第25話 異世界屋台
異世界と言えば、やっぱり屋台と串焼きは外せない。
ヒマリに広場に連れて来てもらうと、あちこちから良い香りが漂ってくる。広場の真ん中には噴水があって、周りには屋台が出ているのだ。
「ところで、わたしがヒマリに屋台をリクエストしちゃったけど、クリスはこういうの大丈夫?」
「食べ歩きなんてしたことないですけれど、これも経験ですわ!」
意気込むクリス。
「噴水の周りにテーブルも出てるから、いろいろ買って座って食べようよ!」
慣れないことをして、串焼きを喉にでも刺したら危ないからね……!
「じゃあ、皆あれこれ買って、この場所にまた集合っていうのはどう?」
「いいわね」「うん、そうしよう」
あちこち屋台を覗きながら歩く。
まずは串焼きだよね! お肉の匂いがする方にフラフラと寄っていく。
「いらっしゃい!」
ねじり鉢巻のおじさんが焼いているお肉だ。
「これ、なんのお肉?」
「これはピッグモーという、魔物の肉だぞ。魔物だからちょっと高いけど、美味しさは抜群だ!」
もう匂いからして間違いない。
「じゃあ、十本くださいな!」
「毎度あり〜」
皆で食べるし、うちの従魔達も食べるからね。余ったらバッグに入れておいてもいいし。小金持ちなわたし。食べ物にはお金をかけたい派なのです。
ちなみに支払いにギルドカードが使えました。ピッとするだけでお支払い。もう手放せない!
「はい、おまたせ」
「ありがとう、おじさん!」
お皿に山盛りになっているお肉を落とさないように歩く。ドキドキ。歩いていると、今度は甘いいい香りがしてきた。なんだろう?
近づいてみると、パンケーキみたいなモチモチな生地の中に甘い豆が入っているオヤツだった。韓国のホットックみたい。うん、美味しそう!
「おじさん、これを五個くださいな」
「まいどっ!」
あっという間に出来たが、よく考えたら、持てないんじゃないかな……。ここで魔法鞄に入れるのもダメだろうし。う〜ん。悩んでいたら、頭の上にいたライくんが話しかけてきた。
『ミアねーちゃん、俺が持ってやるよ』
「え?ライくん持てるの?」
『当たり前よ!』
そう言って、手を伸ばす。突然、触手が伸びてきたので、店員のおじさんはビックリしている。
「あの、うちのスライムが持てるっていうので渡してあげてくれませんか? わたしの手、いっぱいで」
「お、おう」
恐る恐る、おじさんが手渡してくれる。ライくんは、それを器用に持ち、そのままわたしの頭の上に固定した。あれ? 結局わたしが運んでる……?
周りの人たちからの視線が痛い。
「あの子、頭の上に食べ物載せてるよ」
「落ちないのかな」
「よく見るとスライムみたいなのも載ってる」
ヒソヒソ。ヒソヒソ。
待ち合わせ場所に着くと、他の三人は既についていた。
「ミア……。やっぱりミアは何をしても目立つ運命なのね」
「ボクもそう思う」
「だって、持てなかったんだもの! さあさあ、冷める前に早く食べよう〜!」
空いている席を探していると、ちょうど目の前のテーブルが空いたのでそこへ向かう。
「うっ、あんまり綺麗ではないのね」
ちょっぴり怯んでいるクリス。まあ確かに食べこぼしとかは少しある。
『ここで登場ライくん〜!』
頭の上からホットックを持ったままピョンっとテーブルに飛び降りたライくん。三本目の手が出てきて、手の先は雑巾型になっている。そして、サッとテーブルを吹いてくれた。
ピカピカだ。むしろ、新品よりもピカピカだ。磨いてニスを塗ったみたいになっている。
「うわぁ! すごいわ、ライくん。本当にありがとう」
クリスが嬉しそうにライくんを撫で撫でしている。
『へへへ。良いってことよ』
テーブルも綺麗になったところで、みんなの買ってきたものを色々と載せる。
「わたしは、ピッグモーっていう魔物の串焼きと、甘いやつを買ってきたよ!」
「ボクは、ドーナッツ!」
「わたしはニコラスオススメのお肉とピタパンのセットよ」
どれも美味しそうだ。ドーナツは丸いドーナツでアンダギーみたいなやつが、山盛り。
お肉とピタパンのセットは、ケバブみたいな削ぎ肉がいっぱいあって、ソースや野菜もたくさん、ピタパンに自分で挟んで食べるやつだ。
さあ、早速いただきましょう!
「いただきま〜す」
まずは早速、ピッグモーの串焼きにかじりつく。ん〜!ピッグモーという名前だけあって、豚肉と牛肉のいいとこ取りだ! 旨味がじゅわぁ〜。
ライくんは、串を手で持って器用に食べてる。でも肉と一緒に串も短くなってるよ……。クロちゃんの分は、串から外してあげる。
『ありがたい。助かるぞ、主』
そしてケバブのようなもの。ピタパンにソースと野菜とお肉をたっぷり詰め込んで、かぶりつく。
「これも美味しいねえ! このお肉の香辛料が絶妙! ソースも美味しい、なんだろう、これ」
「そうでしょう、そうでしょう。これ、僕のオススメなんです。ちょっと高いから、上司やお嬢が払ってくれる時にたくさん頼むんです」
と、ニコニコなニコラスさん。ちゃっかりしている。
「もうっ!って怒りたいところだけれど、とっても美味しいから良いわ」
それにしても、屋台飯を食べていても、手掴みでも、お上品さが損なわれないクリスはすごい。
次はドーナッツ。
「なんかボクのだけ安くてごめんね……。でも、これボクの大好物なんだ!」
「大事なのは値段じゃなくて美味しさだよ!」
「そうよ。わたくしはニコラスに買わされただけなのですから」
アンダギーのようなドーナッツを手に取る。外はカリッと油がジュワァ、中はフワッ。シンプルながら美味しい。そして止まらない。
「ヒマリ、これ美味しい。そして止まらなくて危険」
「わたくしも食べる手が止まりませんわ」
尻尾をピーンと、嬉しそうにしているヒマリ。
次は韓国のホットックみたいなやつを食べる。
モチモチの皮に、甘い豆の餡が入っていて、鉄板で焼かれたものです。これもまた、噛み締めると油がジュワァっと滲み出てきて、クリスピーでモチモチの皮が美味しい。
「ボク、これ初めて食べたけど、美味しいね」
「普段の貴族の料理と違って、このジャンクな感じがたまりませんわ」
おっ。クリス、なかなかイケる口ですね。
いやぁ〜食べた食べた。 美味しかった! テーブルを見ると、まだ色々と残っている。
「これ、スライムラップしちゃうね」
そう言って、ライくんの口にあれこれ突っ込むと、あら不思議。全部スライムラップに包まれて出てきました。
「旅の途中も何度か見ましたけれど、本当に、ライくんって万能ですわね……」
『ふっふーん、そうなんだぜ、俺様、すごいんだぜ』
ドヤ顔のスライム、ライくん。
さて、お腹もふくれたし、この後はどうしようかな?




