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魔力と魔物

「話は理解したわ」


 取り乱すミレイユと研究室のような場所で話し込むこと小一時間。私とファンゲイルの関係について、なんとか伝えることができた。

 特に、私がか弱くいたいけな乙女であることは重点的に伝えたつもりだ。ファンゲイルから私を助けて!


「ファンゲイル様の研究のためですもの。ワタクシもセレナの解剖に協力いたしますわ!」


「やだよ!」


 目をキラキラ輝かせるミレイユからさっと距離を取った。身を守るために、聖結界を目の前に展開した。

 霊体を解剖ってことは、魔力を切り開いて中身を見る感じかな? 怖すぎる。


「ちょっと、聖魔力なんて使わないで頂戴。汚らわしい」


「神聖な魔力だよ」


「ワタクシたちにとっては不快感しかないわよ」


 そりゃそうだ。私は聖魔両方を司る聖霊だから平気だけど、闇魔力で動く魔物にとっては異物だ。


「そもそも属性ってなに?」


 私はふと思いついた疑問を口に出す。


 魔物は闇魔力を使って種族スキルを使う。死霊系の魔物であれば、身体そのものが闇魔力で形成されていると言える。

 でも人間は、ギフトによって属性が違うのだ。聖女であれば聖属性の魔力を身体に宿しているけど、炎や水、風などを使うギフトもある。


「簡単に言えば魔力の持つ性質ね。ギフトが与える恩恵の一つで、スキルの動力源……というのは結果論で、ギフトと同様にあまり解明されていないの。魔物はギフトがなくても魔力がある。それに対抗するために人間に与えられたのが、その他の属性だとワタクシは考えているわ」


「魔物が最初ってこと?」


「ええ。闇魔力は種族スキルによってあらゆるものに変化する。それこそ炎や水にもね。けれど、人間の魔力は属性の垣根を超えることはできない。明らかに、闇魔力の方が汎用性が高いのよ」


 さすが研究者だけあって、知識の引き出しが多いね。説明もよどみなく、分かりやすい。


 キツネビの種族スキルはファイアーボールだった。人間であれば『火魔法使い』などのギフト持ちが使う魔法に酷似している。でも、キツネビは闇魔力しか持たないもんね。


「じゃあ聖魔力は?」


「聖だけは闇では再現不可能。対極に位置する魔力ね。だからこそ、ファンゲイル様はあなたに興味を持ったのでしょう」


 ファンゲイルが私を連れてきたのは王国から手を引く条件の一つだった。初めて会った時から興味を示していたので、研究対象として必要だったのだろう。

 私の存在はアンデッドを統べる魔王から見ても特異な存在らしいからね。


 案の定、ミレイユも私の生態に興味津々なようだった。

 性格とか容姿に興味を持って欲しかったな!


「実際、セレナは特別ね。普通、魔物はギフトを持たないもの」


「でも、ファンゲイルやミレイユは元人間だよね?」


 ファンゲイルは以前そう言っていたし、ミレイユも見た目は人間に見える。ならば、元人間の魔物という図式は彼らにも当てはまるはずだ。


「ええ。でもワタクシたちは己の意思で魔物になった。ファンゲイル様が開発した魔法で、生きながらにしてアンデッドに転じたのよ。ギフトは失ったけれど、魔力や魔法は変わらず使えたわね」


「ゴズとメズに使ったような?」


「あら、あのでくの坊二人もアンデッドになったのね。魔物に使う場合はまたちょっと違うのだけれど、だいたい同じと思って大丈夫よ」


 生きている者をアンデッドに変える魔法。そんなものがあるんだ。

 古今東西、権力者は不老不死を求めるものだ。彼らからしたら夢みたいな話じゃない?

 代わりに魔物になっちゃうけどね。


「聖女のギフトが残っていてさらに聖魔力まで扱えるなんて、あり得ないことなのよ。しかも普通に……って言ったら変だけれど、魔物と関係なく処刑されてヒトダマの養殖場で目覚めるなんて」


「嘘は言ってないよ」


「そうでしょうね。現実に起きているわけだし」


 ミレイユは顎に手を当てて虚空を見つめた。こうやって思案顔をしていると、白い肌も相まってお人形さんみたいで綺麗だね。

 話してみると接しやすくて、結構気が合う。お互い口調も砕けてきたし、あとは私に危険が及ぶような研究を阻止できれば、仲良くなれそうだね!

 問題は、ファンゲイルのためなら私くらい犠牲にしそうなところ……。


「ファンゲイルは上位のギフトがあったから魂に記憶が残ったのかもって言ってたよ」


「たしかにギフト持ちの魂は強力だけれど、記憶が残るという可能性があるかどうか……現時点では不明ね。そもそも記憶は脳にあるのよ。魂はあくまで魔力を宿す場所なのよね」


「ミレイユは生前の記憶があるんでしょ? ゴズとメズもあるみたいだし」


「そうね。記憶の継承も術式に組み込まれているから。それこそ、あなたの場合も生前に魔法を掛ければ――ッ」


 ミレイユは突然、目を大きく見開いて息を飲んだ。いや、そんな、でも……とうわ言のように繰り返した。


「どうかしたの?」


「いえ、あくまで可能性の話なのだけれど……あなたの死と魔物化は、偶然じゃないかもしれないわ」

更新遅くて申し訳ございません。また毎日更新できるように頑張ります。

今回は説明回でした。「聖女の死の真相」第二部の主題の一つでもあります。

感想、とっても励みになります!今後もお楽しみいただければ幸いです。

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