第59話 寮対抗戦の種目とチーズ屋のお兄さん
さて、その日寮に戻ると寮対抗戦の種目が張り出されていた。
まずは希望する種目の横に名前を書くのだそうだ。人気の種目は得意な人が優先されるらしい。
わたしも「従魔と挑む障害物競走」の横に名前を書いておいた。無事に通りますように!
一人二種目なので、あとは何にしようかなあ? と種目一覧を見る。闘う系は嫌だしなぁ〜。あ、でもヴィーちゃんの名前、発見。魔法学園だけど、ヴィーちゃん、剣で闘うのかなあ?
「ミア、やっぱり障害物競争に出るの?」
「あ、ルイス。うん。そのつもりだよ! 人気のある種目じゃ無いといいんだけど」
「それ、毎年不人気って聞いてるから大丈夫だと思うよ」
……なんですとお!? それはそれで寂しいね。
「人気の種目は何?」
「んー。マオ寮は、みんな楽したいからさ。玉入れとか人気。玉入れはカゴに風魔法でみんなで玉を入れる競技ね」
「ああー。先輩達、選びそうだね」
「僕は、それぞれの種目を得意そうな人に出てもらうべく、お願いしてるんだ」
「王子がお願いなんて、なんか可愛いね。ここはドーンと偉そうに命令してみたら?」
「ほら、マオ寮の先輩って、僕の権力に怯えないし。お願いが無難なんだよ」
「これがローズ寮だったら、ルイスの一声で全部決まりそうだけどね」
「まあね。でも、だからこそマオ寮は住みやすいんだけどね」
表の前でああでもない、こうでもない、と悩んでいるルイスに応援の言葉をかけて部屋に戻る。わたしは障害物競走に出れればいいからね!
次の日は、わたしの授業が一つもない日だ。算数の授業が免除になったからね〜。というわけで! 早速、チャーリー達に会いに行くことにした。メガネのイーサンに、宿の場所は聞いておいたのだ。
アヒルさんボートに乗って王都へ向かう。
『ミアねーちゃん、あんまり授業ないのな』
「なんか遊んでばっかりだよね」
『寮の先輩達は忙しそうだぞ。学年が上がるごとに忙しくなるのだろう』
「なんたって、わたしまだ七歳だからね! 遊び盛りなのよ。子どもは遊ばなくては」
『ミアねーちゃん、それって子どもが言うセリフじゃねぇぞ〜』
乗合馬車に乗り換えて、ゴトゴトと進む。
「えっと、チャーリー達の住んでいる宿は……。市場の近くだね! いつもの場所で降りれば良さそう。ついでに市場でお買い物もしていこうっと」
『美味いものいっぱい買ってね、ミアねーちゃん』
「ハイハイ、わかりましたよ〜」
もちもちのスライムを、むにゅむにゅしつつ、クロちゃんのビロードのような毛並みを堪能しながら馬車からの風景を楽しむ。
「この辺の高級エリアでも一度、買い物してみたいなあ。なんか珍しいものが売ってそうだよね!」
『子どもだと足元見られるんじゃないか?』
「やっぱり? 貴族の友達と来るしかないよねぇ」
「……お嬢さん、貴族の友達がいるのかい?」
突然、馬車で前に座っていた人から話しかけられた。
従魔との会話は、従魔側の声が「キュイキュイ。にゃにゃん、にゃー」と鳴き声で聞こえるようなので、わたし側の会話しか聞こえてないみたいなんだけどね。
あれだよね、バスで電話で話してる人みたいな感じ? あれ、迷惑?
「あっ、うるさかったですよね、ごめんなさい。貴族の友達は、魔法学園に通ってるから、そこで知り合ったんです」
「うるさくなんかないよ。従魔達の声が可愛くて癒されてたんだ。僕ね、この辺りでお店持ってるの。チーズの」
「チーズの!?」
「一般市民街のチーズ屋と違って、ちょっと高くて癖のあるチーズばっかり扱ってるんだけれど、興味ある? あ、一般市民街のチーズを貶してるわけじゃないよ? 僕はどのチーズも愛してるからね! ただ棲み分けの問題で」
「チーズに興味、ありますあります!」
ついつい前のめりになってしまう。チーズ大好きなのだ。
「僕のお店、来る? 貴族の友達と一緒に食べて宣伝してくれるなら割引もしてあげるけど」
『怪しいやつか……?』
『でもミアねーちゃん、乗り気だぞ』
『いざとなったら、我が嘴で突いて……あ、我、猫顔だから嘴ないんだった。爪で引っ掻いて。あ、翼だから爪もない……足の爪なら……』
『大丈夫だ、クロ先輩。俺様が巨大化して包んで消化しちゃえば完全犯罪成立だぜ』
なんだか、うちの従魔達が不穏な会話をしている。
「あの、とっても行きたいんですけど、知らない人についていくなって言われてて……。でもとっても行きたいので、失礼かもしれないんですけど、魔法の杖を片手に持って行ってもいいですか?」
「うん、もちろんだよ! 確かに怪しいもんね。お店も表通りにあるガラス張りの店だから安心して」
「それなら行きます!」
チーズ! 楽しみだ、あれとかあれとかあれとか、あるかなあ? この世界ならではの、魔物のミルクのチーズもあるのかしら。ワクワク。金ならあるぜ、ふふ。
あっ、魔法の杖、出しておかなくちゃ。
「マジカルミアミア、ニャーニャー!」
よし、杖もバッチリ。
「よし、じゃあここで降りるよ」
「は〜い」
馬車を降りて、お店へ向かう。この辺は富裕層街なのかな? 高級エリアだ。とっても洗練されていて素敵な街である。あ、オープンカフェがある。うわぁ〜かっこいいな〜。
キョロキョロしながら、ついていく。
そしてお兄さんが立ち止まった先には素敵なチーズ屋さんがあったのだ。




