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1-5 救出作戦(1)

 「ジュリアン、ホーリー、エレイン、お前たちに任務を与える」執務室の机に座ったアンドレアスは、3人が部屋に入ると、即座に本題に入った。 3人とも若い女性だった。 一番の年長と思われるのは、ジュリアンと呼ばれた細面に切れ長の目、黒い瞳で聡明そうに見える。 まっすぐな黒い髪を後ろに一つにまとめていた。 ホーリーと呼ばれた真ん中の女性は、三人の中では一番小柄で、細身であった。 目から下の顔を紺の布で覆っており、その上の大きな目に青い瞳が見えた。 紫がかった銀髪のショートヘアだ。 最後の女性がエレインで、三人の中では一番体が大きく、胸も発達していた。 しかし、年齢は一番若く見え、二十歳まではいっていないだろうと思われた。 彫りの深い意思の強そうな、碧の瞳と赤い癖毛の髪。 三人とも同じような薄い紅色の綿のシャツに、草木色の厚手のズボンに茶色の皮のブーツをはいていた。


 「クローム殿が、向こうの世界から客人を連れてきた。 迎えに行ってほしい。場所はタイロン王国南部のマレン湖の北岸、このあたりの小さな村だ」 アンドレアスは机上に広げられた地図上に指を滑らし、一点を指さした。

「客人は若い男性だ。 問題なのは、現在獣人族の部隊に拘束されているということだ。 本日、獣人族の軍と王国軍の戦闘が、このあたりであったということだ。この任務は、獣人族から客人の奪還、救出とその後、ここまでの案内だ」

「我々だけで、ですか」ジュリアンがたずねた。

「そうだ、不服か? 理由は2つ、客人の件を極秘にしたいということがもちろんその一つだ。 もう一つは、問題にしたくないということだ。 客人を捕らえているという獣人族の軍はおそらく、橙のレギオンの勢力のものと思われる。 今はまだ他のレギオンともめたくない。 従ってこの作戦は密かに潜入して、救出し密かに脱出することが理想だ。 指揮はジュリアンがとれ。 詳細な作戦手順は、お前に任せる。やれるか?」

「敵の軍勢の人数や、建物の配置、警備状況など不明なものが多いので、明言はしにくいですが、おそらく可能だと考えます」 ジュリアンは慎重に答えた。

「もしも、戦闘になった場合、ことが大きくならないように最小限にとどめてほしい。 それとこちらの正体がばれないように注意してくれ」とそこまで言った後、ふと思い出したように付け加えた。

 「それから、言い忘れていたが、目標は二人だ。 客人の他にオマケがもう一人いる。 トラブルがあって、こちらに一緒に来てしまったようだ」

「はあ、オマケですか。 それでどうされるおつもりですか」

「とりあえず一緒に連れてこい。 煮るなり焼くなり、後でどうにでもなる」

「え、お食べになるのですか」とエレイン。

「あッ、それは本気で言っているのか」眉間にしわを寄せながら、エレインをにらんだ。

(バカ)と下を向きながら、ジュリアン。

(死んだ・・・)とホーリー。

「じ、冗談ですぅ」と涙目になりながら、怯えた声でエレインはこたえた。

「人を魔獣みたいに言うんじゃない」

「魔獣よりこわい」と小さな声でホーリー。

「なんだと」

「何でもありませーん」と三人が同時にこたえた。

「行きは飛竜で行け。 すぐに殺されるということは無いと思うが、拠点をかえるということは考えられる。 出来るだけ早く救出したい」

「救出後の帰還ルートはどういたしますか」

「ガレジオン山脈を越えて、客人と一緒に旅をしながらここまで案内するのだ。 何か言いたそうだな、ジュリアン」

「はい、極秘任務であると言うことは理解できますが、何故旅をしながらなのでしょうか。 賢者様ならば、縮地門を使えるのではないでしょうか」

「目的は2つ、一つは客人の評価だ。 行動をともにしながら、その言動を観察し、性格、思想、価値観、能力などを見極めることだ。 もう一つは・・・」とそこで少し間をおいてから続けた。

「密偵からの報告では、森の賢者殿の行動について探りを入れている者がいるということだ。 どこの手のものかは分からないが、他のレギオンの者という可能性が高い。 とすれば逆にあぶり出したい。 旅をしていれば、途中で客人を拉致もしくは暗殺しようと襲ってくる可能性が高い。 できれば逆にそれを捕らえたい。 やってくれるか」

「承知しました」

「どのくらいで、出られる?」

「準備には二時間もあればできると思いますが、夜間の飛行は出来ませんので夜明けと同時になります」そう答えながら、ジュリアンはすでに救出作戦と準備物についてあれこれ考えていた。


 翌日の夕方

 2人は他の捕らわれた村人と一緒に、食事をとっていた。 暗い納屋の中で、ランプが1つ、油の質が良くないのか黒い煙をあげながらオレンジ色の炎を揺らしていた。 食事といっても木製のお椀にトウモロコシの粉を煮て、ベーコンの切れ端を数きれ入れたコーンポタージュのようなものだった。 薄い塩味がついていることと、今日一日の重労働がなければ、とても食えたようなものではなかった。 朝起きると、労働が出来るような男たちは連れ出され、逃げ出されないように2人1組にされ、お互いに片足をロープで縛られた。 その状態で、村の各家から集められた、小麦や芋、干肉や果物などの食料や毛皮、布などの物資を馬車に積み込む作業をさせられた。 俺たちは普段やらない重労働と、監視役の兵士からの鞭打ちで、疲労と痛みで動けなくなってしまった。

 「俺たち、明日はどうなるんだろう」日中は、話をしていると、監視役から容赦なく鞭が飛んでくるため、ろくに話しも出来なかった。

「分からんが、今日一日でずいぶん情報が得られた」上代は兵士たちの会話の端々から状況を把握したようである。

「要約すると、侵略してきた獣人族の軍は、いくつかの部隊に別れ近隣の村や町に略奪に行っている。 そして数日中にまた合流して帰還するようだ。 その時、捕らえられた人たちは、働き手として使える人間は奴隷として連れていく予定らしい」

「じゃあ、俺たちもこのまま奴隷にされてしまうということか? それでは、けが人や子どもたちはどうなるんだ」

「それは・・・・」上代は、周りを気遣ってそれ以上は言わなかった。 俺は胸のお守りを握り締めながら、唇をかんだ。


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