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第27話 ツンデレのアンディ

「「「「あっ……」」」」

 わたしとヒマリ、そして貴族の少年と従者さんの声が重なる。


「ああー! 冒険者ギルドで俺様を殴ったやつ!」

「ふ……ふん! 後悔はしてないわ」


「殴った? どういうことなの、ミア」

 クリスに聞かれたので、事のあらましを説明する。カレン様も、少年も聞いている。全てはヒマリの耳を守るためだったのだと。

 ため息をつくカレン様。カレン様がちらりと目をやると、従者さんは「その通りです」と認めて頷いている。


「お、俺は差別なんてしてないぞ……!」

「『獣人は亜人だぜ。俺みたいな人間様に仕えるべきだ』と言っていたことについては?」

「だって、その通りだろ! 俺みたいな貴族に仕えていたら、守れるだろ」

「「「は……?」」」

「ヒマリの耳を触ろうとしたことについては?」

「だって、お前が触ってたから、俺も触りたくなって……」

「「「………」」」


 もしかしてあれですか、逆に獣人が好きすぎて、ちょっと拗らせてる感じ……?


 カレン様はため息をつきながら言う。

「この子は、昔から言葉が足りないというか、言葉選びを間違えているというか……。勘違いされやすくて。本当は優しい子なんだけどね」


「じゃ、じゃあ、もしかして、わたくしに『貴族が乗合馬車で移動するなんてみっともないから俺様にも従魔が来たら一緒に馬車を出してやる』と言ったのも……」

「だ、だって、乗合馬車なんて危ないだろ……!」

 なるほど。クリスにも何か暴言を言っていたらしい。


「あれ? そういえばクリスも会ったこと、あったんだね」

「ええ。今は領主館でお世話になっているから」

「そっかあ。あれ? 従魔が来たら?」

「ああ、わたくしたち、みんな同級生なのよ」

「ええ〜! 年上だと思ってた!」

 ちらりと見ると、気まずそうに立っている彼。


「皆さん、うちの孫のアンディと面識があるようですが、一応紹介しますね。彼はアンディ・コーシカ」

「コーシカ家の三男、アンディだ」


「そして、我が家の猫たちと遊ぶ依頼を受けてくれた冒険者のミアさんと、ヒマリさん。彼らも魔法学園に入学予定です。」

「ミアです!」

「ボクは、ヒマリ……」


「そして、ミアさんとここまで一緒に乗合馬車で来た、クリスティーヌ・イリレイさん」

「イリレイ家長女の、クリスティーヌですわ」


「さて、アンディ。あなたの言葉が足りずに、お嬢さんたちを悲しませてしまったみたいです。しっかりと謝罪なさい」

「えっ! だっ、だって……」

「だって、ではありませんよ!」

「ご、ごめんなさい……」

「声が小さい!」

「ごめんなさい!」


「謝罪を受け取りましたわ」

「うん……」


 いやあ、綺麗にまとまって良かったなあ、カレン様は意外と熱血だなあと思っていたらアンディがこちらをキッと向いた。

「でも、俺はこいつに殴られたぞ!」

「それはヒマリの耳を守るためだったのよ」

「でも、お前は触ってたじゃないか」

「わたしたちは友達だもの、当たり前じゃない」

 そう言いながら、これ見よがしに、ヒマリの耳をモフモフする。モフモフ。へっへーん。


 悔しそうにプルプルしているアンディ。

「カレン様の家には、猫がいっぱいいるんだから、ヒマリじゃなくて猫をモフモフしなさいよ」

「俺、動物にすぐ逃げられるんだ……」

「うるさくしたり、走って近づいたりしてない?」

「し、してる……」

「だからよ。猫のおやつ持って、動かずに座ってればきっと来てくれるわ」

「そうかな?」


 その後は、なぜかアンディとも結構仲良くなった。ただのツンデレのいい人だと思うと、割と大丈夫。

 みんなでヒマリを囲んでじっと座っていると、猫たちがやってくるのだ。ヒマリ猫ホイホイ。アンディは初めて、たくさんの猫たちと触れ合うことができて幸せそうだった。

 たまにヒマリの耳を見ていたけどね。ヒマリの耳はわたしが守る!


 結局、このコーシカの街を出るまでの間、毎日のようにカレン様の家に通い、猫と戯れ、おやつを頂き、アンディと軽い言い合いをする……という日々を送り、あっという間に馬車が旅立つ日になった。


 アンディも一緒に来たがったけれど、彼の誕生日は少し先。従魔が現れてから家の馬車で移動するんだそうな。

 ちなみにクリスが乗合馬車なのは、家の方針だそうだ。辺境貴族。たくましく育てということなのだろう。


 ヒマリを見送る、モフモフ亭のおじさんは今にも泣き崩れそうで、女将さんが支えていた。


 さあ、魔法学園へレッツゴー!

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