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6-12 魔獣石

 アドルとグレンは、魔獣から近い山の上から様子を見ていた。 カケルが魔獣に飲み込まれて、しばらくすると魔獣が苦しそうに暴れだした。 体を激しく揺さぶり、大きな咆哮を何度も続けた。 進む足は止まり、その場にうずくまったのだった。 その後も苦しむように何度も頭を振り続けた。

 やがて次第に魔獣の体が膨らんできたように感じたかと思うと、背中の山がひび割れてきた。 魔獣が「グオオーーーーー!」という今まで聞いたことの無いような断末魔の叫びを上げると、背中が横に二つに割れ、中から大量の血、体液、肉片が、爆発したように噴きだしてきた。 一度割れ始めた魔獣の体は、もう自分の体を支える事ができず、自分の重さで更に分断を加速させた。 そして魔獣はついに動かなくなった。


 アドルは一気に山を駆け下りて行った。 グレンは空中に飛び立つと、魔獣の割れた体めがけて飛んで行った。

 アドルが魔獣の山のような体の側までいくと、グレンが上空で止まっていた。 アドルはすぐにグレンの意図を察した。

(そこなんだな、グレン。 待っていてくださいカケル様、今お助けいたします) 魔獣の体内からものすごい臭いが漂ってきたが、アドルは躊躇することなく、飛び込んで行った。 そして5分後、カケルを背負ったアドルが体液まみれで出てきた。


 俺は気がつくと、昨夜泊まった屋敷の一室に横たわっていた。

「気がつかれましたね」 ファウラが俺の顔をのぞき込んでいた。

「えーと、私はどうなったのですか? 魔獣はどうなりました?」

「グルグラの体内から助け出されたのです。 カケル様が退治されたのですよ」

「そうですか、それは良かった」 ファウラを見ると、彼女が魔獣の体液で火傷した俺の傷を、手をかざして癒やしていた。

「カケル様、あれほど無茶はしないでくださいと申しましたのに。 私カケル様が魔獣に飲み込まれた時、卒倒いたしましたのよ」 ファウラは怒っているようなそぶりで言った。

「すみません。 住民の方々はどうされました」

「今は皆、家に戻っております。 家を壊された者や隣村からの人々は、この屋敷や親戚の家に身を寄せております。 皆大変喜んでおります。 そして皆王様の容態をとても心配しております」

 俺は体を起こすと、体の傷を見渡した。 ほぼ治癒しかけていた。

「ファウラさんが治療してくださったのですね。 ありがとうございます」

 俺が礼を言っていたときに、族長が入ってきた。


 「おおっ、お目覚めになられましたな。 この度は何とお礼申し上げたら良いか、言葉もみつかりません」

「いえ、お役に立てたなら、なによりです」

「お体は如何ですか? 丸一日お目覚めにならなかったので、皆大変心配しておりました」

「えっ、私は1日中眠っていたのですか。 もうこの通り大丈夫です」 俺は腕を回して見せた。

「そうですか、安心いたしました。 ところでお見せしたい物がございます」


 俺は着替えて族長についていくと、中庭に象ぐらいの巨大な緑色に光る石が置いてあった。

「これは何ですか?」 俺は族長に尋ねた。

「これは、あの魔獣の体内から出てきた魔獣石です」

「えっ、こんな巨大なのがあったのですか」

「そうです。 この魔獣石は、身につけているとレムが一時的に蓄えられ、威力を増幅させることが出来るのです。 一般的なレム使いに取っては垂涎の石です。 どうぞこれをお持ちください」

「えっ、それでしたらこれは高く売れるのではないですか? どうぞこれを売って、破壊された村の復興に使ってください」

「そんな訳にはまいりません。 王には魔獣を退治してくださり、一族を救っていただいただけでもありがたいのに。 それに我らはそれ以外の魔獣の体をいただきました。 肉は干し肉にして保存食に、牙や骨は加工品に、皮膚や外甲は鎧などに、我らは森からの恵みは全て無駄なく使用いたします」

「そうですか、それでは半分だけいただきましょう」 俺は“雷光”を持ってこさせると、それで難なく二つに切り割った。 そしてレーギアの庭にゲートを開くと、アドルやリースにそこへ転がして魔獣石を放り込ませた。 その上でグレアムに念話を送った。

「グレアムさん、レーギアの庭に魔獣石を送りました。 それの使い道を財務大臣とユウキと相談して決めてください」


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