第26話 ニャーニャーパワー!メークアップ!
お腹がいっぱいで動きたくないけれど、テーブルを探してウロウロしている人たちがいるので、食べ終わったら明け渡すべきなのだ。
立ち上がって、歩きながら相談する。
ちなみに、後ろから「このテーブルだけすごく綺麗じゃないか!?」と驚きの声が上がっていた。
「次は、どこか行きたいところ、ある?」
「お腹がいっぱいだから、腹ごなししたいけど、ここは街だもんね。駆け回れる草原とかないよね……?」
「さすがに草原はないと思いますわ」
「あっ! 駆け回れるところ、思いついた」
「どこ……? あっもしかして! で、でも、また来てねって言われたからといって、昨日の今日で、迷惑だよね」
「どこですの?」
クリスに昨日の出来事を説明する。
「たくさんの猫だなんて、そんな夢のような場所が……!?」
「お嬢、その家主さんって多分……」
「あら、ミアちゃんとヒマリちゃん、こんにちは」
ニコラスさんが何かを言いかけたところで、昨日のメイドさんにバッタリと遭遇した。
「「こんにちは!」」
メイドさんは買い物帰りのようで、荷物をたくさん持って歩いていた。
「そちらの荷物を運ぶの、手伝いましょうか?」
「あら、ミアちゃんありがとう。ちょっと買いすぎちゃったわ。でも今は皆で遊んでいるところでしょう?」
「あの……ちょうど、皆で昼ごはんを食べ終わったところで、猫の話をしていて……。今から遊びに行ったらやっぱり迷惑ですか?」
「そんなことないわ。カレン様も歓迎だと思うわよ」
「やったあ! ありがとうございます!」
流れるような動作でメイドさんの荷物をゲット。ふふ。おうちに行くならお手伝いせねば。
「あっ、紹介が遅れましたが、友達のクリスと、その護衛のニコラスさんです。こちらは、さっきお話ししていた猫の家のメイドさんだよ」
「クリスティーヌ・イリレイですわ」
「ご丁寧にありがとう。わたしはただのメイドですのよ」
お話ししながら歩いているうちに、あっという間に家につき、応接間に通された。
「今、家主のカレン様に話をしてくるから、ここで待っていてね」
「「はいっ!」」
今日は、応接間にすでに猫たちがいる。ヒマリの周りは大人気だ。く、くやしい……。天然猫ホイホイめ。
「それにしても、突然押しかけて良かったのかしら」
猫たちに顔が緩みっぱなしのクリスが今更な心配をしている。
猫たちにうっとりしていると、扉が開いた。
「あらあら、ミアちゃんにヒマリちゃん、いらっしゃい」
「「おじゃましてます」」
「そちらのお嬢さんに護衛のお兄さん、初めまして。わたしは家主のカレン・コーシカよ」
「初めまして。わたくし、イリレイ家長女のクリスティーヌですわ」
クリスが貴族の礼とやらをしている。
「「コーシカ……?」」
「あら、ミアちゃんとヒマリちゃんには言ってなかったわね。わたしはここの街、コーシカの領主の母なのですよ」
「ええーーー!」
「息子にわがままを言って、こちらの家を用意してもらったのよ。段々とこちらにいる時間を長くして、もうあっちの領主館にはほとんど帰ってないわ」
うふふ、と笑うカレン様。
「貴族だけれど、こちらの屋敷にいる間は、気軽に接してもらって構わないわ。さすがに領主館だと、色々とうるさい人たちがいるから、礼儀とやらが必要だけれどね。まあ、あちらにはなかなか行かないから大丈夫よ。さあさあ、猫たちと遊びにきたんでしょう? 昨日と同じでお庭はどうかしら? おやつも用意しておくわ」
「えへへ、ありがとうございます!」
早速、庭に出て、猫たちと遊ぶ。走ったり、猫魔法で遊んだり、全速力だ。クリスは猫じゃらしを見つけて、それで遊んでいる。美少女と猫。絵になる。クリスの後ろに立つニコラスさんは猫に登られているけどね!
たくさん遊んだあとは、またオヤツをご馳走になりました。
「今日のおやつ、リンゴのパイも美味しいです〜」
「そう言ってもらえて嬉しいわ」
「クリス、これカレン様が作ってるんだよ!」
「えっ! すごいですわ。 料理人顔負けですわね」
「うふふ、ありがとう」
「そういえば、ヒマリちゃんにも従魔ができたのね?」
「はい! 昨日ボクの誕生日で、この子、オレンがボクに魔法学園入学のお知らせを届けてくれました」
「あらまあ、おめでとう! 猫達があまりにも懐いているから、魔力が強いのじゃないかと思っていたわ」
「魔力が関係あるんですか?」
「そうよ。獣人はもともと、その種族を惹きつける魅力を持っているのだけれど、魔力が強いほど、その魅力が上がるの」
「だからボクは特に猫に好かれる体質なのかあ……」
「うらやましい……」
「ヒマリちゃんは魔法の杖は持ってるの?」
「いえ、ボクの家は、普通の平民だから……」
「学園まで着けば、平民用にも杖が貸し出されているけれど、旅の間、練習もしたいわよね。みんなで一緒に行くのでしょう?」
「はい!」
「う〜ん、そうね。ヒマリちゃんならいいかもしれないわ」
そう言いながら、メイドさんに目配せをするカレンさん。メイドさんは素早くどこかに消え去ったと思ったら、すぐに箱を手に戻ってきた。恐るべしメイドスキル。
「ヒマリちゃん、これ、わたしが使っていた杖なんだけど、貴方にあげるわ」
「えっ……! ボクに!? でもこれって、高いものではないのですか?」
「そうだけれど、わたしの知り合いは誰も使いたがらないのよ」
「なぜ……?」
「これね、恥ずかしい呪文が必要なの。それに、恥ずかしいことが起きるの。」
「あっ……もしかして、わたしの杖みたいな仕様なんですね……!?」
「そうよ。更に、この杖にはおまけもあるのよ。いい?呪文は『ニャーニャーパワー!メークアップ!』よ。こう、腕を上げてね」
「にゃ、にゃーにゃーぱわー……」
「はい、ヒマリちゃん、試してみて」
そう言いながら、杖の腕輪を、ヒマリの腕につける。シュンっとサイズが変わった。
みんなの視線が集まる。
「ニャーニャーパワー!メークアップ!」
その瞬間、ヒマリがピカッと光って、光が収まった時、そこには、魔女っ子がいた……。トンガリ帽子(虎耳よう穴つき)、短めケープに、肘まである長い手袋、ミニスカート(尻尾用の穴つき)、ブーツという出立。手には杖。
控えめに言っても、激かわ! ブラボー!
「うんうん、やっぱり似合うわね。ちゃんと獣人用にカスタマイズされるなんて、この杖もなかなかやるわね。わたしの時は猫耳付きだったのよ」
ヒマリはボーゼンとしている。
「どうする? その杖、もらってくれるかしら?」
わたしとしては、全力でオススメしたい。だって可愛いもの。
「は、はい! ありがとうございます!」
ペコリと頭を下げるヒマリ。
良かったな〜と思っているところで、玄関の方から声が聞こえてきた。
「おばあさまーー聞いてくださいーーーー!」
「こら、坊ちゃん、勝手に上がってはダメだって、何度も言ってるでしょう」
「いいだろう、おばあさまの家なんだから」
そんな声のあと、私たちのいるテラスへと続く扉がパーンと開いた。
そこにいたのは、あのいけ好かない、わたしが猫パンチしちゃった貴族の少年だった。




