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6-10 勝ち目のない戦い

 尾根の上に降りると、俺はアドルに言った。

「あまり期待は出来ないが、ちょっと試してくる。 私が戦っている間、どこか弱点がないか観察していてください」 そう言うと、空に飛び立った。

 “雷光”を抜くと、逃げ惑う人々を次々と飲み込んでいる魔獣の首に打ち込んだ。 手応えはあった。 しかし岩のような皮膚はとても厚くダメージを与えるまでにはいかなかった。 恐らく、この魔獣は自分が今斬られたことすら気づいていないのだろう。 何事もなかったように、貪り食うことに夢中だった。

 次に魔獣の前に降り立つと、両手で最大限の火球を魔獣の顔にみまった。 魔獣の頭全体が大きな火球に覆われたが、こいつは少しおっくうそうに頭を持ち上げ、二、三度頭を振ると、また食事に戻った。 竜巻も試してみたが、全然効き目が無かった。

(クソ、少しは自分も強くなったと思っていたのに、こいつの前では無力に等しい。 これでは時間かせぎにもならないぞ)

 魔獣は村の動くものをあらかた食い尽くし、プラウの方へ移動し始めた。 そしてグルグラが食い残したものに、バウ-ラが襲いかかっていた。


 俺はアドルの所へ戻ると尋ねた。

「何か気づきましたか?」

「弱点なんて見当たりませんね。 あの頭を吹っ飛ばせれば良いんでしょうけれど・・・」

「頭か、アドルさん、落雷をピンポイントで落とせますか?」

「それは出来ると思いますが・・・」

「では、私がこの剣を、奴の頭に突き立ててきます。 そしたらこの剣に落雷を落としてください。 うまくいけば脳がやられて倒れるかも知れません」

「分かりました」 そう言うとアドルは、最大限の力を発揮出来るように、白虎に獣化した。 俺は再び空に飛び出すと、気づかれないように背後から頭に近づいた。

 空に黒い雲が湧き上がり、暗くなってきた。 アドルの準備が出来たと思われるタイミングを見計らって、俺は魔獣の頭に剣を突き立てた。 剣の半分くらいまで頭に突き刺さると、さすがに頭をもたげ大きな咆哮を上げた。


 俺はその場を離れた。 その時である、光が走り爆音が響いた。 剣に落雷したのである。 魔獣は凍ったように一瞬動きが固まり、その後痙攣し始めた。 そして少しの間の後、急に体から力が抜けるように轟音を立てて頭から地面に崩れ落ちた。

 グルグラは首を地面に横たえて動かなくなった。

(やったのか? 気絶しているだけなのか?) 俺は剣を頭から抜くと、首を切断しておいた方が良いと考え、首の方へ回ろうとしたときだった。

 魔獣が目を覚ましたのだった。 首をもたげ、咆哮すると、立ち上がり興奮したように進み出したのだった。

(もう手の打ちようがない)


 それから30分後、グルグラはプラウの東の山を回り込み、街の直前にまで迫っていた。 俺とアドル、それとグレンは街の手前で魔獣が近づいてくるのを見ていたが、足止めするための手立ては思いつかなかった。

(外からの攻撃は、効かない。 どうする、このままではプラウの街は全滅してしまうぞ)


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