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第2話 ネクフクロウさん現る

「猫ちゃん……? あ、あれ……?」

 なんだこの生き物は。頭が猫で、身体がフクロウなんて……。そんなの……。反則級に可愛いだろうがーーー!

 思わず抱きつきそうになるが、そこはグッと我慢。一応田舎育ち。野生の動物は危ないのだ。


「あらあら、ネコフクロウじゃない? そうなのね、やっぱり、ミアも……。」

玄関での騒ぎを聞いて、母さんと村長さんがやってきた。

「ネコフクロウ……? 母さん、知ってるの? 危なくない? 触っても良いかな?」

いてもたってもいられなくて、手がすでに伸びそうだ。


『主が望むならば触ることも許すが、少し恥ずかしいな』

 しゃ、しゃべったー!?

 突然、頭の中にネコフクロウさんの声が響いてきた。しかも、喋り方が渋い。 「恥ずかしいにゃん」とかじゃないのね?


「ミア、ネコフクロウさんが良いって言ったら触っても良いのよ。あなたには声が聞こえているんでしょう?」

 あれ? この世界、動物がしゃべる世界だったんですか? 髪の色からして異世界なのは分かっていたけれど、もしや結構、色々違うのでは……?

 頭がグルグルしてきたけれど、まずは猫さんだ。いや、ネコフクロウさんだ。


「それでは失礼して……」

 意を決して、猫さんの背中あたりにそろそろと触ってみる。あ、背中はフクロウだわ。最初から頭に触るのもどうかと思ったけれど、やっぱりネコ感触を確かめたいので、耳の間に手を置いてみる。

「ふおおおおー」興奮して変な声が出た。フワフワや! フワフワ!

『主はなかなかのテクニックをお持ちのようだ』

 目を細めたネコフクロウさんからお褒めの言葉を頂いた。


 しばらくモフモフを堪能したあとは、母さんの提案により、皆でリビングに移動した。アップルケーキは食べかけだけれど、それどころではない。いや、やっぱりケーキも食べたいから、ケーキを食べながら話を聞く。むぐむぐ。


 『主には、これを届けに来たのだ』

 お腹のポケットからするりと手紙を出した。そう。ネクフクロウさんにはお腹にポケットがついてるのだ。カンガルーみたいなね。そこから手紙が出た。サイズ的にどうなってるのかなあとかは、今は気にしないことにした。だって動物が喋る世界だもん!


 お手紙を開ける。

『ミア様。

おめでとうございます!

貴殿は魔力有りと判明しましたので、魔法学園への入学が決まりました。

つきましては4月までに魔法学園へお越しください。

学園長ウィリアム』


 ま、まほうがくえん!? 今日、前世の記憶が戻ったばかりだっていうのに、もう頭がいっぱいですう〜。


 手紙を持ったままボーッとしていたら、おとな三人が手紙を覗いていた。


「さすがミアじゃな。この入学通知が読めるとは。村長が七歳の誕生日に来るのは、字が読めない家族のために代理で読むためなんじゃがな! ま、こんな辺境の村で手紙が届いたのはミアが初めてじゃが。ふぉっふぉっふぉ。」

「俺も読めるぞ! ミアと一緒に母さんに教えてもらったからな!」

「念のため、ミアに文字を教えてきたけれど、やっぱりミアも魔力持ちだったのね〜。」


 どうやら、普通の村民は字が読めないらしい。知らなかった……。というか、父さんにも字を教えた母さんって一体……? ネコフクロウの存在も知っていたし。


 ピンクの髪の毛をフワフワと揺らしながら微笑む母さんを見つめる。よくよく見たら、辺境の芋っぽさがないわ。

 私が考えていることを見抜いたのか、母さんはウインクして人差し指を口に当てた。自分の母さんなのに、可愛い……!


 と、とりあえず、母さんの正体よりも魔法学園だ。魔法学園。魔女っ子なのだ! 母さんの可愛さに騙されるわけではない。


「魔法学園って何? 魔力って?」聞きたいことは山ほどあるのだ。

「そうねぇ。魔法学園は、魔力持ちが全員通わなければいけない学校なのよ。魔力の扱いを知らないのは危ないから、これは魔力持ちの義務ね。魔力はそのまま、魔法が使える力のことよ。こんな感じね」

と言いながら、母さんは人差し指にポッと火を付けた。ロウソクのような炎がユラユラとしている。


 えっ? 母さんも魔女っ子だったの? 使っているのを見たことがない。でも思い返してみれば、掃除が異様に早かったり、農作物の収穫があっという間だったり、色々と不自然なことはあったのだ。


「さて。聞きたいことはたくさんあるでしょうが、四月の入学まであと半年。この辺境の村から向かうには、すぐにでも出発しなくてはいけないのよ。」

「魔法学園はどこにあるの?」

「魔法学園は、この国の真ん中にあるリンドール湖に浮かぶ島に建っているのよ。色々と説明したいけれど、今日はもう遅いし、疲れてるんじゃない?そろそろ寝る時間よ。」

「うん。いろんなことがいっぺんに起きて、もう頭グルグルだわ。とりあえず、今日のところは寝ることにする」

「そう。良い夢を。おやすみなさい」

「父さん母さん、村長さん、おやすみなさい。あっ、ネコフクロウさんもおやすみ!」

『我は主と共に寝るぞ』


 ふおおおおー! ネクフクロウさんも一緒に寝てくれるですって! あ、でも身体がフクロウだから布団に一緒には入れなさそう。フクロウって横にならないよね? でも一緒の空間にいられるだけで満足だもの。


「じゃあネコフクロウさん、こっちにおいで。一緒に寝ましょう!」

 フワッと飛んできたフクロウさんは肩に止まった。爪が食い込まないように止まってくれるので痛くない。ネクフクロウさんを肩に乗せたまま歯磨きをしてから寝室に向かう。


『ところで主。我に名前を付けて欲しいのだ。』

「ん〜。お名前?」

 ベッドをフミフミしながらネコフクロウさんにお願いされた。フクロウなのに、フミフミ……。可愛い……。

 ベッドに寝転がりながら考える。ネコフクロウさんは私の髪の毛と同じで真っ黒だからな〜。クロ、たま、クロスケ、ヘドウィグ……あ、違う違うこれは白いフクロウだわ。んっと、喋り方が渋いから渋い名前がいいかしら。くろくろくろ〜。おはぎ食べたいなあ、羊羹もいいわね。クロクロクロ〜。

「くろのすけ……」

 半分寝ていたまま呟いた私。その瞬間ネコフクロウさんは白く光った。気がする。そして私はそのまま意識を失ったのだ。





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