第47話 金の間とワイバーン
ゴロゴロと寝転びながら、そろそろお昼ごはんの時間だなあと思っていたところ、青空から何かが落ちてきた。
と、鳥のふん……!? と思ってビックリしたけれど、手紙でした。
「んっと? ああ、王子達からだね。『今日のランチは個室の金の間にこっそり集合』だそうだよ」
「ボクにも同じの降ってきたよ」
「昨日の孤児院のことかなあ」
「ボク、金の間って聞いたことあるよ。王族が使える個室で、みんな招待されたがってる場所だよ」
「えっ、それ貴族にバレたら面倒くさいやつ……! まだ人が少ないうちに、こっそり行こう」
ピクニックセットを片付けて、個室がたくさん並んでいる方に向かう。
「どの部屋かなあ? やっぱり一番奥にあるのかなあ?」
「そうだぞ。一番奥の、金色のドアがある部屋だ」
レオ様が教えてくれた。
部屋の前まで着くと、見張りの騎士様がいた。
「招待状をお出しください」
「招待状? さっきの手紙でいいですか?」
手紙を出して、彼に見せ、中に入れてもらった。
中には王子二人と眼鏡のイーサンが座っていた。他のメンバーはまだみたいだ。
「お招き頂きありがとうですわっ!」
「ですわ……」
ヒマリと共にそれっぽい挨拶をしてみた。
「これはこれは。ようこそお越しくださいました、姫」
ウインクと胡散臭い笑顔でルイスが迎えてくれた。ぞわっとする。
「ルイス兄さんの王子様モードで目がハートにならないなんて、ミアもヒマリも、その目は節穴? いや、でも逆に見る目があるっていうことも……」
ぶつぶつとブラコンのオーランドがつぶやいている。
個室に呼ばれた理由は、やっぱり孤児院の話をしたかったみたい。みんなが揃って食事してからということで、お茶を飲んで待っていたところ、クリスが「他の貴族を撒くのに苦労しましたわ」とやって来て、授業終わりのアンディとヴィーちゃんも腹ペコでやってきた。
個室の料理は、昼から豪勢!
まずは食前酒ならぬ、食前酢が出てくる。飲みやすいブドウのお酢で、これを飲むと胃がスッキリして、消化にも良いんだとか。
次はアペタイザー。
自家製スモークサーモンにディルクリームとイクラとアボカド添え。サーモンは、普通のサーモンではなく魔サーモンを使っているらしく、旨味がすっごいのです。とろける……。
孤児院の話をするのに、自分たちはこんなに豪勢な食事をするなんて、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいである。ご飯は楽しむのだけれど!
「これ美味しいねぇ。お城では、いつもこんなに美しいご飯、食べているの?」
「まあそうだな。でも毒味されているから冷めたものばかりだぞ」
「学園では毒味はいらないの?」
「学園の結界と、この魔道具で毒はほとんど効かないらしいんだ。王城には色々と大人の理由で、その結界は張れないらしい」
なんだか王子業も大変そうである。
平日のランチなので、コースは少なめにしてあるようで、次はメイン。
普段はいくつかの中から選べるようなのだけれど、「今日は珍しくワイバーンが取れました」ということで、全員ワイバーンだ。
「ワイバーンって初めて!楽しみだなあ」
「大抵は、魔の森に生息するらしいからな。なかなか王都では入手できないんだ。何気に俺も初めてだぞ」
「わたくしも初めてですわ」
メニューはワイバーンのステーキだ。美味しい肉なので、シンプルに食べるのが一番なのだそうだ。付け合わせには芽キャベツと人参のソテー。それから滑らかにマッシュされたクリーミーなポテト。
早速、カットして口に入れる。
「ん〜! 美味しい!」
程よい弾力に、じわじわと滲み出る旨味。最終的に溶けるようになくなるステーキだ。肉の旨味を凝縮したような、赤ワインと作られたソースによく合う。
「むむ……? これ、美味しいけど」
「うん。あれ?」
「ねえミア。これってミアのよく言う『裏山で獲れる大きな鳥』の味に似てない?」
「ん? そう言われてみれば……」
ソースや付け合わせの美味しさに気を取られていて、気がつかなかった。
「うちの裏山で獲れる鳥はねぇ、こーんな大きな翼があって、こーんな大きいやつで、緑っぽい色をしているの」
「鳥じゃないじゃん……」
「ワイバーンじゃん……」
え? ワイバーンなの?
「確か、魔の森はクリスの家、イリレイ領の端に位置していたよな?」
「ええ。そうですわ。あのあたりには屈強な冒険者が駐在していると聞いたことがあります」
「ミアと最初に出会ったのはイリレイ領だよな?」
「ええ、そうですわね……」
「ミアはイリレイ寮の辺境出身。つまり、ミアは魔の森出身……!?」
「ちょっとちょっと! せめて、魔の森の周辺出身って言って欲しいよ」
「でも家のすぐ裏が森や山なんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「じゃあ、魔の森出身って言っても過言じゃないな」
そっかー。うちの裏山って、魔の森だったのかー。食卓に並ぶ肉やフルーツは魔力たっぷりで美味しいはずだわ。
「ふーむ。それにしても、あの鳥がワイバーンだったのかぁ。お父さんが弓でピュンってよく獲ってたけど」
「それ、どんな弓……!?」
そんな話をしているうちに、デザートがやってきた。ティラミスだ。
この子供の体にはコーヒーはまだ苦かったけれど、ティラミスになっていると別である。
エスプレッソが染み込んだビスケットに、トロトロカスタード、マスカルポーネ、ココアパウダー。あーん美味しい!
この軽さ、いくらでも食べれちゃうね。
食後の飲み物は紅茶ではなくて、ミルクたっぷりのカフェラテにしてもらった。金の間はエスプレッソも作れるらしいので。
可愛い猫さんラテアートが出てきてテンションが上がる。スマホがあれば写真を撮っていたわ……。
ほっと一息ついたところで、孤児院についての報告を聞くことになった。




