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5-1 新体制

 新王発表の少し前、俺の部屋に客人が訪れた。 ちょうど、裕樹と王としての挨拶の件で、話をしていた時のことだ。 それはクロームとシローネだった。

「カケル様、王になられる事が決まったとか。 おめでとうございます。 我々の役目も終わったようですし、今日、森の我が家に帰ろうと思いまして、最後にご挨拶に参りました」 ソファーに腰掛けると、メリナがお茶を入れてくれた。


 「いろいろとお世話になりました」

「いやいや、こちらこそ、今思えばなかなか楽しい旅でした。 そういえば、一つだけどうしても腑に落ちないことがあるのです。 こちらに来て、再び魔獣石でお2人を確認したとき、ユウキは以前ほど輝きが強くなく、カケル様は石がほとんど反応しなかったことです。 カケル様が王選抜で使われたレムを見れば、石が反応しないことはあり得ない。 ずっと引っかかっていたのです」

「それについては、私もずっと気になっていました」 裕樹が言った。

「それでずっと旅を思い返した時、思い出したのです。 カケル様、あの守り袋を見せていただけませんか」

「えっ、それは良いですけど」 俺はポケットから、袋を取りだしクロームに渡した。 クロームは袋を眺め、手に取って何かに気づいた。

「開けてもよろしいでしょうか」

「ええ、どうぞ」 袋のひもを解いて口を開けると、中から紫色をした石のかけらが幾つか出てきた。

「これは魔獣石」 シローネが言った。

「やはり、そういうことか」 クローネが頷きながら言った。

「謎は解けました。 この石は魔獣石の一種です。 あの黒い石はレムに反応して赤い光を放ちます。 この石は、レムを吸収するのです。 あなたは普段この石を身につけていたために、黒い石が反応しなかったのです」

「そういえば、校庭で石を見つけて拾った時、お前は俺に話しかけながら、肩に触っていなかったか。 あの時はこの石を持っていたのか?」 裕樹が思い出したように言った。

「あの時は、なくさないように着替えと一緒に教室に置いてきたと思うな」

「やはりな、あの時の輝きは二人の力が合わさっていたのだろう」 裕樹も納得したように頷いた。


 「ところで、この石はどこで手に入れられたのですか?」 シローネが聞いてきた。

「これは、祖父がくれた物です。 なんでも、祖父は武術家で若い時は武者修行で世界中を旅していたと言うことです。 あるとき困っていた老人を助けたことから、お礼にもらったと言うことです。 その時老人はこういったそうです『お前の家にやがて不思議な子どもが生まれるだろう、そうしたらその子に持たせてやると良い、守ってくれるだろう』と。 私は小さい時に、良く不思議な物が見えました。 そしてそれに怯えて良く泣いていたそうです。 それで祖母が袋を縫ってくれて、祖父はそれに入れてお守りにしてくれたのです」

「なるほど、だけどなぜ割れているの?」 シローネが聞いた。

「気がついたら、割れていたのです。 戦闘中に割れたのかも知れません」

「いや、たぶん天聖球を手にしたとき、流れくる大量のレムに石が耐えられなくなったのだろう」とクロームが言った。 それから少し雑談をした後、2人は辞去した。

「良き王に、おなりください。 落ち着きましたら、我らのあばら家にもお越しください」


 午後の会議前に、ジュリアン、ホーリー、エレインの3人が現れた。 新品のレギオンの制服に着替えていた。 俺は正規の編成に戻ったのだろうと思った。

「カケル様、これ見て」 エレインがうれしそうに制服姿を見せた。

「我ら、本日より王直属の警護班に配属になりました」 ジュリアンが微笑みながら言った。


 少し前、ジュリアンたちの他にレオンとリースの5名が、アンドレアスに呼ばれたのだった。

「お前たち5名は、本日付けでカケル王の直属警護班に配属する。 カケル様の警護の他に、ジュリアンはカケル様の秘書として、スケジュール管理や関係部署との調整を、ホーリーとエレインは連絡・調整を、レオンとリースはリスク排除を重点に行なってくれ。 指揮官はジュリアンだ。 レオンはジュリアンに不測の事態があったときには、代わって指揮をとれ。 何か質問はあるか」

「なぜ、私たちなのですか。 もっとふさわしい人たちが幾らでもいると思いますが」 エレインが聞いた。

「理由が知りたいのか? カケル様たちの救出からのこれまでの、一連のお前たちの働き、みごとであった。 それから、王もお前たちの方が使いやすいだろう。 それと戦争が控えている、今、融通が利く人材がいないのだ。 セシウスとも、お前たちが適任だという結論になった。 不服か?」

「いえ、ありがとうございます」

「俺たちが警護するのは良いですけど、それって猫が虎を守っているようなものじゃないですか」 リースが聞いた。 それを聞いてアンドレアスが笑った。

「王が正面から攻撃してくる敵には、まず遅れをとることはないだろう。 しかし、これからは敵もどんな卑劣な手段をとってくるか分からない」

「つまり、暗殺と言うことですか」 リースが言った。

「あらゆる事態を想定しなければならないと言うことだ。 特にあの方は人が良すぎる。 そこにつけ込んでくるものが、出てくるだろう。 済まないが当面はこの5名で頑張ってくれ、後々増強は考える」


 「それは良かった」 俺は言った。

「でもねえ、リースは気さくだから良いのだけれど、レオンはあまり好きじゃないんだよね。 気難しくて、いつも不満ばかり言って」 エレインが言った。

「気にいらんな。 悪かったな、気難しくて不満ばかり言って」 レオンとリースが入ってきた。 2人は俺の前に跪くと名乗った。

「よろしく頼みます」 俺は言った。


 午後の会議、俺が裕樹と部屋に入ろうとすると、アンドレアスが止めた。

「ユウキはダメだ」

「裕樹も参加させてくれ。 彼は私の補佐をしてくれることになったのだ」

 アンドレアスが、裕樹の顔を見つめた後、静かに言った。

「ユウキよ、これからの会議は極秘だ、参加者は王と我らサムライ3人のみだ。 身分の定まらぬ者、ましてやレギオンの者でもない者を入れる訳にはいかない。 それでも、この会議に参加したいか」 アンドレアスは裕樹に聞いた。

「参加させてください。 僕はカケル王を扶けると約束したのです」

「ならば、お前はサムライにならねばならない。 単にレギオンに入るだけでは、この会議には参加させられない。 お前にその覚悟はあるのか」 アンドレアスは俺の方を見ると、言った。

「カケル様も、ユウキをサムライとするお気持ちはございますか」

「もちろん、アンドレアスさんたちと同じように、頼りにしている」

「ユウキよ、聡明なお前なら、サムライになればどうなるか想像がつくだろう。 絶対の忠誠が求められるのはもちろんだが、それだけではない。 お前に対するレギオン内の風当たりは相当強くなるぞ。 部隊長や、大臣たちなど昔からの旧臣たちは、『いずれはサムライに』と思っている。 それがいきなり現れた奴が、王選抜の候補だったとはいえ、サムライになったとなれば、彼らの協力は得られにくいし、『王の友人というだけでサムライになった』と陰口をたたかれるだろう」

 アンドレアスは、自分が10年ほど前、前王オークリーから認められ、サムライになった時の時のことを思い出していた。 当時、アンドレアスは傭兵部隊の長だった。 傭兵部隊など盗賊団と同様のならず者集団にしか思われていなかったのだ。 そのためレギオン内部からは猛反発があったのだった。 アンドレアスは続けた。

「さらに、そう言った嫉みや陰口を吹き飛ばすぐらいの実績を示せないと、お前をサムライにした王の力量も問われてしまうのだぞ」

「えっ、そうなのか。 私はそこまで考えていなかった。 大丈夫か裕樹」

「大丈夫だ。 新しくきた社長が一緒に連れてきた側近が、社内で風当たりが強い、というのと一緒だろう。 想定内だ」

「ならば、カケル様、今ここでユウキにサムライとしての誓約をさせてください」 アンドレアスがそう言い、裕樹はその場で誓約をおこなって、俺のサムライになった。


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