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第16話 虎娘と友達になる

 食堂に着くと、皆が一斉にこちらを見た。「ねこ?」「猫だ」とあちこちから聞こえてくる。

 うっ、やっぱり猫パジャマは間違いだったかもしれない……。まあいっか。わたしは七歳児、七歳児、七歳児……!


 さっき受付にいた女将さんがやってきた。

「あら、来たわね。かわいい服ね。お風呂はどうだった?」

「とっても気持ちよかったです! 二匹も満足していました」

「さっきお風呂に入っていたなら、うちの子にも会ったんじゃない?」

「あっ、やっぱり、ここの子だったんですね! あったんですけど、顔にスライムパック載せてる時だったんで驚かせてしまったみたいで」

「スライムパック……?」


 喋りながらもジェスチャーで勧められた席に座った。

「この席だと、大人達に絡まれることもないと思うわ。夜はお酒も出すから、女の子一人は念のためにね。あとで、うちの子も相席するかもしれないけれど、いいかしら?」

「はい! もちろんです! お気遣いありがとうございます」


 確かに、大人達の視線が外れる良い席だった。メニューはあるのだろうかとキョロキョロしていると、お水を持った女将さんが戻ってきた。

「うちの夜ご飯は定食Aと定食Bがあって、これは宿代に含まれてるよ。大人達は酒と肴のメニューもあるけれど、ミアちゃんには必要ないだろうからね」

『俺! 俺、酒飲みたいぜ!』

 約一匹、ぽよぽよとアピールしているけれど、とりあえず無視しておこう。


「今日の定食Aはビーフシチュー、定食Bはポークステーキだよ」

「うわあ、どっちにしよう! ん〜ビーフシチューでお願いします!」

「了解」

 旅で疲れたから、煮込み料理のような、ほっとするものが食べたいのだ。って、毎日スープは食べていたけれどね。煮込む時間は無かったもんね。

 でも、ポークステーキも美味しそうだ。あっちの犬耳の冒険者さんが食べているポークステーキ、分厚いなあ。


 あちこち見ていたら、ビーフシチューを持った女将さんが来た。女将さんの後ろには、ポークステーキのトレーを持った、さっきの虎耳の女の子も。

「はい、お待たせ。じっくり煮込んだビーフシチューだよ。それから、さっき言った、この子も相席良いかな?」

「わあ〜! 美味しそうです! 相席、もちろんです。よろしくね」

 虎耳の女の子はコクっと頷いた。

「この子、人見知りだから愛想悪く見えるかもしれないけれど、優しい子なんだ。じゃあ、私は仕事に戻るよ」


 女の子は私の向かいの席に座った。

「わたしはミアって言うの。こっちのネコフクロウがクロちゃんで、スライムがライくんだよ」

 クロちゃんは翼をサッと挙げて、ライくんも手っぽいものを挙げて、挨拶した。ううう、やっぱりうちの子かわいい!

「ボク、ヒマリ」

「ヒマリちゃんね。 よろしく! じゃあ冷めないうちに食べよう」

 オレンジ色の髪の毛のヒマリちゃんは、 コクリと頷いた。


 早速、ほかほかと湯気を上げているビーフシチューを口へ運ぶ。

「ん〜! よく煮込まれてて、お肉とろとろ。美味しい〜!」

 うまうま、と食べつつ、クロちゃんとライくんにも少しずつ分けてあげていると、ヒマリちゃんにジッと見つめられた。

「ヒマリちゃんも食べる?」

「ヒマリ。ヒマリって呼んで?」

「じゃあ、ヒマリ! わたしのことはミアって呼んでね」

「うん、わかった」

 そして、無言でフォークに刺したポークステーキをわたしにむけた。


「え? なに? 食べていいの?」

「うん、どうぞ」

 遠慮なく、パクッと食いついた。だって、ポークステーキも美味しそうだったんだもん。もぐもぐ。

「美味し〜! 火加減バッチリ、分厚いのにドライになってなくて、脂の旨味も美味しいな〜」

 そして無言でライくんとクロちゃんにも差し出している。

『ミアねーちゃん、食べていいよな?』

『主、いいのか?』

「せっかくだから、頂きなさい。美味しいもん」

 ライくんは、わたしが返事する前に、アーンと大きな口を開けて食べていたけどね。


 わたしとライくん、クロちゃんがモグモグしているのを見て満足そうだ。餌付け、されてる……?


「あらあら、ヒマリ、ミアちゃんと仲良くなったのね?」

「うん、そうだと思う」

「わたしも従魔も、ポークステーキを分けてもらっちゃいました。ビーフシチューもステーキも美味しかったですー!」

「それは良かったわ。はい、これ。サービスのフルーツよ」

 そう言ってブドウをテーブルに置いてくれた。


 二人と二匹で、黙々とブドウを食べる。

「ヒマリは何歳なの?」

「ボクは六歳。もうすぐ七歳になるよ」

「あっ、じゃあ同い年だねぇ! わたしもこの前七歳になったばかりなんだ」

「なんで一人で宿に泊まっているの? 子ども一人は珍しいよね」

「魔法学園に向かっているの。ちょっと前の誕生日の日に、クロちゃんが学園からの手紙を持って訪ねてきてね。それで、魔力があることが分かって、次の日から旅生活よ!」

「すごい!」

 キラキラした目で見つめられた。


 あらかたブドウを食べ終わったところで、クロちゃんが『じゃあ手紙を届けてくるぞ』と出て行った。

「クロちゃん、どこ行ったの?」

「お手紙を届けに行ってくれたの。馬車で一緒になった、貴族の子でクリスって言うんだけど、彼女も魔法学園に向かっているのよ。彼女は街にいる間は、ここの領主の家に滞在しているわ」

「友達……」

「そうなの。わたし、すっごく田舎に住んでて隣の家も遠くて友達がいなかったから、初めての友達なの!」

「ボクも、友達……?」

 虎耳少女にウルウルと見つめられて頷かない人はいるだろうか? いや、いない!


「もちろん! よろしくね」

 手を差し出して握手する。なぜかライくんまで、手を伸ばして私たちの手の上に載せた。


『よろしくな〜』

「わわ! ライくんの声が頭の中に聞こえた!」

 ヒマリの尻尾がピン! となっていてかわいい。


「さあさあ、そろそろ酔っ払いが多い時間になってきたからね。二人は部屋に戻りなさい」

「うん。わかった」

「は〜い。ヒマリ、じゃあ、また明日ね。おやすみ!」

「うん。おやすみ」


 ライくんと部屋に戻ると、クロちゃんがちょうど戻ってきたところだった。

「クロちゃん、おかえり。早かったね」

『クリスもすでに手紙を書いてたからな。主の手紙を読んで、ちょっと書き足しただけだったから、すぐだ』

「クロちゃんのおかげで助かったよ、ありがとね」

『お安い御用だ』

 ありがと〜と撫で撫で。目を細めて幸せそうにするクロちゃんが相変わらずかわいいです。


 さあて、手紙を読もうっと!



 





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