第43話 王都の市場
王都の市場は、旅の途中のこれまでのどの市場よりも賑やかで、たくさんの商品が並んでいた。
ファーマーズマーケットのようなテントがたくさんズラ〜っと並んでいて、それが終わりの見えない長さで続いている。どこから見たらいいか悩む!
「とりあえずたくさん買って、バッグに入れておきたいなあ!」
もはや何が入っているか分からなくなっている魔法鞄である。父さんと母さんが、何でも入れちゃった気持ち、今なら分かるなあ……。この鞄、便利すぎるのだ。
何かの革で出来ている、斜めがけの白い猫型の鞄を撫で撫でする。
まずは近くにあった八百屋さんから覗いてみる。このお店は葉物ばかり扱っているみたいだ。
「あ、パクチーだ!」
「おお嬢ちゃん、パクチーを知ってるのか?」
「うん。癖があるけど、美味しいよね」
「そうだよなあ!? だけど、まだまだこのパクチーの良さが伝わってないみたいで、あんまり売れてないんだ」
「そうなの? うん、状態も良さそうだし、わたし買うよ。たくさん買うからオマケしてくれる?」
無事におじさんに値引きしてもらえて、大量のパクチーを手に入れた。その他にもレモングラスとタイバジルもゲットです。
「こうなるとエスニックが食べたくなってくるね」
『主、エスニックってなんだ?』
「こう、タイ料理やベトナム料理みたいな感じ……って伝わらないよね……!えっと……。辛くて甘くて酸っぱい料理?」
『ふむ……』
そのまま歩いていると、ポッカリと人のいないお店があった。おじさんが困ったような顔で立っている。
何を売ってるんだろう……と近付いてみる。
こ、こ、これはーーーーーー!!!!!
お米ダァ〜!!
「おじさん、おじさん、おじさん! これお米だよね……!?」
「ん? そうだよ。あ、でも、よく見かけるお米じゃなくて、細長くて香りがあるお米なんだ。この辺りの人は食べ慣れないみたいで、全然売れないんだ……」
ふむふむ。ジャスミンライスみたいなものですね。
「あれ? こっちの麺は何?」
「ああ、そっちは、お米で作られた麺だよ」
麺は太いのから細いのまで、いろんな種類があった。
「おじさん。このお米と、この麺を全種類、大きな麻袋に一つずつくださいな」
「えっ!? そんなに? どうやって運ぶんだい?」
意味ありげにポンポンと猫の鞄を叩く。
「ああ、お嬢さん、魔法学園の生徒さんか。確かに言われてみれば従魔連れだしな」
ちなみに、王都では割と魔法鞄を使っている人も多いということで、結局このまま使うことにしている。わたしの鞄、防犯機能付きだしね。
「こんなに買ってくれて助かるよ。おまけしておくね」
たっぷりのお米や麺を魔法鞄にしまっていく。えへへ。口はすでにエスニック料理だよ〜。
その後も、ナンプラーやココナッツなど、必要そうなものをじゃんじゃん買っていく。(どこもお客さんがいなかった)
そうそう。タピオカも購入しました! これでタピオカドリンクも作ろうーっと!
「さて、そろそろお昼ご飯にしようか?」
『待ってましたー!』
ライくんとクロちゃんと、屋台で食べたいものを片っ端から買っていく。頭にライくんを乗せて、そのライくんが器用にバランスをとりつつ抱えるという方法です。視線? そんなに気にしません!
「あれ? ミアちゃん?」
「あっ! ニコラスさん!」
「やっぱり! 頭にスライム乗せてるから、ミアちゃんだと思った」
旅の途中でクリスの護衛をしていた、ニコラスさんに出会った。
「ニコラスさんもランチですか?」
「うん、そうそう。屋台って好きなんだよね〜」
「お一人ですか? 良ければ一緒にご飯、どうですか?」
「お、いいねいいね、そうしよう」
テーブルを見つけたので近寄ると、例に漏れず、そんなに綺麗じゃなかったのでライくんの出番です。
頭をテーブルの高さまで持って行く。
そうすると、ごはんをたくさん持ったライくんがジャンプをせずにテーブルに移動できるのだ!
滑るようにテーブルに移動したライくん、ご飯を持ったまま、下半身(?)でテーブルを綺麗にしてくれました。
「ライくん、ありがとね」
『あったりまえよ』
「うわ〜。やっぱりミアちゃんのスライムっておかしい」
「うちの子は可愛くて賢いんです!」
テーブルに料理を置きおわったライくんは、ポヨポヨとしている。
買ったものをテーブルに広げる。
「それにしても、たくさん買ったね」
「うちの子達、よく食べるので! それにどれも美味しそうだったから、つい」
わたしが買ったのはたくさんの串焼きに、お好み焼き、たこ焼き、焼きそば、鯛焼きだ。
なんだか日本のお祭り料理みたいなのが並んでいたので、全部買ってしまった。
ニコラスさんは、ピザだ。
「これも食べてくださいね」
「こっちも食べていいよ」
物々交換が成立した。えへへ。
「いただきます!」
うん、美味しい! 串焼きは色々買ったけど、やっぱり魔物肉が美味しいな〜。旨味が違うぜ。
「ところで、ミアちゃんはマオ寮になったんだね」
ニコラスさんが、わたしの猫耳マントを見て言う。
「あ、そうなんです。クリスもですよ。ヒマリも、アンディも」
「お嬢がマオ寮か〜旅に出る前は予想外だったな」
「寮監の先生は『問題児達のお世話係になってもらうニャ』って言ってました」
「ああ〜」
「ちょっと、そこで納得しないでくださいよー!」
話しながらランチを食べていたが、ニコラスさんが急に「ヤベッ、俺、仕事に戻らなきゃ」と言って、「またね〜!」と去っていった。
残ったわたしと、クロちゃんとライくんは、のんびり食事を続けることに。
『たこ焼きの中身がとろっとしてるのが美味しいぜ』
『あっ! それ、熱いから我があとで食べようと残しておいたやつ……!』
『へっへーん』
猫舌のクロちゃんは、熱々のたこ焼きを適温になるまで待っていたのに、取られたらしい。
しょんぼりしていて可愛そうだったので、わたしの取り皿に取っていた分をクロちゃんにあげた。
「ライくん、人のものをとっちゃダメですよ」
『は〜い』
反省したライくんは、鯛焼きをクロちゃんと半分こにして、大きい方をあげていた。
でも、そのあと更に一匹食べてたけどね……!?
結局クロちゃんが半分しか食べれてない気も……。
と、とりあえず、うちの従魔達は可愛いのだ。




