第49話 調合の授業
「来週からは実験室で授業をするけれど、、今日はこの教室で出来ることをするわ」
そうメラニー先生は言って、説明を始めた。
まずは器具の説明。フラスコやビーカー、駒込ピペット、ガラス棒……前世の化学の実験みたいだ。
使い方は前世とあまり変わらないけれど、違うのは洗浄方法だ。「ウォッシュ」と唱えると綺麗になるの!
これ前世にもあったら良かったのに。器具の洗浄って大変だし気を使うし、割りやすいからね……。
というわけで、まずはウォッシュの練習です。
「マジカルミアミア、ニャーニャー!」
「ニャーニャーパワー、メークアップ!」
みんながスマートに杖を出す中、わたしたち二人は、呪文を唱えて杖を出す。ヒマリなんて変身しちゃうから、もっと恥ずかしそうである。
「お前ら、自分の杖持ちなのかー。なんか呪文があるのは嫌だけど、杖は羨ましいなあ」
「あれ? みんなは持ってないの?」
「庶民に杖は高いだろ。これは学校のレンタル杖だ。卒業までに杖無しで出来るように、魔力コントロール頑張らないとな」
そっかあ。ちょっと恥ずかしいけど、自分の杖があるだけでラッキーなんだなあ。
「さあ、皆さん『ウォッシュ』の練習ですよ〜。洗い物をするイメージで、あわあわ、キュキュッ!です」
……。うん、メラニー先生は感覚派なんだな。
ビーカーを机の上に置いて、イメージをする。
「ウォッシュ」
ニャーンという声と共に、あわあわの猫がビーカーに飛び出し、ビーカーを包んでからニャニャっ!という声と共に消えた。
先生の「キュキュッ!」に釣られてしまった〜!
「あらあら、あなたのウォッシュは可愛いのね。じゃあ、本当に洗えているかの確認よ。もう一度やってみて」
そう言いながら、先生がオイルをビーカーに垂らした。
「ウォッシュ」
あわあわ猫が現れ、オイルを跡形もなく連れ去っていった。
「うん、合格ね。あなた名前はなんていうの?」
「ミアです」
「あ、あなたがミアちゃんね! 植物学のトロン先生から色々とハーブの食べ物をもらったわ。ハーブを食事に使うなんて思いもしなかったわ。また話を聞かせてね」
そう言って、他の人の確認に向かった。
ヒマリも難なくマスター。宿屋の娘、洗い物も洗濯も、イメージバッチリです。というか、平民は皆すぐに出来るようになったみたい。
高位貴族と王族の皆さんは苦戦している。ここにいるのは、特にやんごとない身分の方々なので、洗い物なんて産まれてから一度もしたことがないんだろう。
ルイスとオーランドが、こっちをチラチラ見てくる。アドバイスが欲しいらしい。こんな場所で、平民から王族に話しかけられるかーい!
そんな私たちの無言の攻防を見てか、自分もできないので困ったのか、意外なことに眼鏡のイーサンが声をかけてきた。
「ミアさん。助力をお願いしたいのですが」
「えっ」
そしてイーサンの後ろで、子犬のような目で王子たちも賛同している。
「うーん。そうですねぇ。洗い物も洗濯もしたことがなさそうだし……。あっ。じゃあデモンストレーションをします!」
そう言って、教室の後ろの方で従魔の井戸端会議をしていたライくんを呼ぶ。そうなのだ。主にくっついてきた従魔達、後ろの方で伸び伸びしているのである。
『ミアねーちゃん、呼んだ?』
「ライくん、ちょっと食器洗いのスポンジのフリしてくれる? 殿下達にお皿の洗い方説明するから」
『ラジャ!』
そう言って、左手にビーカー、右手にスポンジのフリをしたライくんを持つ。
「えー。洗い物はまず、ビーカーとスポンジを濡らします。ヒマリ、ビーカーとライくんに少しお水かけてくれる?」
「うん。ウォーター」
『ヒマリっちの水……ごくごく』
「……。えー。次に、スポンジに石鹸をつけます」
そう言うと、ライくんから謎の泡が出てきた。ナニコレ。
「泡立てたスポンジで、ビーカーを洗います。中も外もですよ〜。この泡が汚れを連れていくので、全部が泡で包まれるようにしてください。そのあとは水で洗い流すだけです」
机の上にトレイ型にしたライくんを置いて、水魔法で洗い流す。洗い流した水はライくんに吸収されるので、水浸しにならないのだ。
『ごくごく……やっぱりミア姉ちゃんの水が一番だな」
「……。これで乾いたら完成です!」
いつの間にか、他の高位貴族も、先生も集まって私のデモンストレーションを見ていたようで、拍手が起きた。
「洗い物って、ああやってするのね」
「スライムって可愛いわね」
「なんか分かった気がするぞ」
このあと、みんな無事にイメージできたようで全員が合格した。
「ミアさん、ありがとうございました」
「お役に立てて良かったです」
イーサンとの会話が白々しい。王子達は奥でウインクしている。
「今日の授業は早めに終わりそうね。でも、終わりにする前に、杖の変形も教えるわ。これは来週までに寮で練習してマスターしてきて頂戴。来週の調合に使うからね」
そう言って、杖をナイフや木べらに変形する呪文を教えてくれた。魔力を通しながら切ったり混ぜたりする時に必要らしい。
来週の調合のために、ちゃんと練習しなくちゃね! 楽しみ!




