表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/393

6-4 誘拐

 マブル族の族長に会った翌日、午前中の公務が終わって、ようやく少し自由な時間ができた。

(そういえば、街に行ったことがなかったな。 出てみよう)


 街は賑わっていた。 先日の戦争が勝利に終わったこともあるのかも知れない。 石と木材を使った建物、石畳の道路、きれいな街並みは、どこか中世ヨーロッパを感じさせるような作りだった。


 「王様、これを食べてください」 野菜や果物を売っている店の若い女性に、突然声をかけられ、赤いリンゴを差し出された。 行く先々、同様のことが起きて思うように見て回れなかった。

(なぜこうなった。 おれはジュリアンにお忍びで街をみたいと言ったのに)

 俺は一般の人々が着ている、質素な服を着ていたのだが、俺の周りにはエレインとホーリー、レオン、リースの4人が辺りに気を配りながら取り囲んでいた。 彼らの服装も目立たない服ではあったが、どう見ても違和感有りありだった。 極めつけは、後ろを外套を着てヨチヨチついてくるグレンだった。 暑がってフードを外してしまうので、ドラゴンであることは隠しようがなかった。 レーギアに置いてこようとしたのだが、暴れ出して言うことを聞かなかったのだ。

「どうやら新王がドラゴンを従えているというのは知れ渡っているようね」とエレイン。


 その様子を20メートルほど離れた建物の角から見ていた、2人の男がいた。

「おい、本物のドラゴンの子だぞ。 あれを捕まえて他の国で売れば、一生遊んで暮らせるぞ」 右目のつぶれた男が言った。

「しかし、あれは王のドラゴンだという噂だ。 どうやって捕まえる? 失敗したら命はないぞ」 額に刃物の傷があるやせ形の男が言った。

「怖じ気づいたか、俺はやるぞ。 今なら良い方法がある」


 俺たちが最も人混みがある市場の道を通っていた時、前方で人が怒鳴り合っているのが聞こえてきた。 肩がぶつかった」とか「荷物が落ちてしまった」とか言い争いながら、殴り合いの喧嘩に発展していた。 どうしようかとその場に留まっていた時、幌のかかった荷車とすれ違った。 リースが2人の間に割って入り、喧嘩を止めた。 2人は納得していないようだったが、これ以上はリースの鉄拳が飛んできそうな雰囲気に、お互い捨て台詞を吐きながらその場を離れていった。

「あれ? グレンはどこ?」 エレインが周りを見回しながら言った。

「えっ、さっきまでそこにいたはずだけど」と俺が言った。

 皆で辺りを30分ぐらい探したが、見つけることができなかった。


 「カケル様、一旦レーギアにお戻りください。 私は近くの守備隊に連絡して捜索させます。 単純に迷子であれば、アイツは賢いですから自分で飛んでレーギアに帰ると考えます」とレオン。 俺は心配になったが、レオンの言葉に従うことにした。


 レーギアに戻り、グレンが先に戻っていないかメイドのメリナに尋ねたが、戻っていないとのことだった。 しばらくしてグレアムが来て、捜索地域を広げて守備隊に捜索させているが、まだ見つからないとのことだった。 俺はグレンのことを考えると、夕食もあまり食欲が無かった。


 「タ・ス・ケ・テ・・・」 俺は声で目覚めた。 俺はグレンが帰って来るのではと思ってベッドに入らず、ソファーにいたのだが、いつの間にか眠り込んでしまったようだ。 聞いたことのない声が頭に流れ込んできた。

「誰?」 俺は声の主に応えた。

「カケル、タスケテ!」 話し方に違和感があったが、切実な感じがあった。

「もしかして、グレンかい?」

「ソウダヨ」

「どこにいるんだい?」

「ワカラナイ。 クチヲフサガレテ、オキタラココニイタ」

「どんな所だい?」

「オオキイイエ、クライ」

「逃げ出せないのかい?」

「テツノカゴ、ボク、チカラハイラナイ」

「分かった、必ず見つけて助ける。 心配するな」

「カケル、シンジテイル」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ