39-24 悲哀の大戦(12)
俺は何も見えなかった。 動くことも出来なかった。 頭も朦朧としていた。
(俺は死んだのか?) そう思っていると目の前が白くなり一人の人物が現れた。 光の中に立っていたのはじいちゃんだった。 じいちゃんは黙って俺を見下ろしていた。
(じいちゃん。 じいちゃんがここにいるってことは、俺はやっぱり死んだんだな)
「じいちゃん、俺頑張ったよ。 頑張ったけど、ここまでだった」 すると、じいちゃんが笑いながら言った。
「翔、頑張ったな。 だが、お前はまだ終わりじゃない」
「無理だよ、じいちゃん。 俺の体はもうボロボロだし、ここからは戻れないんだ。 俺、もう疲れた・・・・」
「バカモン! 最後の最後まで諦めるな。 お前にはお前を信じて待っている沢山の人達がいるのだろうが。 その人達のためにも戻らねばならない」
「だけど、どうしようもないよ・・・・・」
「翔、お前ならできる」 じいちゃんはそう言うと、光の中に消えていった。
(じいちゃんはああ言ったが、俺には何も出来ないし、何も見えない。 どうする) そう考えていた時、何か音が、いや声が聞こえた。 遙か遠くに聞こえる声。
「カケル! カケル! 聞こえるか」
(誰だ? あれはグレンか?) 俺は頭で強く念じた。
「グレン、ここだ!」
「カケルか? よし繋がった。 大丈夫か?」
「グレン、俺はもうダメだ。 自力では戻れない」
「分かった、心配するな。 必ず助ける!」 グレンのその声を聞いた後に、俺は意識が遠のいた。
気がついた時には女性の声が聞こえた。 聞いたことがある気がするが思い出せなかった。
「あらー、派手にやられちゃったわねえ」
「どうですか、助けてください!」
「まあ、何とかなるでしょう。 でももう少し遅かったら無理だったわね」 どうやらその声の主は、俺をレムで治療しているらしい。 体が次第に楽になっていくのが感じられた。 俺は意識がハッキリしてくると、目を開けた。 俺の顔を覗いていたのは、グレンとアリーウエンだった。 不思議なことに、俺の左目の視界が回復していた。 更に失われたはずの右腕も復活していたのだ。
「アリーウエン様、どうしてここへ・・・」
「黒ちゃんが私のところへ慌ててやって来て、貴方を助けて欲しいって言うのよ。 でもね、幾ら私でもどこにいるのか分からなければ、来ることは出来ないわ。 それで黒ちゃんが、貴方を呼んで二人の意識を繋いだの」
「そうでしたか。 ありがとうございます。 それにしても私の左目も右腕も失われてしまったはず。 レムでは失われたものの再生は出来ないはずでは・・・・」
「ああ、それね。 通常はそうね、でも私を誰だと思っているの」そう言うと微笑んだ。
「ありがとうございます。 もう助からないと思っていました」 そう言っている間に、俺の体は完全に復活した。
「本当は、私たちは自分の管轄外のところで手を貸してはいけないの。 だけどここは亜空間だし、それに貴方や黒ちゃんには借りがあるから、これは特別ね」
「カケル、アイツはどうなった? サーフィスを殺した奴は?」
「俺と一緒に爆発した。 助かってはいないと思う」 そう言うと俺は周りを見渡したが、何も見当たらず気配も感じられなかった。
「ありがとう。 敵を討ってくれて」グレンが言った。
「こちらこそ、グレンのお陰で助かったよ」
「さあ帰りましょう」 アリーウエンはそう言うと立ち上がり、空間に扉を開いた。




