第38話 テイマーは不人気?
「あっ、ミアさん!」
お喋りしていたわたしを見つけて、オーランド殿下が駆け寄ってくる。ワンコか。
「ここ座ってもいいですか?」
「もちろん大丈夫です。あ、でもマオ寮は、ローズ寮と違って自分で食事を運ぶスタイルですよ」
「えっ?」
「ほら、ルイス達はあっちに並んでますよ」
「本当だ、気がつかなかった。へぇ〜。面白いね。じゃあ、ちょっと行ってくる」
パタパタと駆けていく。
「ちょ、ちょっとミア。今の第二王子のオーランド殿下ではなくて? 聖獣様もいらっしゃるじゃない」
「うん。なんか図書館で知り合ったの」
「オーランド殿下はローズ寮ではなかった? 今日クラスの子達が言ってたわよ」
「そうなんだけど、ルイスが好きすぎてマオ寮に変えたみたい」
そう言うと、クリスは混乱していた。
「寮の変更ができるなんて、ボク知らなかったよ」
「ここぞとばかりに権力を使ったらしいよ」
「おお〜。さすが王族」
そう言いながら、デザートを食べ続けていると、オーランド殿下がマカロニグラタンと共に戻ってきた。
それから、大量のデザートを、私たちのテーブルに追加した。
「はい。追加のデザートだよ」
これですぐには席を立てなくなった。何気に腹黒いのかもしれない。
ちなみに、聖獣レオ様は「俺は今日は、こっちに参加するわ」と言って、従魔チームのテーブルに座った。
従魔達は盛り上がっている。特にライくんが楽しそうだ。ポヨポヨ。じゃーんぷ!
レオ様は人語も魔物語も話せるなんてすごい。さすが聖獣!
聖獣様と従魔達を見つめてニマニマしていたら、クリスに袖を引っ張られた。
「ミア、ミアってば」
「ん?」
「ん? じゃないわよ。さっきから、オーランド殿下が話しかけてるわよ」
「お?」
殿下の方を見ると、クスクス笑われていた。
「ミアさんは本当に、従魔が好きですね」
「はい! 将来はモフモフパラダイスでスローライフするんです!」
「お互い夢を叶えましょうね! ところで、皆さんは選択科目は決めましたか?」
「みんなテイマーを取ることは決まりで、あとはそれぞれ調合と武術と魔道具ですね〜」
「テイマーですか。意外ですね」
考えるそぶりを見せるオーランド殿下。
「意外ですか?」
「ミア、テイマーって、毎年人気のない科目なんだよ」
ルイスが言う。
「ええっ! モフモフパラダイスに近付けるのに? あれ、じゃあ、なんでみんなはテイマーとるの?」
「わたくしは旅に出る前は音楽にするつもりだったのよ。でも、ミアと旅をしている間にテイマーも気になってしまって」
「分かる分かる。ボクも、ライくんとか見てるとテイマー気になるもん」
「配達従魔はみんな、一人一匹はいるけど、他にテイムしている人は珍しいからな」
そっかー。うちの従魔、可愛いもんなあ。へへへ。
「ルイス兄さん、あのスライム、そんなに凄いんですか? スライムラップは既に見せてもらいましたけど」
「ああ。確かに、入寮してからずっと間近で見ていたけど凄いぞ。スライムの常識を覆された。テイマーが気になる気持ちは分かるな……。ふむ、テイマーか。俺もテイマー、取るか?」
「ルイス兄さんがとるなら、僕もとるよ……! あ、でもあえて違うクラスをとった方が、情報とかも集まりやすくて兄さんのためになるかな……。でも近くにいたいし……」
なんだかブツブツ言っている、ブラコンのオーランド殿下に全員がちょっと引いている。
「な、なんかオーランド殿下ってイメージと違ったのね」
「もともと、どう言うイメージなの?」
「社交界で言われていたのは、孤高の一匹狼ね。俺に近寄るな、って感じかしら」
「狼って言うより、尻尾振ってるワンコに見えるね……」
「「「………」」」
全員、無言で同意している。
「そろそろ、私たちは食べ終わったし、部屋に戻ろうか? お風呂も入りたいし」
「うん、そうしよう」
「あ、でもオーランド殿下が持ってきてくださったデザートがまだいっぱいあるわ」
「ライくんにスライムラップしてもらおうかな?」
従魔テーブルを見ていると、なんだか、ピーピー、キューキュー話が盛り上がっっている。ライくん、なぜかテーブルの中心で踊ってるな……。
「ライくーん。踊り終わったらスライムラップお願い!」
『おっ、ミアねーちゃん。了解!』
そのまま踊っていた勢いで回転しながら私たちのテーブルにハイジャンプしてきた。
『ライ様、登場ーーー!』
カッコつけたポーズで、ポヨンポヨンしている。はー可愛すぎる。
「ライくん、あんなにジャンプできたんだねぇ、凄いねぇ」
『まあね! 俺様凄い!』
「さて、このデザートなんだけど、ラップしてくれる?」
『任せとけって〜。でも、このクッキー一枚食べてもいい?』
「さっきあっちの従魔テーブルでも、たくさん食べてるの見てたけどね……。いいよ、お食べ」
『イエーイ!』
早速、ライくんはクッキーを一枚、右頬に入れてじわじわ食べつつ、左頬でスライムラップを始めた。器用だな〜。
ラップしてもらったオヤツは、そのうちみんなで寮の部屋で女子会するときに食べようっと。
さて、部屋に戻る前に、わたしには達成したいことがある。まずは隣の従魔テーブルへ。
「お? どうした? もう部屋に戻るのか?」
ダンディーボイスで聖獣レオさんが聞いてくれる。
「はい! その前に一つ、お願いがあります……!」
「あ? 願い?」
少し雰囲気が怖くなった。怒られる? 怒られるかも! でもお願いしたい……!
「握手してください……!」
ドキドキしながら頭を下げる。
「……は?」
「あの、だから、握手を……」
「ぶふっ。握手なんて初めて求められたぞ。しょうがねえな」
ライオンさんの大きな手で握手をしてくれた。両手で包んで、さりげなく肉球と外側のふわふわも堪能する。サワサワ。ふわふわ。最高では……!?
「くっ、もういいか?」
「は、はい! ありがとうございました!」
「よし、良い子だ」
そう言って、頭をポンポンしてくれた。なんだか、ポンポンからじんわり柔らかな光が出ていた気がした。頭の上だから見えないけど。
「今日はなんて良い日なんだろう。手も頭も洗いたくない」
「いや、ミア、ちゃんと洗って。さあ、部屋に戻ったら、お風呂に行くわよ」
「はーい」
夢心地のまま、食堂を後にしたのであった。転生させてくれた神様に感謝!




