第22話 オレンジの小鳥さん
ヒマリとテクテク歩いて、モフモフ亭へ帰ってきた。うふふ。今からヒマリの誕生日サプライズパーティーだよっ!
ちょうど女将さんに言われた午後三時だからね。
「ただいま〜」
「ただいま戻りました」
『むっ?この気配は……』
クロちゃんが何か言っている。なに? なにがいるの?
キョロキョロしながら食堂に向かうと、食堂にはニコニコした女将さんと悲しそうなおじさん、それからご馳走があった。
「ヒマリ、お帰りなさい!」
「「「誕生日、おめでとう〜!」」」
そして、ヒマリの周りをグルグル飛んでいる、オレンジ色の鳥がいる。鳥!!! これは、もしかして、もしかするんじゃ〜?
チュンチュン
「なになに? お手紙?」
ヒマリと鳥さんが会話している。あっ、鳥さんから手紙が出てきた。やっぱり、あの封筒、見覚えがあるぞ。
ふむふむ、と読んでいるヒマリ。そういえば、この街では町長さん、いや街町さんは家に来ないのかな? 人数が多すぎて無理なのかな。
「魔法学園だって! ボクにも魔法学園入学の通知がきたよ!」
「おめでとう、ヒマリ!」と嬉しそうな女将さん。
「やっぱり、その小鳥はそうだったんだ……。おめでとう……ヒマリぃぃぃ……うう……寂しくなるよう」と悲しそうなおじさん。
「おめでとう、ヒマリ! これからも一緒だね!」
「うん、ありがとう!」
ニコニコしているヒマリは、本当に嬉しそうだ。
「あ、それならわたしたちと同じ馬車の方がいいよね? 一週間後の馬車なんだけど」
「うん!」
「一週間後〜!? ダメだダメだ、ヒマリはすぐには行かせないぞ!」
「うちの両親は、お知らせが届いた次の日にわたしを送り出しましたよ?」
「でも、そんな突然、寂しいじゃないか……」
おじさんが悲観に暮れている。
「でもね、おじさん。その馬車は貴族の友達も乗ってるから護衛さんもいるの。もちろん護衛さんは貴族の子を守るのが第一優先だけれど、おまけで一緒に守ってもらえることもあるかもしれないし。わたしと一緒なら、結界付きのテントで一緒に寝ることができるのよ」
「俺が……俺が護衛に……」
「だめよ、あなた。宿はどうするのよ」
ああだこうだと言い合っている夫婦の会話に終止符を打ったのは、ヒマリの一声だった。
「ボク、ミア達と一緒に行きたい! 行かせて!」
強い決意の宿った目で、両親に訴えかけるヒマリ。その声で、わたし達は一緒に旅に出ることが決まったのだ。
「そうと決まれば、馬車の予約をした方がいいね。確か、あと一席しか空いてなかったから……。でも、せっかくのお祝いもあるからなあ」
そう言いながら、テーブルの上の、ホカホカのご馳走に目をやる。
『主、我がおつかいに行ってきてもいいぞ? 馬車を予約した場所なら覚えている』
「ほんと? いいの?」
『手紙を書いてくれれば届けてくるぞ』
「ありがとうクロちゃん! ヒマリ、クロちゃんが予約しに行ってきてくれるって。今、商業ギルドのお姉さんに手紙書いちゃうね」
そう言って、馬車の予約をお願いする手紙を書いて、クロちゃんに託した。
「クロちゃん、よろしくね〜!」
『任せておけ』
颯爽と飛び出したクロちゃん。頼りになるな〜。
「ミア、ありがとね」
「どういたしまして。一緒に旅ができるの、嬉しいね」
二人でニコニコ。
「よし、じゃあ早速、お祝いのご飯を食べよう! 夜の営業の準備までしか時間がないからな」
「うん!」
「いただきます」
さっき昼ごはんにクッキーまで食べたけど、もう腹ペコだ。今日はたくさん走ったし、子どもの身体は、すぐお腹が空いちゃうのだ。
お誕生日のごはんは、お肉たっぷりメニューでした。大きい分厚いステーキがドーン!とテーブルに鎮座しています。これを切り分けてみんなで食べるみたい。
ナイフを入れると溢れる肉汁。ミディアムレアの素敵な焼き加減です。
わたしの分をもらって、早速口に入れる。もぐもぐ。うわぁ〜噛めば噛むほど出てくる肉の旨味。美味しい!
女将さんに断ってから、ライくんにも一口。『ん〜!肉ー!』と大事そうに消化しています。消化が丸見え、スライム。
「ボクのオレンジの鳥さんは肉は食べないみたい」
「そういえばわたしの友達の鳥さんも肉は食べないみたいだけど、フルーツは食べてたよ」
「じゃあ、このお肉はクロちゃんが帰ってきたらあげてもいい?」
わざわざ従魔サイズにお肉をカットして用意してくれたヒマリ。
「うん! もちろんだよ! あ、じゃあ小鳥さんにはコレをあげるね。あ、せっかくだから皆で食べましょう」
バッグから金色のさくらんぼを取り出す。
「どうしたんだい、コレ? 高級品じゃないか」
「これ、旅の途中で見つけたんです。自分で採ったから無料ですよ!」
「これ売ったら高いのに、食べちゃっていいのかい?」
「はい! 毒キノコを高値で売ってきたんで大丈夫です、こっちは食べましょう!」
「毒キノコ……」
ワイワイ言いながら、ご馳走を食べ終わり、まったりしたところにクロちゃんが帰ってきた。
「おかえり、クロちゃん」
『ただいま、主。無事に予約できたぞ。これが予約表だ』
「おお〜! すごいね、クロちゃん!ありがとうね〜!」
『お安い御用だ』
「クロちゃん、ありがと。これ食べて?」
ヒマリがカットしたお肉や、さくらんぼなどいろいろ盛り合わせたプレートを差し出す。
『むっ、いいのか?』
「うんうん、私たちはもう食べたし、お使いにいったクロちゃんだけ食べれないなんてダメだもん! あそこのスライムはいっぱい食べてたよ」
指差したところには、まん丸になったライくんがいた。もはやコロコロ転がしたくなる丸さである。
『では、いただくとしよう』
皆でモグモグ食べるライくんを見つめる。はー可愛い。うちの従魔可愛いんです。ほんと。
「さて! 私達は夜の営業があるからね。そろそろ準備しなくちゃ」
「そうだな」
「二人は、そろそろお風呂に入って、上へあがってなさい」
「「は〜い」」
ご飯の後もまったりしていたので、割とお腹はこなれている。お風呂に入っても大丈夫そうだ。
「わたしは荷物全部持ってるから、そのままお風呂行っちゃうね」
「わかった。ボクも着替えを持って、すぐ行くね」
うふふ。虎少女とお風呂だ〜!




