私の口からは…これ以上は恥ずかしいです」
女神はそう言った後、再び勇也に近付き、両手で勇也の両頬を軽く抑え、顔を近づけてくる。
凄くきれいな顔だ。
勇也は自分の顔が火照っているのに気付き、照れ笑いをしながら答えた。
「わかりました。あなたの為に頑張ってきます」
女神の表情は満面の笑みに変わる
「うれしい。ではそろそろ時間です。またお会いできる日を楽しみにしております。どうかご武運を」
女神はそう言い勇也の額にキスをする。
勇也は顔が物凄く熱くなっている事を感じながら意識を失っていった。
勇也の体は徐々に薄れていき天界から消えていく。
「ウフフフフ…馬鹿な男…でもこれでやっと終わるのね」
勇也の姿が消え女神がそう呟く。
女神はその場から歩き始めるが、何者かの気配を感じ取り振り返る。
何者かの姿が徐々に濃くなっていく。
その姿は無精ひげに少し膨らんだお腹、口は半開きでだらしなく開いている。誰がどうみても寝ているおじさんだ。
「汚らわしい!なんで醜いこんなのがこの世界に来るのよ!消えなさい!」
右手で払おうとした手を女神は何を思ったか途中で止める。
その後男を睨め付けながら右手の指先を動かす。
「これでいいわ!醜い姿でこの世界を汚した罪をガイアスで思い知るといいわ!」
女神は改めて右手を払う。
すると男はもの凄い勢いで彼方へ飛ばされていった。