5-6 力の確認(2)
「大将、今度は俺とやってください」 そう言いながら、リースが大きな剣を担ぎながら、カケルの前に出てきた。
リースは大剣を両手で握り、前に構えた。 上段に剣を振り上げた瞬間に、カケルが間合いを詰めに、飛び込んできた。 リースは、カケルめがけて剣を振り下ろした。 カケルは左腕でレオンの時と同様に受け止めながら、右の拳を突き出した。
次の瞬間、吹き飛んだのはカケルの方だった。 リースはカケルの攻撃を読んでおり、カケル突きに合わせて左脚の前蹴りを繰り出していたのだった。 カケルは5メートルほど後方に飛ばされたが、倒れはしなかった。 カケルは“ニヤッ”と笑うと、楽しそうに飛び出し、リースに向っていった。 リースの剣の振りおろしを、直前で剣先をかわし、更に飛び込もうとすると、リースが剣を横になぎ払ってきた。 カケルはとっさに飛び上がったが、10メートルぐらいの高さまで上がってしまい、自分でも驚いて、そのまま蹴りを入れようとした。 しかしさすがにそれは避けられてしまった。 カケルの着地した地面の周りの土が吹き飛び、地面に大きな穴が空いた。 カケルは着地と同時に素早くリースとの距離を詰め、リースが剣を振りかぶる前に剣を拳でたたき折った。 リースは剣を捨てると、素早く右の拳を顔面めがけて打ち込んできた。 カケルはそれを上体だけで難なくかわした。 リースは続けざまに左右の拳を打ち込んできたが、ことごとくかわされた。 リースは拳に意識を集中させて、意表をついた右の回し蹴りを繰り出してきたが、カケルはそれを読んでおり、難なく左腕で受け流した。
それからの二人の戦闘は一方的だった。 激しく繰り出すリースの突きや蹴りは、カケルにことごとくかわされ、触ることもできなかった。 カケルの動きは更に無駄が省かれ、まるで流れるような、舞を舞っているかのようだった。 更にカケルは、次の段階に移った。 受けと攻撃が同時に、ワンアクションになったのだ。 カケルはリースの右の拳を、かわしながら前に踏み込み、右掌底をリースの顎に当たる直前に止めた。 興奮したリースは、カケルの首に右の手刀を入れようとしたが、その力を利用され、一本背負いで投げられた。
「リース、代われ」 レオンが側に立っていた。
「すみませんが、お2人同時でお願いできますか。 何か感覚がつかめそうな気がするのです」
「は、はい、わかりました」とレオン。
2人が左右から、前後から同時に攻撃を繰り返すが、2人ともカケルに触ることもできなかった。
「すごい。 あれ、目で見ていないんじゃない?」とエレイン。
「うん、たぶん周りからの殺気を感じ取って動いているのだと思う。 あれを完璧にマスターしたら、目をつむっていても、暗闇の中でも戦うことができるわ」とホーリー。
「レベルが違いすぎる。 剣が一朝一夕に修得できないから、レオンやリースに分があるのはまだ分かる。 カケル様の体術がおじいさまに小さい時から仕込まれたとはいえ、2人ともレギオンの中では有数の近接戦闘術の使い手なのに、まるで子ども扱いなんて」 エレインがため息をつきながら言った。
「それだけじゃない。 見て、レオンやリースは全身汗だくで、肩で息しているのに、カケル様は汗どころか息一つ乱れていないわ」とホーリー。
終わりは突然訪れた。 レオンが飛び込んでくるのをかわしながら、リースの右腕を取り、その脇の下をくぐりながら右腕を絞り上げ、その反動で前に投げた。 リースがこらえきれず一回転したところに、レオンがつまずいてリースの上に倒れ込んだ。
「これくらいに、しましょうか。 ありがとうございました。 何となく感覚がつかめました」
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。 次はもう少しやれるようにしておきますので、またお願いします」 レオンが頭を掻きながら言った。 レオンがエレイン達に気づき言った。
「そっちはやらなくて良いのかい」
「えっ、とんでもない。 アタシたちは身の程を知っているからね」とエレインは顔を振りながら言った。
「ところで大将、あれでどれ位の力だったんです?」とリースが聞いた。
「うーん、全力がまだどれくらいか分からないので、難しいのだけれど、感覚的には3割ぐらいかな」
「えーっ、あれで3割ですか・・・」 一同それ以上言葉が出なかった。
レーギアに帰って来ると、ジュリアンがにこやかに迎えてくれた。
「いかがでした」とのジュリアンの問いに、隣にいたエレインが答えた。
「いやー、ジュリ姉に見せてあげたかったわ。 レオンとリースが2人がかりでも、触ることもできず、まるで子ども扱いでした」
「面目無いっす」とリース。
「いやいや、レオンさんたちも、私に怪我をさせないように気を遣って、全力を出していませんでしたから」 俺がそう言うと、レオンとリースは苦笑していた。
「ところでカケル様、グレアム様がお待ちになっておられます」




