第36話 白銀オーランド王子と、聖獣レオさん
「もっ……!」
「もっ?」
「モフモフだーーー!」
白い大きなライオンさんです。寝そべっています。うわぁぁ可愛い。あの横に寝転がりたい。胸毛のところに顔を埋めたい。見るからに、ふかふか。モフモフ。
『主、主、顔がだらしないことになってるぞ』
はっ、いけない。
「こ、こんにちは! 大きなライオンさん! それから……えっと、白銀のお方!」
「は、白銀のお方……ね。うん、こんにちは」
「くっくっくっ」
あれ? 今、ダンディーなお声が聞こえたような。
ポカンとして、キョロキョロ見回す。
「そなたは、何を探しているのだ?」
「いや、今、なんだかダンディーな良いお声が聞こえてきて。……。あれ?」
「そうだ。話しているのは、俺だ」
「従魔じゃないのにお話が出来るですって〜!」
ビックリしていると、呆れたような顔をされた。ライオンだけど表情が豊ね。
「お前、俺のことを知らないのか?」
「あら、有名なお方なの? 田舎から出てきて、世間知らずなもので……」
「この『ライオンさん』は聖獣のレオだよ」
「『白銀のお方』は第二王子のオーランドだぞ」
「えっ! ええっ!」
ダブルでビックリである。
「第二王子ってことは、ルイスの弟さん……! えっと、わたしは、ミアです。こっちのネコフクロウがクロちゃん、スライムがライくんです」
シュッと二匹が手(?)を挙げる姿が毎度可愛いぜ。
「ネコフクロウとスライムとは珍しいね」
「えへへ。可愛くて、賢くて、自慢の従魔なんです!」
ライくんはミョーンと縦に伸び縮みして、可愛さアピールをしているし、クロちゃんも嬉しいのか翼がパタパタしている。うちの子達、尊い。
「あれ? ルイスの弟さんってことは、双子ですか?」
「ふふ、君、本当に王家のこと知らないんだね。僕は、側妃の息子なんだ」
「へぇ〜、なるほど」
「ルイスと友達なの?」
「はい! ルイスは胡散臭い笑顔をやめると、とっても良い人ですね」
聖獣レオさんと、白銀王子のオーランドさんがビックリした顔をしている。
「ルイス兄さんは、寮ではそんな感じなの?」
「そうですね〜。今日、学校では王子スマイル貼り付けて頑張ってましたが、マオ寮では完全に気を抜いてますよ」
「そっか〜。城ではいつも、あの王子スマイルだったから、驚いた」
「ルイスとは仲良しなのですか?」
そう質問したら、暗そうな顔をされた。
「正妃と側妃から産まれた、同い年の子ども。僕は仲良くしたくても、環境がなかなかそうはさせてくれないんだ」
「それなら、学校にいる間がチャンスですね! 大人達もいないし」
わたしの言葉に、ハッとした様子のオーランド王子。
「ありがとう、そうだよね、こんなところで、ウジウジしてたって始まらないよね。入学式もサボっちゃったし」
「まあ、ここはここで、すごい素敵なところだとも思いますけどね。日当たりに良い眺め、なんだか美味しそうなお茶!」
「ああ。ごめん、君にお茶も出してなかったね」
そう言って、お茶を手ずから淹れてくださる。なんだか催促したみたいだけど、一応そういう意図はなかったのだ。ほんとだよ?
抱えていた本を二冊、テーブルに置いて、早速お茶を頂く。
「このアップルティー美味しいですね〜」
「そうだろう? これ、僕がブレンドしたお茶なんだ」
「えっ! すごい!」
「このお茶に合うオヤツ持ってるけど、図書館は飲み物以外は禁止ですもんね。これ、お土産にするので後で食べてみてください。実家のアップルパイです」
そう言って、バッグからパイを二切れ取り出す。
「ライくんラップお願いね」
『ちょっと表面舐めても良いかな?』
「だめよ〜」
『冗談だぜ。そこのお茶を一口もらうだけで良いぞ』
「しょうがないな〜」
そんなことを言いながら、パイをライくんの中に突っ込んで、スライムラップで包む。
「はい、オーランド王子、あ、殿下? と、レオさん。どうぞ!」
ポカンとした顔で、受け取ってくれた。
「あっ! 毒味? 毒味が必要ですか?」
「いや、心配ない。俺があとで毒味するからな」
「え、それよりも、そのスライムの膜は何……?」
「ああ! これはスライムラップって名付けて呼んでるんですけど、食べ物を小分けにするときにすごい便利なのです! しかも、無味無臭なので、このまま食べることも出来るんですよ〜! お肉なんかは、このまま焼いちゃったりすることもあります」
ライくんの凄さを知ってもらおうと、ついつい説明に熱が入る。
説明している間に、ライくんは紅茶用のスプーンでクロちゃんにお茶を少し飲ませてあげたり、自分で飲んだり、楽しそうにポヨポヨしている。
「すごいね、スライムって賢くて便利なんだね」
『まあ、俺様がすごいだけだけどな〜』
ポヨポヨ伸び縮みしながら、ライくんが言っている。
「ところで、図書館のこんな奥まで何で来たの?」
「本を読むために場所を探していたら、アップルティーの良い香りがしたので、つい誘われて」
「ああ、なるほど。何の本を読むの?」
「この二冊です!」
「覚えて損なし生活魔法」と、「モフモフパラダイス」の表紙を見せると、オーランド王子も聖獣レオさんも笑い始めた。
「何で笑うのですかー! 生活魔法を極めて、モフモフに囲まれたスローライフを送るのが夢なんです!」
「ご、ごめんごめん。入学初日に図書館に来るくらいだから、勝手に難しい本を読むのかなあと思っていたんだ」
「わたしは、わたしの夢のために頑張るだけなのですよ」
「うん。本当に、そうだよね! よし。僕もウジウジしていないで前進することにするよ。」
なんだか突然やる気を出したオーランド王子は「……今が権力の使い所だよね」となんだか物騒なことを呟きながら「じゃあ、僕はやることがあるから」と去っていった。
そして二冊の本を借りてマオ寮に帰ったわたしは驚くことになる。
なぜならオーランド王子が晴れ晴れとした顔をして、マオ寮に引っ越してきているのを目にしたからだった。




