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第20話 冒険者依頼は、猫と遊ぶこと

 受注カウンターのお姉さんに、依頼を見せる。

「この動物のお世話が気になるんですけど、詳細をお聞きしたいです」

「ああ、これね。猫好きのおばあちゃんが出している依頼なのよ。屋敷に二十匹の猫がいる家でね、ただひたすら猫たちと遊んだりブラッシングをするっていうお仕事よ」

「やります! これ受けます!」


 かなり食い気味になってしまった。

「あっ、ヒマリ、これ受けてもいい……よね?」

「うん、良いよ。猫ならボクも役に立てると思うよ」

「それでは、受注処理をしますね。ギルドカードを出して、ここにタップしてください」

 ピッ。という音と共に、ギルドカードに依頼情報が書き込まれた。


「うわぁ、すごおい。このカード、便利だなあ」

「うふふ、あなたたち、初めての依頼なのね。今回の依頼は、何か採ってくるものではないから、依頼先で依頼主に仕事が終わったら彼女から受領印をもらってね。彼女の持っているギルドカードとタップすれば完了。自動で評価もこちらに送られてくるから、今日は依頼達成の報告に来なくて大丈夫よ」

「わかりました!」


 お姉さんから、猫のお屋敷の地図をもらい、早速向かうことにした。

「楽しみだねぇ!」

「うん。ミアは持ち物も全部猫だし、猫が好きなの?」

「そうなの! もふもふ全般好きだけれど、特に猫が好きなの」

「ボクも猫は好きだよ。というか、猫がボクを好き?」

「な、何それ……羨ましい……!」


 ヒマリとお喋りをしながら歩いていると、あっという間に、おばあちゃんの家についた。

 外から見た感じ、結構大きな平家の一軒家だ。早速猫が屋根の上にいたり、門の上にいたりしてテンションが上がる。


「こんにちは〜!」

 門の横にあるベルをガラガラ鳴らすと、中からおばあちゃんメイドが出てきた。


「冒険者の方達かしら?」

「そうです! 猫ちゃんたちのお世話をしにきました」

「よくいらっしゃいました、さあ、どうぞ。依頼主のカレン様も中にいますわ」


 猫屋敷の応接間に通されるて座って出された美味しいお茶を飲んで待っていると、この屋敷の主人である、カレン様が入ってきた。

 パッと立ち上がる。雇い主には敬意を! ヒマリもわたしの真似をして立ち上がる。


「あらあら、掛けたままで良いわ。お掛けなさいな」

「では失礼致します」

 もう一度、フワフワソファに座る。


「あなたたちが依頼を受けてくれた冒険者ですね、ありがとう」

「いえいえ、猫様のお世話ができるなんて、こちらがありがとう、です!」

「ふふふ、あなた猫が好きなのね」

「はい! それはもう、前世の記憶を引き継ぐほどに大好きです」

「前世?」

「はっ、いや、なんでもないです」

 猫愛について語っていたら、つい前世の話までしてしまった。危ない危ない。


「虎獣人に、猫好きな女の子、ネコフクロウに、スライム。いや、ネコスライム……? 冒険者ギルドにお願いするのは不安でしたが、今回の依頼にぴったりなようで安心しました」

「あっ、自己紹介が遅れました。わたしはミア、この子はヒマリ、それからクロちゃんとライくんです。猫様のお世話はお任せください!」

「わたしはカレンよ。改めてよろしくね、皆さん」

 二人と二匹はペコリと頭を下げた。


「では改めて、今回の依頼について説明するわね。この屋敷には猫が二十匹いるわ。どの子もわたしが保護した子たちです。この子たちと、全力で遊んであげて欲しいの。見ての通り、この家にいるわたしもメイドも、もう走り回れる歳ではないから、激しい遊びが出来ないのよ」

「全力で遊びます!」

「ではよろしくお願いしますね」

「「はいっ!」」


 ヒマリとやる気満々で、メイドさんについていく。遊び場についてはテラスから続く庭を指定させてもらいました。日向ぼっこしている猫ちゃんたち、いっぱいいたし、走り回るには外の方が気楽だからね。何か高そうなもの壊しちゃったら嫌だし!


 庭に向かう途中で、すでに猫たちがついてきた。普通、初対面だと猫たちは隠れちゃうと思うんだけど、これが虎獣人パワーらしい。猫科の獣人からは、猫に好かれる何かが撒き散らされてるっぽいのだ。

 特にヒマリは、家族の中でも好かれる体質らしく、まさに歩くまたたび状態である。


「では、こちらでお願いします。わたしはカレン様のお世話に戻りますわね」

 去っていくメイドさんを見送りつつ、「さて、おもちゃがあるわけでもないし、どうやって遊ぼうかな?」と考えていたら、いつの間にかヒマリが庭を走り出していた。

 そしてヒマリを追いかける猫たち。全員、全速力だ。あ、尻尾も左右に振って飛びかからせている。


「猫に追いかけられるなんてずるい〜! 尻尾、わたしも欲しい……」

『しょうがねえなあ、俺がミアねーちゃんの尻尾になってやるぜ』

 そう言ったライくんは腕(?)をわたしの腰に巻きつけて、残りの部分は尻尾のように長くなった。

「おお、尻尾!」

 ライくんは、たし〜ん、たし〜んと動いてみせる。ヒマリについていかなかった猫達がそろりそろりと近付いてくる。


「あの、ライくん。一応聞いておくんだけど、猫たちに引っ掻かれて千切れて死んじゃったりしないよね?」

『おう! 大丈夫だ、分裂するだけだぜ!』

「分裂ぅ?」

『分裂と言っても、本体は俺様だけで、あとは俺が自由に動かせる物体っていうの?意志とかはないのよ』

「ふうん、それなら良いのかな。よおし!」


 早速ぴょんっとジャンプしてみる。反復横跳びをしてみたり、スキップしてみたり、尻尾をユラユラ。すると、じわじわと近付いていた猫たちがシュッと飛びかかってきた。

 楽しい。前世で夢にもみた、猫たちとの戯れ! 


 そういえば、クロちゃんはどこに行ったのかな?と思って見渡してみると、大きな木の上にデーンと寝転がっている黒猫さんとお喋りをしていた。

 ネコフクロウって猫とお話しできるんだ……。バイリンガルなクロちゃん。いや、もしかしたら鳥語も話せて、トリリンガルかも知れない。いや、でも顔が猫だから、鳥語は発音が難しいかも。


 猫たちとの遊びは、猫が疲れるまで続けた。人間と猫、どちらが先にバテるかの戦いである。

 みんな全力で遊びきった。

 猫たちも満足したようで、大きなおまんじゅう型になったライ君をフミフミしたり、猫の開きになったりしている。ああ、あのお腹に顔を埋めたいが、人様の猫。出会って一日目。我慢だ、我慢なのよ、ミア!


 そんな風に己の欲望と戦っていたところ、メイドさんから声がかかった。

「お疲れ様でした。昼食を用意したから、どうかしら?とカレン様からのお誘いです」

「ぜひ! 頂きたいです!」

 走りすぎて声が出ないヒマリもコクコクと頷いている。


 わあい、ご飯だ、ご飯だ〜!


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