第75話 お城で家族水いらず
食事会の後は、そのままお城に泊まることになった。母さんの昔の部屋が、そのまま残っているらしい。
とっても大きい部屋なので、家族四人で泊まっても全く問題がない。お城の人には、私用の客室も用意すると言われたけれど、せっかくだから、みんなで泊まりたいじゃんね!
「それにしても、母さんが王族だったなんてさ。言ってくれればよかったのに!」
「うふふ、秘密にしていた方が楽しいでしょ? それに、知らない方が色んな人と友達になれるじゃない?」
「うーん、まあ、そうだけど」
「でも、まさかルイスくんとオーランドくんと、あんなに仲良くなってるとは思わなかったわ!」
「同じ寮だからね」
部屋に用意してある茶器で、母さんがお茶を淹れてくれる。メイドさん達はもう、みんな下がらせているので家族水入らずの時間なのだ。
「あっ、このお茶美味しいね」
「でしょう? 昔から私のお気に入りなのよ」
ふわりと桃の香りがするフルーツハーブティーだ。たくさんのドライフルーツに、色んなハーブが入っているらしい。ジューシーで美味しい。冷たくしてレモネードと混ぜても美味しそう!
冷ましてから、従魔達にもあげる。
『ホワァ〜美味しいにゃ〜。お茶菓子はないのかにゃ? あ、さっきのデザートをちょっと食べようかにゃ』
頬袋から溜め込んだデザートを取り出してモグモグ食べ始めるニャムスターのホッシーさん。
「あなたの従魔は、みんなちっちゃくて可愛いわねぇ」
「母さんの従魔が大きいんだよ! ドラゴンって!」
久々の家族との時間はやっぱり楽しい。
「ところで、わたしって、平民なんだよね?」
「うーん。そうねぇ、わたし達はちょっと特殊でね? 平民でもないけれど、王族でも貴族でもないのよ」
「どういうこと?」
「父さんは特級冒険者でしょ?」
「知ったばかりだけど、そうらしいね?」
「特級冒険者までランクが上がると、貴族と同等の力を持つんだけれど、貴族ってわけじゃないのよ。で、母さんはそこに嫁いだわけ。王族の母さんの持参金として魔の山を領地としてもらってね?」
「なんか頭がこんがらがってきたよ!」
「まあつまり、魔の山はわたし達の領地なんだけど、住民がいるわけでもないし領主とはちょっと違うのよ。で、わたし達の身分は『特級冒険者の家族』って感じね」
ほーう。ほうほう。なるほど。
……あれだね! 平民だけど、色々と融通の効く平民って感じかな……!?
「そっかあ……。よく考えると、それって結構良いポジションだよね!? 権力はあるのに、面倒な社交とかしなくていいってことだね!」
「そうよ、ミア! さすが、あなたは賢いわね〜! 魔の山の魔物を倒すのがお仕事だけど、魔物は美味しいし、スローライフができて、夢の生活なのよ〜!」
「まあ、普通の人には住めない環境だけどね……。魔物の氾濫を抑えてるっていう意味では、ものすごい貢献度だもんね」
とりあえず、わたしが貴族じゃないなら良かった! セーフ!
「わたしも卒業したら、魔の山の麓の領地をちょびっと拝借して、もふもふパラダイスでスローライフを送ろうかな」
「もふもふパラダイス?」
「もふもふの従魔をたくさん集めて、楽しく過ごすの!」
『ミアねーちゃんが、ハーレム希望だったなんて……ううう』
「ライくんは二番目だから! ハーレムの中でも力を持つスライムよ! セクシーなスライムも仲間にできるかもよ?」
『むむ? それならいいのか? セクシーなスライムは、やっぱり弾力が違うからな』
……そっかぁ。
セクシースライムは弾力が違うんだあ…。
「ところで、父さん! 父さんって特級冒険者だったんだね」
「おう! そうだぞー。強い父さん、カッコいいだろ?」
「うん。カッコイイ!」
素直にそう答えると、なんだか父さんは、フリーズしてしまった。
「そ、そ、そうか。父さん、かっこいいか」
「うん!」
なんだか照れてる。かわいいな……!
「ミアが貴族ばかりの魔法学園でいじめられてないか心配だったが、友達も従魔もたくさんできて楽しそうで良かったよ」
「え〜、本当に心配してた?」
「してたぞ! 何度確認しに来ようとして、母さんに止められたことか!」
前世の記憶が戻って、こんがらがっているうちにあっという間に魔法学園への旅に出されたけど、ちゃんと前世の記憶が戻る前のミアもわたしで、今世の家族との時間が大切で、すごく愛おしいと思う。
わいわいみんなでおしゃべりして、弟のケビンと遊んで、四人で母さんの特大ベッドで並んで寝た。
母さんの王族ベッドは四人で寝ても余裕という、キングサイズもびっくりの特大サイズなのだ!
ふう。家族はいいね!
それに我が家は土地持ちだって分かったから、もふもふパラダイスの夢にまた一歩近づいたぞー!