第69話 従魔と障害物競争 その2
スタートの合図と同時に、先生の杖から火花が散る。
パアンという音とともに、一斉に動き出す。全員ひらりと従魔に飛び乗り第一の障害まであっという間に走って行った。
あれ? 置いていかれちゃったよー!
「ら、ライくん。まずはあそこまで走ろう!」
『おうよ!』
ぴょんぴょん飛び跳ねるスライムの横を頑張って走るわたし。
ようやく第一の関門までついた。
最初は崖上りのようだ。すでに登りきれない従魔達がずるずると落ちている。特に馬系には大変そうだ。
「よし、ライくん! 触手を崖の上まで伸ばすのだ!」
『ラジャー!』
力持ちのライくんは、片手をペタッと頂上につけて、片手を私に巻きつけて、ヒョイっと上まで持ち上げた。
「おおー! ミア選手とネコスライム氏、難なくクリアですぞ!」
「まさかスライムがあんなに力持ちだとは!」
アピールのためか、触手をマッチョな腕型にしている。
『俺様、注目されてる〜』
「ほら、先行くよ」
次は崖の上からグルグルまわる滑り台を滑ってからの目の前に大きな池である。濡れずに奥の地面に到着したい。
『俺様がアヒルさんボート型になるから、そのまま滑って向こう岸まで行こう』
「それ大丈夫かなあ? 転覆しない?」
『ま、最悪、池に落ちるだけだぜ』
「そうだね!」
滑り台で、大きく膨らんでアヒルさんボート型になったライくんに乗り込む。
『行くぜー!』
「ひゃああああああああああ」
滑り台が思った以上に速くて、ぐるぐる進む。そして、ザブーンと音を立てながら滑らかに水上に着地。スイスイ〜と向こう岸まで辿り着いた。
「ライくんすごいよ! 天才!」
『知ってるぜ』
「おおー!」
「スライムすげー!」
という歓声が聞こえた。恥ずかしいけど、ライくんの凄さを世界に知らしめる時が来たようだ。ふふふ。
次は砂場だ。
さっきの池コーナーで濡れてしまうと、ここは砂ホイホイになってしまうらしい。前を見ると、砂だらけになっている人や従魔を発見。
『ミア姉ちゃんは俺様にのってくれっ!』
「オッケー!」
蛇型になったライくんに乗り込む。うねうねと砂場を進んでいくライくんすごい。
「おおーっと! 次はスライムが蛇型になりました!」
「素晴らしいです!」
そうだろう、そうだろう、うちのライくんはすごいのだ。ライくんも褒められて嬉しいらしく、更に高速で進んでいく。
ちなみにレオ様とルイスははるか先に見える。さすが聖獣だぜ。
無事に砂に呑まれることもなく、地面に到着!
「ありがとね、ライくん」
「もっちろんよ〜!」
ライバル達が次々と脱落していくのを横目に、ライくんと障害物を着実にクリアしていく。
最後の一つは、なぜか借り物競走だ。
高くにぶら下がっている指示書を、ライくんの触手でパシリとゲットする。
「なになに? え? 『家族(家族が来ていない場合は友達でも可)』?」
『よっしゃ、呼びに行こうぜ!』
ライくんとダッシュする。障害は楽々クリアできるけれど、普通の平らな道を走るのは速くないので先を行くルイスと距離を離される。
マオ寮の応援席へ向かって一生懸命走っていると、あちらで誰かを聖獣レオ様に乗せたルイスがゴールへ向かうため戻ってきている。
あれ? よく見ると母さんじゃん!
「レオ様、ストーップ!」
「お、なんだ、ミア?」
「ちょっとミア、レース中に邪魔しないでくれる?」
「でもわたしの借り物競走『家族』だもん」
「えー僕のは『憧れの人』だよ?」
「父さんはケビンを抱えてるから連れて来れないからさ、ここは母さんを譲ってよ」
「あらあら。わたし人気者ね」
「じゃあ、一緒にゴールすれば問題ないだろ。俺が乗せてってやるよ」
それもそうか…? ルール違反にならないかな?
でもレオ様が特別に乗せてくださると言うので、母さんとルイスの間に乗り込むと、ルイスが「えー僕とおばさまの間に乗るの?」と言い始めたが問答無用である。わたしの母さんなのだ。
ちなみにライくんは全員にぐるっと巻きついてレオ様にひっついている。落下防止です。
『ひょおーレオの兄貴はやっぱり速いぜ』
「すっごいなあ、風が気持ちいい!」
「母さんも、レオに乗るのは久々だけれど、ドラゴンと違ってフワフワでいいわね」
「わたし、母さんに聞きたいこといっぱいあるんだからね……!?」
「うふふ」
そして、あっという間にゴールした。もちろん、一位である。同時ゴールだけれど、まあ同じ寮なので一位と二位のポイントがマオ領に入るのです。
ゴールと同時に、クロちゃんとホッシーさんも向かってきた。
『主、おめでとう! ライ、よくやったな』
『ミアちゃんもライ先輩もすごいのにゃ〜。ドキドキして観戦中におやついっぱい食べちゃったにゃ』
『えっへん! 俺様すごい!』
三匹を同時にガバッと抱きしめてモフモフする。
「おおー! マオ領の、ルイス選手とミア選手がゴールしました!」
「どうやら二人の借り物は、どちらも桜姫のようですね?」
「二人の指示書にはなんて書いてあったのでしょう?」
カメラが寄ってくる。ちなみにカメラは鳥型で、あちこちを飛び回っているのだ。音声も拾える高機能型です。
「僕の指示書は、『憧れの人』です」
「あら〜。照れるわね。ありがとう、ルイスくん」
母さんに名前を呼ばれたルイスは照れ照れしている。
「わたしの指示書は……。『家族』です」
「えへへ、そうよ。ミアの母親はわたくしですからね!」
腰に手を当ててドヤ顔の母さん。うう……。目立っている…。
肩にネコフクロウのクロちゃん、頭にニャムスターのホッシーさん、そしてネコスライムのライくんを腕いっぱいに抱えて、ライくんに顔を埋めているわたしが画面にアップで映っている。ううっ……。
「おおーーー!」
「さすが桜姫の娘さんですな。素晴らしいテイマーのようです」
恥ずかしすぎるので、ライくんに顔を埋めていたら、ようやくカメラが去っていった。ほっ!
なんにせよ、一位になれて良かったー!
「さて、これで午前の部は終わりです」
「会場を開放するので、ピクニックをするも良し、外に食べに出るも良しですわ!」
アナウンスが入る。
「母さん、張り切ってお弁当たくさん作ってきたのよ。だから、ちょっと遅れちゃったの。あっちでみんなで食べましょ」
「うん! あ、友達も連れてきてもいい?」
「もちろんよ。足らなければ、お肉を焼いてもいいしね」
ルイスがチラチラとこちらを見ていたが、大人しく陛下のところへ行った。王族ランチがあるのだろう。
わたしはヒマリを呼びに行く。他のみんなは家族が来ているからね。孤児院のみんなも呼びに行こうとしたら、いつの間にか母さんに連れて来られていた。
さあ、お昼ご飯タイムだ!




