第54話 孤児院救出大作戦 その2
「あれ、お嬢? ミアちゃんにヒマリちゃん、アンディくんも」
突然ニコラスさんが現れて話しかけてきた。
その途端、周りの空気が一瞬で変わった。
「「!?」」
咄嗟にクリスを守る体勢に入るニコラスさん。
「あ、これは多分、僕らの護衛が彼に警戒しているんだと思います」
「この黄色い頭の男は、我が家の騎士ですので、警戒しなくて大丈夫ですわ」
そうクリスが言った途端、放たれていたピリピリとした緊張感が無くなった。
なにこれ、王家の護衛、すごい。忍者でも潜んでるの?
「え!? え!? 俺、すっごいドキドキしちゃった」
「まあニコラスさん、怪しいしね」
「ええ〜!?」
「ニコラスさん、お仕事は?」
「今からランチ休憩だよ」
屋台を八人でうろうろするのも大変なので、女子と男子に別れて色々と買って集合することにした。
暇そうなニコラスさんを無料ランチで釣って、クリスの護衛に充てる。
「じゃあ、色々と買って、ここで集合ね!」
王子達はキラキラした目で進んでいく。
「なんかよく分かんないけど、お嬢にランチ奢ってもらえるなら、俺、あれ食べたいっす!」
指差す先は、やっぱりピタパン。お肉や野菜を詰めて食べるやつだ。ちょっと高いから奢ってもらえるときに食べると言っていたけど、今回もやっぱりそうなんだね。
「しょうがないわね」
初期のようにツンとしたクリスを久しぶりに見た。でも、よく見ると久しぶりにニコラスさんに会えたのが嬉しそうである。やっぱりクリスは可愛いな〜!
わたしは今日は、串焼きにした。どどんと三十本! あとでチャーリー達にもあげるのだ。 それからたい焼きも見つけたので三十匹、買いました。小豆とカスタードクリーム、芋餡を十匹ずつ。
ヒマリはまたドーナツ、ヴィーちゃんは、大きな肉を買った。
テーブルを見つけて、今日もライくんに綺麗にしてもらう。あっという間にピッカピカだ。
食事を降ろしたところで、王子達もやってきた。ニコニコと嬉しそうに色々と抱えているけれどアンディはげっそりとしている。
「うう……こいつら、初めての買い物だから浮かれて大変だったぜ」
「お疲れ、アンディ……」
ルイスもオーランドも、どんどんテーブルに置いていく。
「うわぁ…たくさん買ったね」
「ああ! 孤児院の子達にもあげれば良いと思ってな」
「あれもこれも目移りして決められなかっただけのくせに……」
「それにしても、こうして広場で食べるのは面白いな」
「そうだね、兄さん。お城では静かな中で食べるからね、ちょっとつまらないもんね」
太陽の下、みんなで食べるご飯は美味しいね。
ニコラスさんは、すごい勢いでピタパンに肉を入れて食べてます。王子達の正体には気が付いたけれど、あえて気付いてないフリをしている……。はず。
従魔達も美味しそうに食べている。ライくんは器用に串焼きを串から外して、クロちゃんとレオ様に分けてあげている。
テーブルの上を、ミョーンとライくんの触手が伸びて、器用に色々と掴んでます。ヴィーちゃんの従魔、タカコは、大きなお肉をヴィーちゃんと黙々と食べている。なんだか主従が似ててちょっと笑える。
お腹いっぱい食べて、孤児院へのお土産は全部スライムラップで包装して、準備万端である。
「お嬢達は、今から孤児院に行くの?」
「そうよ。あなたも早く仕事に戻りなさいな」
「ん〜。せっかくお嬢に会ったし、俺も行こうかな?」
「仕事はいいの?」
「お嬢の護衛ってことで! 普通に仕事するより楽しそうだし」
ワクワクしているニコラスさんを前に、どうしたらいいかしら? と王子達に目で訴えるクリス。
「う〜ん。良いんじゃないかな? 大人が一人くらい居た方が便利かもしれないし」
「大丈夫みたいよ。ちゃんと上司には連絡しておきなさいよ」
「は〜い」
みんなで孤児院に向かって歩きだした。
ニコラスさんはピアスに手を当てて何かを伝えている。
「あれは何?」
「あれは兵や護衛がよく使っている、連絡用の魔道具だな。近距離しか飛ばせないが、魔力消費が少ないので、平民でも使えるタイプだ」
「へえ〜。そんな便利なものがあるんだね」
「いやいや、ミアちゃんが持ってる魔道具達とは比べ物にならないからね」
連絡をし終えたニコラスさんが話に入る。
「ああ……。あれは確かに便利かも」
「ミアちゃんのお陰で快適な旅が出来たからね」
うんうん、と旅のメンバーが肯いている。
「そんなに良いものなのですか? 気になりますね」
メガネのイーサンが食いついてきた。
「今度、機会があったら寮で見せるよ。寮でキャンプとかしても良いのかなあ?」
「それは、また斬新なアイディアだね……」
「俺キャンプしたいぜ!」
「野営の練習と言えば、許可も出そうですが」
「ボク、ニジマス焼いて食べたい」
『ヒマリっちのために、俺様がいっぱい釣ってきてやるゼィ』
みんなでワイワイとキャンプ計画について話しながら歩いている。
「ところでミアちゃん、この前、こんな奥まで一人で来たの?」
「うん。黒猫を追いかけてたら、なんだか奥まで来ちゃって」
「この辺、治安あんまりよくないからね。隠れている護衛がいるのは分かってますが、皆さん気を引き締めてくださいよ」
「「「はいっ!」」」
ドキドキしながらも進むと、孤児院が見えてきた。
「あっ、着いたよ!」
「……あそこなの?」
「うん、そうだよ」
「……兄さん、僕は今、自分が王族なことが恥ずかしくなってきたよ」
「オーランド、俺もだ」
「えっ王族……?」
ポカンとしたニコラスさん。あれ、ニコラスさん、気付いてないフリかと思ってたけど、本当に気付いてなかったんだね……。
クリスは残念な子を見る表情を浮かべている。
「あっ、ミア!」
こちらに駆けてくるチャーリーは、たくさんのお金持ちっぽい子供達にビックリしている。
「チャーリー! 今日は権力バッチリな貴族の友達を連れてきたから、中で作戦会議しよっ! お土産もいっぱい持ってきたからね」
「おう、ありがとな」
ニッコリ笑うチャーリーは、とても頼もしく見えた。




