第39話 初めての授業は平民クラス
翌日、マオ寮の黒猫マントを羽織って教室に現れたオーランド殿下を見て、教室は騒然となった。
もともと同じクラスだったのか、これも権力でねじ込んだのか……。考えないようにしておこうっと。
話しかけられると、貴族の女子達が恐ろしいので、ここはなるべく離れていたい。遠くから会釈だけして、クリス達とお喋りをしていると、ウサギのピーター先生がやってきた。
「よーし。みんな揃ってるな。今から紙を配るので、自分の選択する科目を丸で囲むように」
ふわりと紙が舞ってきた。
自分の名前を書いてから、選択科目『テイマー』と『調合』を丸で囲む。
顔を上げて見ると、王子コンビの選択科目を覗こうとしている女子達が目に入る。対して二人は涼しい顔で鉄壁のガードだ。
「選択科目は、今後の進路にもつながるからな。誰かに合わせてではなくて、自分の取りたいものを取らないと、のちに苦労するぞ」
そうピーター先生に言われて、女子達も諦めて丸をつけ始めた。彼女達はやっぱり、マナーと音楽とかをとるのかなあ?
「さて、終わったか? よーく見直せよ。変更は効かないからなー」
もう一度見直す。テイマーと調合。良し!
「じゃあ回収するぞ」
紙がふわりと舞って、先生のもとに集まる。何度見てもすごいコントロールだ。
パラリとめくってから「ふうん、今年は面白くなりそうだ」とニヤリとしたピーター先生が気になる。
「よし。朝のホームルーム終わり! 一時間目が始まるから、昨日配った時間割に沿って教室移動すること」
おお。早速、授業だね。
えっと、まずは地理と歴史。初級クラスだ。うん。
他に初級クラスの人、いるかなあ? と思っていると、クイクイとマントが引っ張られた。
「ミアは初級クラス……?」
ヒマリがウルウルした目で見つめている。
「うん、そうだよ!」
「良かった、ボクもなんだ!」
ヒマリがパァッと笑顔になる。
「きっと初級クラスって庶民が多いんじゃないかなあ」
「貴族は家庭教師がつくもんね」
教室に入って席につく。
歴史・地理の初級クラスは、なんと七人しか生徒がいなかった。
マオ寮から二人、コウ寮から二人、ドルフィン寮から二人、そしてまさかのローズ寮から一人。
ローズ寮の女の子は、髪の毛がピンクだ。ピンクと言っても、母さんみたいな淡い色ではなくて、濃いピンク。ツツジのような。
先生が入ってきた。
「よし、全員いるね。このクラスは歴史・地理の初級クラスだ。ちなみに、ここにいる全員が今年の平民の新入生だ。
学園は平等と謳ってはいるが、身分を感じることもたくさんあるだろう。だから、ここにいる仲間とは仲良くしておいた方がいいぞ」
「先生! わたくしは平民なんかとは違いましてよ!」
ピンクちゃんが声を挙げる。
「あれ? そうなの?」
「そうですわ。ただの平民がローズ寮に入れるわけないでしょう?」
「ごめんごめん。このクラスに貴族がいたの初めてだからさ。毎年、平民だけなんだ。あれ、でも今年の平民は七人いると聞いてたんだけどなあ?」
先生があれ? と首を傾げていると、「す、すみません遅れました! 迷子になってしまって」と、もう一人が教室に入ってきた。
「ああ、君が平民の子だね」
「? はい、そうですけど」
「よし。じゃあこれで全員だね。じゃあ教科書を配るよ」
そう言うと、二冊の教科書がふわりと飛んできた。
歴史と地理だ。
「じゃあ、まず歴史からだね」
そう言って、授業を始めた。前世の頃から歴史は苦手だった気がする。王族の名前とか覚えられないよ〜!
そう思いながら教科書をパラパラとめくっていると、ルイスの憧れの叔母様、桜姫についても少し載っていた。ふんふんと読んでいると、先生にあっさりと見つかって、「授業を聞くように」と怒られてしまった。
地理の授業は結構面白かった。旅をしてきたところは分かるしね!
そんな感じで、最初の授業はあっさりと終わった。貴族のピンクちゃんは、「平民と馴れ合う気はないわ」とサッと出て行ったけれど、他のメンバーは残っている。
「お前らも、平民だろ? でも文字の読み書き講習にはいなかったな」
「読み書き講習?」
「俺ら平民は文字の読み書きが苦手だから、入寮してからずっと、講習があったんだよ」
コウ寮の男子達が「思い返すだけでも辛い」というゲンナリとした表情で教えてくれた。
「そんな講習があったんだねぇ!」
「ボクは街育ちで宿の手伝いもしてたから、読み書きは結構出来たんだ」
「わたしは田舎育ちだけど、母さんが教えてくれたんだよね〜」
「ふ〜ん、そっか。まあ、今のところ平民だからって困ることはそんなにないけど、何かあったら、よろしくな!」
「うん、みんなよろしくね!」
そんな話をしていると予鈴が鳴った。
「お、また移動しなくちゃ。次の授業はなんだったかな」
時間割を出して、チェックする。
「あ、早速、選択授業なんだ!」
昨日は何も書かれていなかった枠に、「テイマー」と浮かび上がっている。自動で更新してくれる、ファンタジー。
「俺らは授業は無いみたいだ」
「え? そうなの?」
「たぶん、全部の選択授業の時間はずらしてあるんじゃないか? 一人二つ選択してるんだから、同じ時間にあると被っちゃうだろ」
「たしかに」
「お前らは何の授業なの?」
「テイマーだよ!」
「テイマー……!? また変なの選んだな」
「そんなことないよ、夢はモフモフパラダイスだよ! じゃあ、授業行ってくるよ」
「モフモフパラダイス……? まあ、頑張れよ〜」
残りのみんなは、まだ教室でお喋りをするみたいだ。
テイマーの教室はどこだろうと思っていたら、時間割の裏に地図が浮かび上がった。魔法の時間割、素敵すぎる。
「じゃあヒマリ、行こう〜!」
「うん!」
さあ、モフモフパラダイスへの第一歩を踏み出すのだ!




