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6-5 救出(1)

 「夜分にすまない」 俺は、集まってもらった警護班に謝った。

「何をおっしゃいますか、グレンは我々の仲間です」 エレインが言った。

 俺は少し前に起こった、グレンとの念話の話しをした。

「それはおそらく“魔獣狩り”の連中かも知れませんね」とレオン。

「山奥に入り、珍しい獣や魔獣を捕らえ、売りさばく奴らです。 その中で最も高価で最も危険なのがドラゴンです。 危険を冒さず、大金が手に入れられると思ったのでしょう」

「あの道で喧嘩があった時ね、おそらくあの喧嘩をしていた奴らも仲間でしょう。 我々が喧嘩に気をとられている隙に、後ろから薬を嗅がされて気を失ったところを、すれ違った荷車に載せられたのだと思うわ」とホーリー。

「王のドラゴンに手を出すとは、良い度胸だ。 見つけたら絶対後悔させてやる」 エレインは怒りで、拳を握った。


 「どうやって見つけ出す?」とジュリアン。

「“魔獣狩り”と言ってもピンキリで、こんなことをするような奴らは、最悪の連中でしょう。 冬などの山に入らない時期は、追いはぎや禁制品の密輸、たとえば危険な薬や、レギオンで禁止している奴隷など、何でもありの連中です」とリース。

「とにかく、奴らもグレンを生きたままここから連れ出したいはずです。 生きているのと死んでいるのでは、価値が何倍も違いますから。 ですので、明るくなってから、カケル様にもう一度グレンと念話で連絡を取ってもらいます。 明るくなれば、中の様子が分かるでしょうし、外の音が入って来てそれがヒントになるかも知れません。 そして守備隊を総動員して、怪しい倉庫などを片っ端から捜索させます」レオンが策を述べた。


「その作戦には問題があるわ」とジュリアン。

「大々的に捜索させたら、奴ら危険を感じてグレンを殺して証拠を隠滅しょうとするかも知れないわ。 密かに捜索させて場所が特定できるまでは、総動員は避けた方が良いと思うの。 ただセントフォレストから逃げられないよう、厳しく検問をする必要はあるわね」

「分かった、その案でいこう。 ジュリアンさん、朝一で守備部隊長と打ち合わせができるようお願いします」

「承知いたしました」


 朝食のあと、俺はグレンとの念話を試みた。 あまり早すぎるよりは、人々が活発に活動を始めた時の方が、人々の声や往来を通る馬車の音が入るだろうと考えたからだ。

「グレン、聞こえるかい?」

 すぐに反応は無かったが、少し間があって声が帰って来た。

「カケル、キコエル」

「今、様子はどうだい、周りから何か聞こえるかい?」

「キコエナイ。 トキドキ、キヲタタクオト」

「中には何が見える?」

「ハコ、イッパイ。 テツノカゴ二イキモノ」

「何か食べたかい?」

「タベテイナイ。 ニク、ヘンナニオイ」

「グレンを閉じ込めているのはどんな奴だい」

「オトコ、カタメナイ」

「仲間は何人ぐらいだい?」

「ワカラナイ。 デモ、コエタクサン」

「分かった、必ず助けるから、もう少し待っていてくれ」

「ウン、マッテル」


 朝食の前から、セントフォレスト守備部隊の部隊長スペンスは来ていた。 ジュリアンが作戦の概要を伝えた後、守備隊がすぐ動けるよう指示をしていたのである。

 グレンの情報を元に、俺たちは監禁場所の特定を急いでいた。

「やはり、“魔獣狩り”の連中で間違いないようですね」 スペンスが言った。

「ただ、レギオンに届けを出している者が約50組の他に、もぐりで行なっているものを入れると約200組近くのグループがあると言われています」 事情に詳しい隊員が言った。


 「時々、木を打つ音が聞こえるってことは、城壁の外の木材の伐採場の近くか木材加工場のどこかということじゃないですかね」とリース。

「それはあり得ますね。 そうなってくると、捜索範囲はかなり絞れます。 セントフォレストの南東のこの辺り、それと旧市街地の東側、この辺り。 あと西側のこの辺りも他のところよりは可能性は低いですが考えられます」 先ほどの隊員が、テーブルに広げた地図上で、指し示した。

「奴らも捜索が行なわれることを想定して、街の外に隠しているのかも知れない」とレオン。

「それでは早速、その3地域を捜索させましょう」とスペンス。

「くれぐれも隠密行動でお願いします。 追い詰められた奴らが、グレンを殺すこともあり得ますので・・・」 俺はスペンスに念押しを忘れなかった。

「承知いたしております。 間者を監視する私服の特別班を向わせます」 そう言うとスペンスは部屋を出て行った。


「グレンは何も食べていないそうだ。 気になるな」 俺は独り言のように言った。

「変な臭いががするって言うのは、暴れるのを押さえるため、しびれ薬か眠り薬を肉に混ぜられているのかも知れない」とホーリー。


 その日の昼過ぎ、スペンスから連絡が入った。 街の南東の城壁の外にある倉庫の一つが、2週間前から“魔獣狩り”に貸し出されているとのことだった。 そしてそこを出入りする男の一人が片目であると言うことと、ここ数日幾つも生き物の檻が運び込まれているとの聞き込み情報があったとのことだった。 しかし警戒が厳しくて中は確認できないとのことであった。


 そこからの展開は早かった。 警護班と特別班が密かに建物に近づき一気に突入する。 守備隊は建物を取り囲み、一味を一網打尽にすると言うことになった。

 そこへアンドレアス達と打ち合わせをしていたジュリアンが戻って来た。 作戦を聞いた後、レオンとホーリーは別の任務があるので外したいと言ってきたのだ。

「それは構わない、その代わり、私も行くぞ。 グレンをさらった奴らをこの手でぶっ飛ばさないと気が済まない」 俺が言った。

 その後、ジュリアンとレオン、ホーリー、そしてスペンスが角で打ち合わせをしていた。


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