第33話 実力テスト
やはり教室の中ではすでに説明が始まっているようなので、後ろから入ろうということになった。
ここは王子ルイスを盾にして、わたしはこっそり着いていくことにする。
「ほら、ルイス、先行ってよ」
「えー、しょうがないなあ」
ガラリと扉を開けると、皆の視線が一斉に集まる。
ルイスの影に隠れて教室へ入る。
担任の先生は……。可愛いウサギの先生だ。丸っと可愛い、喋るうさぎです。ファンタジー。
「おう。お前ら遅かったな」
お声はダンディです。
「すみません。僕たち、身につけている魔道具が原因で転移できなかったみたいなんです」
「そうか。とりあえず、座ってくれ。席は空いているところを見つけて。あ、俺はこのクラス、一年A組の担任、ピーターだ」
ルイスは赤いマントをつけている貴族達からの熱烈コールがあり、彼らの真ん中に座った。おお、あの席じゃなくて良かったよう。
わたしは……。同じ部屋の三人が席を確保していてくれたようなので、そちらへ座る。皆同じクラスで嬉しいなあ!
「改めて、説明するぞ。
このクラスには、王族から平民までいるが、学園では身分差は無しだ。きちんと覚えておけよ〜。大切なのは学力と魔法の技能だ。
というわけで、今から実力テストをする。」
「えっ!」
ビックリして、周りを見ると、貴族達は「ようやくだね」という顔をしている。
貴族は、色々と事前情報を手に入れているらしい。
自分の目の前に紙が配られる。ウサギのピーター先生が、ちょいちょいっとみんなの前に送ってくれたようだ。すごいな〜。
「じゃ、がんばれよ〜。制限時間は六十分。はじめ!」
まず初めは……。歴史と地理と一般教養……!? 王国の歴史なんて知らないよ〜! 王様の名前は? 桜姫の名前は? なんて知ってるわけないじゃん。地理も、旅で通ってきた場所以外、ほとんど空白だ。
うーん。次、行こう。
あっ、薬草やキノコ、魔物の名前を書くのは分かる! 旅の道中、冒険者ギルドで納品したからね。
あっ、でも家の周りで飛んでた鳥とか、食べてたお肉、この辺りの名前は知らないなあ。旅の間には出てこなかったからなあ。美味しいんだけど。
最後は計算か〜。
うん、これは簡単だね。算数だから、ちょいちょいっと。
こんなものかな? うーん。六十点くらい取れればいいけど。って、平均点はどれくらいなんだろう? お貴族様はちゃんと勉強してくるから結構点数が高そうだね。
終わったので、キョロキョロしていると、ウサギの先生と目が合った。あっ、やばっ。カンニングだと思われちゃう〜。
静かに近づいてくる、ウサギのピーター先生。
「もう終わったのか?」
「はい」
「計算問題もか?」
「終わりました」
周りがザワリとする。あれ?
「ふうむ、そうだな、計算問題は終わってるみたいだな、空白も目立つが、これで提出でいいか?」
「問題ないです。知らないことは書きようがないですし」
「ふふ、それもそうだな」
「では、君にはこの本を渡すので、制限時間が終わるまで静かに席で待ってるように」
「はい」
「他に終わったものがいれば、そのタイミングで挙手してくれ」
先生が渡してくれた本は、学生生活の手引きだった。必須科目に、選択科目の取り方などが書いてある。
まだ一年生なので必須科目も多いが、各授業の初回の実力テストに合格すれば、受講すべき必須科目も減るらしい。今回の実力テストは、ザックリとした実力別のクラス分けに使われるんだとな〜。
きっとお貴族様は、この本を事前に入手して読んでるんだろうな……!
本を読み込んでいるうちに、六十分が経った。結局、早めに終わったのは王子ルイスと、眼鏡のイーサン、そして私のクリス、それから知力が自慢のドルフィン寮、水色マントの皆さん。
おお! なんだかマオ寮もそこそこ優秀みたいだね……!
って、わたしは早く終わっただけで空白多いし、黄昏れているヒマリやヴィーちゃんが見えるけど。
「よし、テスト終わり!」
ウサギのピーター先生が魔法で回収していき、代わりに、さっきの本が配られた。
「今から採点して基礎科目のクラス分けをちゃちゃっと作るから、お前らはランチタイムな。三時間後にまたこの教室に集合すること。その本に目を通しておけよ〜」
ピーター先生が出ていくと、途端に教室はザワザワした。
「ランチタイムだって!食堂に行こうよ〜!」
「ボク、この本読まなきゃ……」
「大丈夫、ご飯食べたら、サクッと説明してあげるよ」
「ほんと? じゃあ、ご飯食べる……!」
クリス、ヴィーちゃん、ヒマリと教室を出る。
「さっき貰った本に、校内の地図も書いてあったから食堂までの道順、分かるよ。付いてきて〜!」
四人で歩いていると、すぐ後ろに王子達も付いてきていた。
つまり、王子目当ての貴族も付いていくるわけで、なんだかすごい人数の先頭を歩くことになってしまった。途端に不安になってきた……。
「食堂、こっちかな……」
「えっ、ミア、さっき自信満々だったじゃない」
「でもなんかプレッシャーがすごくて」
「大丈夫、こっちで合ってるぞ」
後ろからイーサンの声が聞こえてきた。うん。この眼鏡男に任せておけば大丈夫そうだ。
無事に食堂に辿り着き、一安心!
しかし、ホッとしたのも束の間。
「平民が先導ご苦労様。ここからは高貴な私たちが先よ」
そう言って、赤いマントの貴族の方々が押しのけていった……。ルイスを無理やり先頭にして。
こちらを見て、ごめんって視線を送られたが、それが逆にお嬢様方の怒りを買ったらしく、ギロリと睨まれた。
「なんなんだ、あいつら」
「ほんとうに、信じられないですわ」
ぷんぷん怒る貴族組のおかげで、イラっとした気持ちが柔らいだ。
「ビックリしたけど、まあ、面倒くさいし関わらないでおこうか……」
「うん。ボクもそれが良いと思うな」
食堂は、どうやらフルサービスの個室と、普通のカフェテリアタイプがあるみたいで、赤マントの貴族は個室へ行ったようだ。
わたしたちはカフェテリアを使うことにした。
さあ、ランチタイムだよ!




