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第44話 孤児院の現状とチャーリー

 食べ終わった後は、ただひたすらとウロウロすることにした。探検、探検〜! 歩いていたら、可愛い黒猫さんが歩いていたので、追いかけていたら王都の端っこの方まで来てしまった。

 黒猫さんが入っていった建物の入り口には孤児院と書いてある。人の建物に入るのはダメだよね〜、と猫さんを諦めて戻ろうと踵を返したところ、後ろから声がかかった。

「あれ? お姉ちゃん、だれ?」

「こんなところまで小さな子が一人で来ちゃ危ないぞ」

 後ろを見ると、四歳くらいの小さな女の子と、十歳くらいの猫獣人の男の子がいた。


「こんにちは。黒い猫を追いかけてたら、ここまで来ちゃったの」

「ああ、ノワールか」

「ノワールって名前なのね。ここで飼ってるの?」

「いや、飼ってるっていうよりは居着いてるだけだ。孤児院には飼う余裕なんてないからな」

「お姉ちゃん、ノワールとあそんでいきなよ」

 そう言われて、中に案内される。


 中には十人くらいの子供達がいた。全員、ガリガリに痩せている。更にいうと、建物がボロい。掃除はされていて清潔なんだけれど、とにかくボロいのだ!

 台風なんて来たらひとたまりもなさそうです。やっぱり雨漏りはするらしい。


 どうやらみんなお腹が空いているようで、ニコニコと話していても「グーっ」と音が鳴っている。

 ここで七歳のわたしが、食べ物を渡すのもなんだか嫌味になりそうで違う気がしたのだけれど、目の前の空腹は放っておけない!


 おやつに食べようと、クッキーを出す。

「これ何? 食べてもいいの?」

「クッキーっていうお菓子だよ。うん、もちろん。みんなで食べて?」

「わあい、ありがとう!」

 子どもたちが群がる。


 そこに、さっき会った十歳くらいの男の子がやってきた。

「なんか悪いな」

「ううん、いいよいいよ! お腹が空くのは辛いからね。ところで今日の夜ごはんは何?」

「夜ごはんはいつも、野菜クズのスープと、パンだ」

「誰が作るの?」

「子どもたちで当番で作ってる」

「じゃあ、スープにこのお肉も入れてくれる?」

 魔法鞄からお肉を取り出す。


「い、いいのか?」

「うん! それ、わたしが狩ったやつだからタダだから大丈夫だよ」

「自分で狩ったのか?」

「そうなの。わたし、すごい田舎出身なんだけれど、魔法学園に入学するために旅してきたの。その時、旅の間に狩ったんだ!」

「ありがとな、これでチビ達を食わせてやれる」

 自分はクッキーにも手をつけずに、見守っているお兄さんに、こっそりクッキーを渡す。

 手の中に握らされたクッキーを見つめて、口に入れる彼。猫耳と尻尾がピン!と立った。


「こ、これ美味いな!」

「そう? 良かった〜。自分で焼いたやつなんだ」

「こんなの焼けるなんてすごいな、お前」

「えへへ、ありがと。あ、わたしの名前、ミアだよ」

「俺はチャーリーだ」

 大事そうにクッキーを食べる彼をみて、最近スイーツをじゃんじゃん食べてたなあと反省する。


「ところで、ここは大人はいないの?」

「前は親切な院長がいたんだ。でも一年前に新しい院長に交代してから、来なくなっちゃって」

「えっ! それじゃあ、ごはん代とかどうしているの?」

「街のお手伝いをして野菜の端っこをもらったり、売れ残ったパンをもらったり」

「そ、そんな……!」

「街の衛兵に話をしてみたけれど取り合ってもらえないし……」

「それはひどいね」

「なんだか衛兵は口止めされてる感じだった」


 むむ。貴族の圧力がかかってるのかな。

「わたし、親切な貴族の友達もいるからさ、あとで学校に帰ったら聞いてみるよ」

「本当か!?」

「うん!」

「ありがとな。俺もお手伝い頑張ってるけどさ、やっぱり全員を食わすのは難しいよ」

 項垂れている猫獣人の彼にクッキーをもう一枚握らせて、お肉の他にも、野菜やフルーツをたっぷり置いて行くことにした。


「今日はもう帰るね」

「おう! この辺は危ないからな、乗合馬車の停留所まで送っていくよ」

「でも、そうしたらチャーリーが帰り危ないんじゃない?」

「俺はこの辺に住んでるから大体分かるし、猫獣人はすばしっこいから大丈夫だ」

「う〜ん。ではお言葉に甘えて。ありがと!」


 停留所までの間にはライくんが『もう我慢できない!』と、チャーリーに飛びついてスライムシャンプー&パックをしていた。

 見た目はスライムに捕食されている少年だったよ……。

 でもライくんから出てきたチャーリーは、艶々のフサフサになっていた。

『ふう、良い仕事したぜ』

「な、なんだったんだ今の! ミアのスライムか?」

「うん、なんかごめんね……。うちのライくんが、チャーリーをピカピカに磨きたかったみたいで」

「ピカピカ……? うおおお! 俺の尻尾が艶々のフサフサになってる!」


 ピカピカになって嬉しそうに尻尾をピンとさせるチャーリーに見送られて、乗合馬車に乗った。

「また来るからね〜!」

「おう! 来るときは気を付けろよ」

「うん、分かった!」

 見えなくなるまで手を振っていた。


「それにしても、ひどい状況だったなあ……。チャーリー偉すぎるよね」

『本当になー。泣けてくるぜ』

『奴は男気があるな』

「親切な貴族どころか、王子達に訴えちゃおう」

『ミアねーちゃんの交友関係、すげー。あっ、じゃあ俺はレオ兄貴に話そうっと』

「いや、レオ様だって、聖獣じゃん」


 わいわいと話しているうちに、乗合馬車が湖のほとりについた。さあ、アヒルさんボートで寮に帰って夜ごはんと、王子達に相談だ!

 

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