第74話 王族ご飯
「えっ? レオ様? レオ様なの?」
「そうだぞ、ミア」
「普段は至高のモフモフなのに、そんなイケメンにもなれるなんて……!?」
『レオの兄貴かっこいいぜー! 俺様だって人型に……!』
そう言い始めたライくんが形を変え始めた。おお!? まさか本当に!?
プルプルおまんじゅうボディから頭と手と足が出てくる。おお。人型だ……。人型だけど、なんていうかジンジャーブレッドクッキーの形をしたグミって感じになった。
『チッ、まだここまでだな。精進あるのみ!』
そう言いながら、そのまま従魔席に座った。
うちのライくん可愛い……。
それに比べて、レオ様はイケメンすぎる。落ち着かなくて、チラッ、チラッとレオ様を見てしまう。白銀ワイルド、レオ様ブラボー。
ところで席に着く際に、何気に我が母の隣の席をゲットしたルイスはチラッ、チラッ、と母さんを見ています。なんだか血のつながりを感じるなあ……。
さて、皆の席が決まったところで、ご飯タイムだ! 城のご飯に期待!
まずは飲み物が配られる。大人たちはワイン。お子様はスパークリングの葡萄ジュースだ。
「えー。子どもたちの競技会優勝に乾杯!」
「「「乾杯!」」」
まずは前菜からだ。アボカドと魔蟹のサラダ。柚子ジュレのソースがかかっている。
「んっ、美味しい!」
とろけるアボカドに、旨味たっぷり魔蟹。そこに柚子ジュレが意外にも合うのだ。美味しいので、ちびちび食べていたけれど、あっという間になくなってしまった。
しょんぼりしていると、お祖父様とお祖母様にじっと見つめられていた。はっ!? お行儀が悪かったのでは!?
「ミアは美味しそうに食べるのお」
「それに食べ方もきちんと教えてあるのね」
ほっ、合格ラインには達しているらしい……!
次は魔キノコと魔ラムのパイ包み焼きだ。さすが王城。どれもこれも高級食材……!
サクッとしたパイにナイフを入れると、とろりとしたキノコとラム煮込みが出てくる。口に運ぶと…うわぁー! 美味しい! キノコの旨味にラムの癖がマッチして、とろ〜ん、サクっが最高……!
美味しいよう〜。もぐもぐ。もぐもぐ。
はっと気づくとやはりまた、じっと見つめられていた。
今度は側妃様だ。オーランドのお母様。
「ねえ、ミアちゃん? 好きな男の子はいるの?」
「ぴえっ?」
なんだか獲物を狙う目で問いかけられた。
「母様? 初対面のミアに失礼でしょう?」
「あら、あなた達は仲良しみたいだから、気になって」
ふむふむ。なるほど? お前みたいな庶民、可愛い我が息子オーランドには合わないのよ!という牽制なのかしら?
「ご安心ください! オーランドもルイスも異性として好きになることはありませんので! でも友達としては大好きです!」
だって、従兄弟だよ? 血が近すぎよ?
側妃様は顔が引き攣っている。あれ? 答えを間違えたかな?
でも、父さんはニコニコと、うんうん頷いているから、いいのかな?
「あら、うちのルイスもだめなの?」
面白そうに話に乗っかる正妃様。
「ルイスは友達としてなら大好きですよ! あ、従兄弟か」
だって、こんな腹黒ルイスなんかと結婚したら落ち着かないじゃんねえ? という心の言葉を飲み込む。
「じゃあ、ミアちゃんは誰が好きなの?」
今度はお祖母様だ。女子はみんな恋バナが好き!
「んー。そうですね。今のところ、一番ときめくのは、レオ様ですね! 聖獣姿の、真っ白ふわふわのモフモフでさえ最高なのに、声もかっこいいし、まさか人間にもなれて、こんなにカッコいいとは……!」
「あ? 俺か?」
「くぅー! やっぱりカッコいい!」
「ダメだ、ダメだー! ミアはやらんぞ!」
わたしの横にいた父さんが、私を抱きしめて離してくれない。
おしゃべりしている間も、次のメニューは続く。
次はグラタンだ。魔帆立貝のグラタンは、大きな大きな帆立貝を器にして焼き上げられている。こんな大きな貝、初めてみた! ベシャメルソースが濃厚で、帆立がゴロゴロ。美味しすぎる……。ワイン飲みたい……。
「ねえ母さん、この帆立、どこで獲れるのかなあ? 美味しいから、うちの従魔達と取りに行きたいなあ〜」
「あら、これならうちの山の裏側で獲れるわよ」
「裏は海になってるのよ。今度ドラゴンのドラちゃんに乗せて連れてってあげるわ」
「嬉しい〜!」
『やったぜ〜!』
従魔席で話を聞いていたライくんが、ジンジャーブレッド型からドラゴン型に変身して嬉しそうにしている。
可愛い……。
それにしても山の裏が海だなんて知らなかったなあ。地理の授業、ちゃんと聞かなくちゃな〜。
帆立に、海の幸〜!
「いいなあ……」
しっかり隣の母さんに聞こえる声量でボソリと呟くルイス。
「あら、ルイスくんも来たらいいわ」
「いいんですか!? ぜひ行きたいです!」
パァッ!と花開くような笑顔で喜ぶルイス。キィーあざとい! あざと可愛いです!
「兄さんが行くなら、僕も行きたい!」
「オーランドくんも、もちろんいいわよ」
ブラコンはもれなくついてきます。
「でもうちは田舎だからね、自分の身支度をしたり、家事の手伝いをしなくちゃダメなのよ?」
「「もちろんです!」」
あ、母さん、なんか手伝い要員としてカウントしてない?
「オーランド、あなたはダメよ」と側妃様。
「母様、なぜですか!?」
理由は言わないけれど、視線で「あのルイスと仲良くするな」と言っているのが分かる。
「まあまあ、いいじゃないか。たまには王都を離れて生活してみるのも悪くない」
「しかし、陛下……」
「次の長期休みに行っておいで」
ルイスとオーランドは嬉しそうだ。よかったねぇ。次の休みが楽しみだ!