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7-2 救出隊

 その夜、俺はファウラと一緒に食事をとった。

「よくあれだけアンドレアスさんに言えましたね」

「あら、あれでもずいぶん押さえたつもりですけど」

「いやあ、レギオン内でもあれだけハッキリあの人に言える人はいないですよ」

「私だって、本当は怖かったのですよ。 でも最初が肝心ですから、どうしても譲れないところは死守したいと思っただけです。 アンドレアスさんはアビエルさんを私と同格扱いすることによって、私を牽制したかったのでしょうけれど、そちらがそうくるならこちらも会議に出席させていただくくらい認めてもらわないと、と思ったのです」

「ははは・・・」

「ところで、今日お話に出ておりました、3人の方の件ですけど、カケル様の親しい方がたなのですか」

「ええ、私とユウキがこちらの世界に来て、獣人族に捕まった時に助けてくれた、命の恩人達です」

「それで、ご自分で助けに行きたいとお考えなのですね」

「えっ」

「隠してもダメですよ。 アンドレアスさんにはああおっしゃっていましたけど、カケル様は諦めていないことはすぐに分りました」

「ははは・・・」

「言っておきますが、カケル様がお行きになられる時には、私もお供いたしますからね」

「えっ! ダメですよ、危険です」

「いいえ、お供いたします。 アビエルさんは行かれるのでしょう?」

「まだ何も決まっていませんよ」

「いいえ、アビエルさんは決してカケル様の側を離れませんよ」

「まだ、決まったわけではありませんから・・・」

「まあよろしいでしょう。 さてそろそろ私はお部屋に戻ります。 今夜は私の部屋においでいただけるのですよね。 お待ちしておりますね」 ファウラは微笑んだ。

「はい・・・」


 ファウラが戻ってしばらくした頃、灯りが十分に届かない部屋の隅の闇の中から、ザウフェルの青白い顔が現れた。

「よろしいですかな、カケル様」 ザウフェルの黒いマントに包まれた姿が現れ、近づいてきた。

「どこから入ったのですか?」

「闇があればどこからでも入れます」

「そうだ、あなたのことはユウキに話しました。 彼が言うには、万一の時には自分の責任にするため、これ以降の接触は自分にしてくれと言っています。 私は不本意なのですが・・・」

「承知いたしました。 賢明な判断です」

「ところで、藍のレギオンの近況について、どのくらいご存知ですか」

「それほど詳しくはございませんが、前王カウエン・ホーが亡くなられて3年、まだ新王は立たれてないはずです。 残ったレギオンの人々は、3人の元サムライによって3派に別れて、お互いに争い合っていると聞いております。 その不安定な状況につけ込んで、黒のレギオンが藍のレギオンを狙っているという噂も聞いております」

「そうですか、実はうちの者が3名、藍のレギオンの調査に出かけて消息を絶ちました。 その者達のことが心配なのです」

「分りました、調べてみましょう。 特徴をお教えください」

「名前はジュリアン、黒髪、細身で弓が得意です。 次がホーリー、銀髪、小柄で身軽です。 鞭やナイフを得意とします。 最後がエレイン、赤毛で体は大きい方です。 剣が得意です。 3人とも若く20才前後くらいです。 バレンの街で消息をたちました、5日前です」

「承知いたしました、それでは」 ザウフェルはそう言うと、闇の中に溶け込むように消えていった。


 次の日の午後の会議で、アンドレアスからまだジュリアンからの連絡は無いという報告があった。

「もう我慢が出来ない、明日救出隊を出します」

「カケル様、お気持ちは分りますが、お待ちください。 まだ人選が済んでおりません」とアンドレアス。

「人選は済んでいる。 私と警護班で出かけます」

「昨日も申しましたが、カケル様にはレーギアにいて頂かないと困ります」

「いや、私も考えたが、今回の作戦の決着がどうであれ、私自身が行かないとまとまらないと思うんだ。 だから私が行くのが早まったと考えて欲しい」

「確かにカケル様の言われるとおりだと思います。 恐らく別の者達で調査隊を組織しても同じ結果になる確立が高いと思われます」 ユウキが言った。

「しかし、カケル様に万一のことがあったら、エルム族の村でのことのように無茶なされるのですから・・・」

「アンドレアスさん、もしもそれで何かあって死んでしまうような王であったのなら、レギオンの先行きなんてありませんよ」

「その通りだ、お前さん息子を心配しすぎる過保護の母親みたいだぞ」とセシウス。

「なんだと、セシウス。 もういい、分りました」

「それでは決まりだ。 アドルさん、そう言う訳で準備してください」

「私ももちろん一緒ですよね」とアビエル。

「いや、アビエルさんはレーギアに残ってください」

「何故ですか、私は警護班ですよ、アドル殿と何が違うのですか」

「大人数だと目立ち過ぎます。 特にアデル族は・・・」

「マブル族だって十分目立ちますよ。 納得いきません。 ぜーったいについていきますから」

「私も参ります」とファウラ。

(ファウラがこう言い出すのが目に見えていたから、アビエルさんは置いていきたかったのに・・・)

「もう、お前ら勝手にしろ」とアンドレアス。


 次の日の昼前、俺たちはレーギアの庭に集合した。 アドルとアビエル、ファウラ、レオン、リースの6名とグレンだった。 俺たちは冒険者のパーティという偽装でいくことになっていた。 俺は今回の旅では“雷光”ではなく“黒い閃光”と呼ばれる剣を持っていくことにした。 リーアにはまだ早いとは言われていたが、先の旅でエルム族の街で魔獣と戦った時、“雷光”があったから助かったとつくづく感じた。 我々には時間の余裕などない、敵はこちらが準備できるまで待ってなどくれないのだから。 厄介なのはグレンである、さすがにドラゴンは目立ち過ぎるので、グレンを残るように説得したのだったが、いつものごとく聞き分けなかった。

 庭には6頭の騎竜がいた。 それとアビエルのガルがいた。

(あれ、ファウラがまた荷物用の騎竜を用意したのかな)

 全員集合し出発しようとしたとき、一人の少年が近づいて来て騎竜に騎乗した。

「ハル、お前はここに残るように言ったはずだぞ」

「私は王様の従者ですよ、ご一緒しないなんてあり得ないですよ」 少年はそう言いながら笑った。


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