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6-13 条件

 その日の夜、宴会が始まる前に、重要な話があると言うことで、俺は族長の部屋に通された。 そこには、族長のベラスラ、そしてグラウス、ファウラが待っていた。

「カケル様、あらためてこの度のこと、お礼申し上げます」とベラスラ。

「先日は王に対し、大変失礼なことを申し上げました。 申し訳ございません」とグラウス。

「我らとて、恩義を知らぬ獣ではございません。 先日のカケル様の申し出、お受けいたします」とベラスラ。

「えっ、本当ですか」

「カケル様に危急があれば、我ら必ず一党を率いて駆けつけますことお約束いたします」

「それは助かります」

「ただし、条件が一つございます。 我らが加勢するのは、この森が攻撃された時、もしくは王都が攻撃された時に限ると言うことにして頂きたいのです。 カケル様が遠征される場合は除外していただきたいのです。 何故なら我らの力は森において本領を発揮できるからです」

「分かりました。 それで結構です」


 これで話が終わりかと思った時、族長が思い出したように言った。

「あっ、申し訳ございませんが、もう一つ条件がございました。 なに簡単なことです、これをもらっていただけませんか」と言いながらファウラを指さした。

「はい? 」俺は驚いて変な声を上げてしまった。

「これは、もういい歳になるのに、何のかんの理由をつけて嫁に行くのを拒み続けていたのです。 レギオンの王は正妃を設けないと聞いております。 奥方達の一人に加えて頂ければそれで結構です」

 俺は返答に困ってしまった。

「そんな犬の子や猫の子をくれるみたいに言われても、本人の気持ちも大切でしょう」

「いやいや、この話を本人にしたら、なんと二つ返事で承知したのです」

 俺が彼女の方をみると、恥ずかしそうに微笑んだ。

「カケル様の好みには、お合いはしませんか?」

「いえ、そんなことはありません」

「それでは、決まりですね。 良かったなファウラ、嫁ぎ先が決まって」

「はい、お父様」

「さあ、それじゃあ、祝いの宴だ。 皆に伝えろ」

(えらいことになってしまったぞ)


 俺がレオン達にこの話しをすると、リースとアドルは喜んで、祝いの言葉を述べたが、レオンは違っていた。

「気にいらないですね。 カケル様、この件は早くアンドレアス様達に報告しておいた方がよろしいですよ」

「何が問題なのですか?」

「カケル様がご結婚されること自体は問題ないことです。 ですが、王の婚姻となると、色々な大人のしがらみというものがあります。 アンドレアス様やグレアム様の知らないところで勝手にお決めになってしまわれると、大変まずいことになるかと思われます」とレオン。

(困った、そんなことを今更言われても、もう反故にできないじゃないか)


 その晩の宴会は大いに盛り上がった。 エルム族の主立った者たちが、魔獣退治のお礼と婚姻のお祝いを述べに、次々と訪れたのだった。 俺は、飲めない酒をまた飲まされて、途中で意識が飛んでしまった。


 翌日、目が覚めるとまた頭が痛かった。 だが隣から何か良い香りがした。 横を向くと、そこにはファウラの美しい寝顔があった。

(エーッ、どうしてここにいるんだ。 俺、酔っ払って間違えて、彼女の部屋に入ってしまったのか) 慌てて起きると、その動きで彼女も目を覚ました。

「カケル様、お目覚めになりました?」 彼女も体を起こした。 彼女は白い薄い衣一枚だけだった。 髪をかき上げた時、少しはだけた胸元から白い胸が一瞬見えて、俺は“ドキッ”とした。

「あのー、昨夜は何かしましたでしょうか」 俺は恐る恐る聞いた。

「エーッ、覚えておられないのですか。 ひどいですわ、あんなことやこんなことをされたのに・・・」

(えっ、俺はいったい何をしたんだ、何も覚えていないぞ) 俺が愕然としていると、彼女は急に声を上げて笑いだした。

「冗談でございますわ。 昨夜は部屋に入られると、そのまま大きないびきをかいておやすみになられました。 ちょっとイジワルをしてみたくなっただけです」

(はあーっ、何か安心したような、残念なような)

「でも、どうしてここに?」

「えっ、だって夫婦なのですから、一つの床に入るのは当然ですわ」

「そ、そうだったね」

(降参、外堀内堀どころか、本丸まで制圧されているじゃないか)


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