第17話 冒険者服を着てみる
ミアへ
あんまり時間がないから用件だけ書くわね。
明日は貴族の付き合いがあるので(話したいことがたくさんあるわ!)、街歩きは明後日はどうかしら?
十時頃に宿へ迎えにいきます。
追伸
わたくしも、街での常識はあまり無いから二人で身に付けましょう! 明後日、楽しみにしているわ。クリス
「どうやらクリスとの街歩きは明後日になったみたいだよ」
『明日は何をするのだ、主』
「う〜ん、冒険者ギルドでも行ってみようかなあ? 旅の途中で狩ったやつ、納品したいし!」
『俺も一緒に行くからなー!』
ポヨンポヨンと跳ねながら、手をあげているライくん。
「うん、みんなで行こうね。よし、そうと決まれば寝るぞー!」
布団の中に入ると、ライくんは枕のすぐ横に、クロちゃんはわたしのお腹の上に立って足踏みを始めた。これは……「フミフミ」では……!?
クロちゃんのゴロゴロという喉を鳴らす音を聴きながら、フミフミを堪能していたら、あっという間に寝てしまい、気付いたら朝だった。
起きると、頭の下にライくんがいた。スライム枕……! ちょっぴり冷んやりしていて気持ちいい。楽しくて顔を埋めたりしてみる。
『朝のスライムパック大サービスだぜ』
なんだかライくんが洗顔とパックをしてくれた。至れり尽くせりある。
「世の中のスライムが、こんなに優秀だったら皆、従魔にしたがるんじゃない?」
『ちっちっ、俺様くらい優秀なスライムはそうそういないんだぜ』
ポヨンポヨンと跳ねるライくんはちょっと説得力がないけど、可愛い。
「いつも、ありがとね〜!」
ブラッシングができないので、ライくんを捕まえて、モミモミ。ついでにクロちゃんも撫で撫で。匂いも嗅いじゃう。
「さあて! 朝の猫エナジーチャージ完了! 今日も元気に行くよ〜!」
今日は冒険者ギルドに行くからね。冒険者スタイルがいいと思うのだ。お着替えブレスレットから、「冒険者」を選択する。
ピカッと光って、白猫パジャマから、冒険者スタイルに変身していた。自分の格好を、チェックしてみる。
ショートパンツに、ニーハイソックス、シンプルなトップスに、短いケープ、フード付き。もちろんこのフードには猫耳がついています! それから、猫手袋です。猫手袋は、指先が出ているタイプ。でもカバーもついてるので、全部覆うこともできるみたい。靴は普通のニーハイブーツと見せかけて、靴底に猫の肉球マークが入っていた。
あっ、ちなみに、部屋の中で着る時は靴は手元に出すこともできるし、ブレスレットから出さないこともできるよ。万能ブレスレットちゃんなのだ。ますます母さんって一体何者なんだろうと思うけれど、ありがたく使わせていただきます。
『ヒューヒュー!ニーハイがいいねぇ〜』
ポヨンポヨンと跳びながら、ライくんが褒めてくれる。
『主、似合ってるぞ。耳は我とお揃いだな』
『むっ、俺だって耳あるぞ〜』
「そういえばライくんって、なんで猫耳あるの? 出会った時は無かったよね?」
『むっ。そりゃあ可愛いからだろ! 尻尾もはやせるぜ。ほれっ』
そう言うと、ライくんから尻尾が出てきた。ブンブンふられている。犬の尻尾みたいだ。
『でも、まあ普段は邪魔だからな。耳だけにしてるんよ。ライ様すごいんだぜ〜』
そう言いながら、尻尾をしまったライくんは、クロちゃんの背中に飛び乗った。
『さ、朝ごはん食べに行こうぜ!』
『むっ、我に乗るとは』
『まあまあ、クロ先輩、硬いこと言わない』
ヤレヤレという顔でクロちゃんはわたしの肩に飛び乗った。あれ? 結局、皆わたしの上に乗ってるじゃんね?
食堂に着くと、たくさんの人がいた。わたしの席、あるかなあ〜。見渡していると、女将さんがやってきた。
「あっちでちょうどヒマリが食べているから、今日も相席でいいかい?」
「もちろんです!」
女将さんの指した方を見ると、ヒマリがこちらを見ていた。ちょびっとだけ笑った気がする。あ、尻尾がピンってしてるから、喜んでくれてるかも。
ヒマリの方へ行く。
「ミア、おはよ」
「おはよう、ヒマリ。ここ座ってもいい?」
「うん。どうぞ」
「ありがとう!」
座ったところに女将さんが朝ごはんを持ってきてくれる。
「朝食は夕食と違って一種類なんだ。でも日替わりだからね」
そう言って配膳してくれた。
「うわあ、美味しそう!」
トーストに具沢山の野菜スープ、オムレツだ。トーストは厚切りで、網焼きトーストで網目が素敵。
早速いただくことにする。
「いただきます!」
記憶が戻ってから、やっぱり「いただきます」は自然に出てきちゃう。さて。まずはトースト!
「ん〜! 網焼きで香ばしくて美味しいねぇ」
「ん」
「これ蜂蜜垂らしたら最高かも。ちょっとかけちゃおう」
そう言って、鞄から蜂蜜を出してパンにかける。うちの裏山の蜂蜜、美味しいんだよね〜。視線を感じる。
「ヒマリも食べる?」
「食べる!」
初めてヒマリが勢いよく喋った気がする。食いしん坊万歳。やっぱり友達は食べることが好きな人じゃ無いとね!
ヒマリのパンにもかけてあげる。それから、クロちゃんにはちぎった蜂蜜がけパン、ライくんには、ライくんの希望で頭にかけてあげた。
「ライくん、蜂蜜がけのスライムでなんか美味しそうになってるよ」
『今、全身でこの蜂蜜を味わってるのだ』
ふと目の前を見ると、ヒマリがとっても嬉しそうにニコニコしていた。しっぽはピーン!だ。
「この蜂蜜、うちの裏山で取れたやつなんだ。美味しい?」
「うん! ミア、ありがと」
野菜スープもいろんな野菜の旨味が出ていて美味しくて優しいお味。オムレツは堅焼きでした。
美味しかったけれど、卵かけご飯食べたくなっちゃった。そういえばお米を見かけていない……。これは大問題だ!
朝ごはんを大満足で食べ終えた。
目の前を見ると、ヒマリが蜂蜜がけのパンをちびちびと、ゆーっくり食べていて、ちょうど食べ終えたところだった。ライくんは蜂蜜でキラキラしている。ベトベトしないのかなあと触ってみたけれど、ウルウルでした。不思議。
「ミア、今日友達に会うの?」
「今日は友達は貴族の付き合いがあるとかで、会うのは明日になったんだ。今日は冒険者ギルドに行ってみるつもりだよ!」
「案内するよ」
「えっ、いいの?」
「うん。蜂蜜のお礼」
「ありがとう!」
わたしはもう出かけられる準備はバッチリだったけれど、ヒマリは準備をしてくるということで食堂で待つことにした。
ヒマリを待っていると、女将さんがやってきた。
「今日は二人で冒険者ギルドに行くんだって?」
「はい、案内してくれるそうです!」
「お願いがあるんだけれど、三時くらいまでヒマリと外で遊んできてくれないかい? 今日、ヒマリの誕生日だから、内緒でお祝いを用意したいんだ」
「わあ! 素敵ですね! 了解です。任せてください」
「ミアちゃんの分もごちそう用意しておくからね」
『ゴッチそう〜!』
ぴょんぴょん飛び跳ねるライくんは食べる気満々である。
そこにヒマリが戻ってきた。
「ミア、行こ」
「うん! じゃあ女将さん、行ってきますね〜」
「行ってきます」
さあ、冒険者ギルドへレッツゴー!




