6-1 葬儀
セントフォレストから北東に約5キロの丘に、歴代の王墓がある。 きれいに白い玉砂利が敷き詰められた場所に、7つの大きな石像が並んでいる。 左から初代王で、一番右が前王オークリーの石像だ。 前王は自分の死期が近いことから、生前から制作させていたとのことだった。 戦いが好きではないと言われていただけに、他の像がいずれも剣を持って立っているのに対して、その像は座って本を読んでいた。 その石像の下に棺は収められた。 この王墓の丘は通常は一般の者は入場を禁じられている。 しかし今日はセントフォレストの多くの市民が、手に手に花を持って丘の下に集まっていた。 今日から1カ月は市民の墓参が許されるため、毎日多くの市民が訪れるだろうとアンドレアスが言っていた。 前王が如何に多くの人々に慕われていたかがわかった。
橙のレギオンとの戦争が終わって、アンドレアス達が戻って2日後の今日、午前中から王の葬儀が執り行われたのだった。 柩が馬車に載せられ、街中を通ると多くの人々が街路に跪き涙を流していた。
(俺は、こんな風に人々に慕われる王になれるのだろうか)
王墓から戻った後も、諸々の儀礼やら弔問の応対やらで、その日は一日中慌ただしく過ぎていった。
やっと、居室に戻ったのは夜だった。 堅苦しい衣装を脱いでくつろいでいると、ジュリアンが入ってきた。
「カケル様、お疲れ様です」ジュリアンがにこやかに言った。
「本当に疲れたよ。 こういうのは、何度やっても慣れないな」
「まだまだこれからですよ、来週には今度は即位式が控えていますからね。 森に住む他の種族の長達が祝賀のために来られるでしょうから、また大変になりますよ」「えーっ、もう勘弁して欲しいなあ」
「ところで、明日の予定ですが、午前中にアンドレアス様達との重要会議が入っております」
「はーっ、こっちも戦争が終わっても色々問題があるんだよなあ。 王様も楽じゃないよ」 独り言で愚痴りながら、ふと思い出したように聞いた。
「ところで、アドルというあの獣人の容態はどうなりましたか」
「はい、グレアム様の治療を受けて、もうほとんど完治しているようです」
「それは良かった。 あの者に死なれては困るのでね」




