第32話 入学式
学校が始まるまでの間、穏やかに日々は過ぎていった。変人ばかりのマオ寮は、先輩も同期も、みんな良い人ばかりでとても居心地がいいのだ。
あれ? 変人ばかりで居心地がいいっておかしいな?
毎日、寮の中を探検して、ようやくネコ衛門のお世話になることも少なくなってきた。この寮ね、本当に迷路みたいなの!
そうそう。ようやく母さんに手紙を書きました。「手紙が遅すぎるわよー!」と文句を言われたけどね。
「マオ寮に入ったよ」と伝えたところ、「母さんもマオ寮だったわ」と言っていた。やっぱりな〜。
さて、そんなわけで……!
今日は入学式です!
魔法学園にはホールがあるのね。なんて言うの? 前世の音楽ホールみたいな感じ? そこに、寮ごとに縦に列になって座ります。
こうして見ると、みんな寮ごとにマントがやっぱり違うんだね。
薔薇のローズ寮は、真っ赤なマント。金色の薔薇の刺繍が見事!
イルカのドルフィン寮は、水色マント。光の反射の具合が南国の波打ち際みたいで美しいの。なんかキラキラした生地なのかなあ?
犬のコウ寮は、黄色のマント。犬耳付き!
そして我らが猫のマオ寮は、黒のマント、猫耳付き〜!
ローズ寮、ドルフィン寮、コウ寮では既に序列みたいなものが出来上がっているようです。ローズ寮は高貴な順に、ドルフィンは賢さ順に、コウ寮は……元気な順?
そしてマオ寮は……。うん。統制などない! 王子がいるのに、王子もやる気ない! みんな思い思いに過ごしています。
周りの観察をしていたら、ついに入学式が始まった。
学園長のウィリアム先生が前に出てきた。学園長って言うくらいだから、長いお髭の「THE魔法使い」みたいなおじいちゃんが出てくると思っていたのに、キラキラのイケメンが出てきた。
髪の毛は見事な白髪だけれど、歳は二十五歳くらいだろうか?
「あー。新入生の皆さん、魔法学園入学おめでとう。
俺は学園長のウィリアムだ。この学園では、皆、切磋琢磨して魔法の技術を磨くように。
寮ごとの諍いは、きちんと公式の決闘で決着をつけること。私闘はだめだぞ〜。俺の仕事が増えるからな。
学園生活では攻撃魔術を人に向かって打つのも、禁止な。まあ、打ちたくなるのは分かるけどな。
ん〜。まあ、そんな感じだ。
さて、これから教室に移動させる。俺が魔法で教室まで飛ばすから抵抗するなよ。着いた先がお前らのクラスだ」
うん。なんか緩い学園長だ。
でも、学園長が指を振る度に、生徒達がホールからごっそり消えていく。すっごい! 教室に転移させてるんだ……!
ワクワク。ワクワク。ワクワ……。あれ?
周りのみんなが消えたのに、わたしだけ残っている。いや、王子のルイスも残っている。二人で「あれ?」と目を見合わせる。
わたし達以外の人が全員消えた後、学園長が私たちの目の前に現れた。
「お前らなー、抵抗するなって言っただろー?」
「いや、僕たち、何もしてないですよ」
「そうです! むしろ転移、楽しみにしてたのに!」
「んー。なんか持ってるか? 魔法はじく系のアイテム。あ、お前は王子か。王子なら王族だけが持てるアクセサリー、何かつけてるだろ」
「あ、これですかね?」とルイスは腕輪を見せる。
「んー、そうだな、お前はこれが原因だ」
「さて。お前は……」
「わ、わたしは母さんがくれた魔道具しか持ってないですよ! こっちの腕輪が魔法鞄で、こっちが着替えと魔法杖が入ってる腕輪です。あ、この虹色の指輪は露店で友達と買ったやつだけど、これつけてる友達は飛んでったし……」
「お前な、どこの姫だよ。全部一級品じゃねえか。その指輪もエルフ作だろ? 露店で買ったってマジかよ」
「えええ! エルフ! あのお姉さん、エルフのお姉さんだったんだ〜。 それに姫なんかじゃないですよ。わたしは辺境の山の麓で育った、立派な平民の田舎者ですよ」
「お前な、普通の平民がそんな装備揃えられるかっつーの。むしろ王子でも難しいぞ。本当にどこから来たんだ? とりあえず、杖を出してみろ」
「えー」
「いいから」
「はーい。 マジカルミアミア! ニャーニャー!」
「……。なんだその呪文」
「だから出したくなかったんですよ」
「それが杖か」
「そうです。猫の顔がついてて可愛いんです!」
「………お前、この杖どうした?」
「母さんが昔使ってたのを改造してくれました」
「……。そうか。お前が。確かにアイツの面影あるな」
「母さんのこと、知ってるんですか?」
「まあな、同級生で、同じマオ寮出身だ。あー、これなら納得だわ。こんな強力なの持ってちゃ俺の魔法で飛ばないわけだわ。よく見たらお前、防御の魔法ばかり自動発動してんじゃねえか」
防御の魔法ばかり……。そっかあ。母さん、意外と心配してくれていたんだなあ! あっという間に家から追い出されたから、心配してないんだと思ってたよ。だから危ない目にも合わなかったのかもね。
「ミアの母上もマオ寮だったの? 学園長と同級生でマオ寮には、僕の憧れの叔母様、桜姫もいるんだよ〜! もしかしたら友達かもね!」
「へーそうなんだー!」
「桜姫……な」
なぜか遠い目をし始めたウィリアム学園長。なんか振り回されたんだろうか。
「さて、お前らは歩いて教室まで向かうしかないな。二人とも1年A組だ。俺の従魔に案内させるから、着いていけ」
「はーい」
「わかりました」
ポンッと出てきた従魔の小鳥さんに着いて学園内を歩いていく。
「もう絶対に説明とか始まってるよねー? 最初から目立つのやだなー。しかもルイスと一緒とか、女子達に恨まれそう」
「ハハハ。まあ、そうだろうね」
「くぅーー! そこは『僕が守るよ』とかでしょー?」
「言われたい?」
「いや、別に。でも、最初に出会ったときの嘘っぽいキラキラ笑顔の王子モードより、今の方が断然いいね!」
「……っ。ありがとう。でも教室に入ったら、ちょっとは王子モード戻すからね。笑わないでよ」
「了解」
喋っている間に、教室についた。
小鳥さんにお礼のサクランボをあげると、嬉しそうにクチバシで咥えて飛んで行った。
さあ、いざ教室へ!




