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6-15 アデル族

 プラウを出て3日目、うっそうとした森を抜けると高い岩山が目立つようになってきた。 休憩しているときにファウラが、一番大きくてとがった岩山を指さして言った。

「あのとがった岩山の麓に、アデル族が住んでいるはずです。 ところでカケル様はアデル族のことはどのくらいご存知ですか?」

「いや、ほとんど知りません」

「アデル族は、人族の間では魔人族と呼ばれています。 アデル族というのも総称でその中には巨人族や多手族など、異形の者たちが多いことから、“悪魔を崇拝する者”“神に見捨てられた者たち”などとも言われて、多くの人族からは忌み嫌われております。 しかしその身体能力は高く、不思議なレムを使う者も多くおり、12王が現れる前には、この大陸を竜人族と勢力を二分しておりました。 元々は大陸の西方をアデル族、東方を竜人族が支配していたのですが、12王が現れたことにより勢力図は一変し、主なアデル族は大陸の北西に押し込められましたが、その際に別れた一派がこの森に住み着いたのです」

「詳しいのですね」

「あんな森の奥に住んでいたので、退屈ですので色々なことを調べ始めたのです。 と言うことですので、アデル族はそもそも12王に対しては恨みこそあれ、友好的な感情は持っていないでしょう。 私たちの訪問が歓迎されるとは、到底考えられません」

「それでも、最初から無理だと諦めていては、決してそれ以上前には進めませんから。 さて、そろそろ出発しますか」 俺たちは立ち上がり、岩山へ向けて進んでいった。


 アデル族の街、アッセイ

 岩山には無数の四角の穴が、幾層にも規則正しく空いていた。 自然の洞窟ではなく人工的に作られたものであることがわかる。 それらの穴の真ん中辺りの特に大きな穴の奥、広く天井も高く作られたその部屋は、もちろん日光は届かなかった。 壁際には幾つものレムによる灯りが点灯されていた。

「お呼びですか、親父殿」 全身を黒い皮の衣服で覆った若い女が入ってきて、正面の椅子に座った男の前に跪いた。

 椅子に座った大きな男は、椅子の肘掛けに頬杖をついて目をつむっていたが、女の声で目を開けた。 男はあごに長い髭を蓄え、頭からは大きな角が二本出ていた。

「来たか。 物見より、ここに向ってくる一行があるとのことだ」

「何者ですか。 商人とは違うのですか」

「明らかに商人とは違う。 人族が3人に、マブル族の男とエルム族の女だそうだ。 心当たりが一つだけある。 新しく立ったレギオンの王が、森の各種族を回って従えさせているそうだ。 おそらくその一行だろう」

「どうなされるのですか? 歴代の王は我らがレギオンに敵対しなければ、それ以上何も求めてきませんでした」

「どいつもこいつも、我らを軽んじおって。 先日、ラーベリアの紫のレギオンから使者がきた。 紫の12王は、『もし今後緑のレギオンとの戦いになった場合、我らに従え』とおっしゃっているとな。 まったく、傍系のくせに12王が出たからといっていい気になっておるわ」

「何と返事されたのですか」

「適当にあしらったわ」

「では今回も・・・」

「10人ほどつれて行って奴らを襲え」

「えっ、それでは12王に敵対することになりますが・・・」

「12王ではない、12王を騙る不埒な輩を誅滅するのだ。 これくらいでやられるようなら、話にもならない。 我らは強き者にしか従わない」

「承知しました」 女は立ち上がると、部屋を出ていった。


 俺たちが岩山に向って歩いていると、明らかに人々の生活感がある風景になってきた。 道は馬車が通れるほどの幅になり、両脇の畑には様々な作物が育てられていた。 そこへ街の方から騎竜に乗った一団がこちらに向ってきた。 一団は我々の前で止まると、先頭の黒い服の女性が言った。

「お前達は何者だ。 ここへきた目的はなんだ」

「こちらは緑のレギオンの新王、カケル様です。 アデル族の族長殿にお会いしたく参りました」とレオン。

「ほう、レギオンの王自らこのような所へ参られるとはとても信じられぬ。 王を騙るとは不届きな輩だ。 それ捕らえろ、抵抗するものは斬り捨ててもかまわない」 女がそう命じると、10人の兵が武器を手に一行を囲むように展開した。 屈強な兵士たちで、中には腕が4本持つ者もいた。


「我々は怪しい者ではない。 武器を収めてください」 俺は言ったが、聞き入れようとはしなかった。 しょうがなくレオン達が剣を抜いた。

「殺すな、話し合いにならなくなるぞ」 俺は叫んだ。 そしてファウラを庇うように立った。

 俺は兵士が突いてきた槍をかわすと、脇の下で槍の柄を挟みそのままへし折った。 すると慌てて剣を抜こうとする兵士の剣の柄を、足で押さえて押し戻した。 そして脇から剣で斬りつけてきた兵士を、別の兵士の方へ投げ飛ばした。 アドルは力任せに兵士の首にラリアットを食らわせて吹っ飛ばした。 レオンとリースも結局、剣はしまって格闘術で兵士達を制圧した。

「何をやっているんだ」 女の指揮官は苛立ったように自ら剣を抜いた。

「もう終わりにしましょう。 こんなことは無意味だ」

 指揮官は自ら攻撃しようとも考えたが、力の差を認めて考え直し剣を収めた。

「止め! 武器を引いて控えろ。 お前達もならばおとなしく我らに従え」

 俺たちは兵士に武器を預けると、兵士達に囲まれながら街へ向って歩いていった。


 アッセイの街は、石積みと粘土の壁、それと木材で作られていた。 往来を歩く人々は角を持つ人や肌の色が様々な人、肌に鱗を持つ人など多彩だった。 逆に我々の方が、物珍しいものを見るような目で人々に見られた。 賑わった街中を通り過ぎ、巨大な岩山の手前に広がる広場までくると、そこで待機するように命じられた。


「アビエル、首尾は?」 族長のバウファルが聞いた。

「残念ながら失敗です。 申し訳ありません」

「何人、殺った。 こちらの被害は?」

「ゼロです、どちらも。 力の差は歴然でした。 今、下の広場に控えさせております」

「使えんやつだ。 これが我が娘とは、情けない。 良いか、我が一族は12王が現れる前はこの大陸に覇を唱えていたのだ。 それから千年、我らは再び世に出るために力を蓄えてきた。 しかしまだ12王を凌ぐには十分ではない。 かと言って人族の王などに従うのはしゃくに障る。 だから、奴らには我らの力を示し対等以上の関係にせねばならぬのだ」

「申し訳ございません」

「お前はこれから、12王と命を賭けた決闘をするのだ。 勝てとは言わないが、我らの力を認めさせるのだ」

「承知いたしました」



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