39-14 魔王召喚
ラウエルの幕舎
「ラウエル様、申し訳ございません。 ラウエル様に授けていただいた作戦を成功させる事が出来ませんでした」 アレンは跪いたまま、顔を上げることが出来なかった。
「そうか、気にするな」 ラウエルは事もなげに言った。 アレンは叱責を受けるものと覚悟していたので、拍子抜けした。 アレンが退出すると、ラウエルはカウレイに言った。
「カウレイ、そろそろ良かろう。 舞台も盛り上がってきたしな。 奴らに絶望と恐怖を味合わせてやろう」 ラウエルは楽しそうに言った。
「かしこまりました。 では明朝行ないましょう」
翌朝、旧都の王城の庭
カウレイは庭に魔方陣のようなものを描き、その中の星形の頂点に灯りを灯した。 準備ができると、ラウエルのもとに来て言った。
「準備が整いました。 ラウエル様自ら、以前にお伝えいたしました呪文を詠唱ください」 そう言うとラウエルを正面に導いた。 ラウエルは言われるままにその位置に立つと、詠唱を始めた。 するとその場の空気が揺れるような、空間が揺れるような感じがしたかと思うと、魔方陣のようなものが描かれた地面全体から光が発し始めた。 その光は更に大きく強くなると、突如そこに大きな奈落のような真っ暗な穴が空いた。 そしてそこから異形の者が現れた。 その姿は、身長は3メートルを優に越え丸太のような腕や脚を持ち、しなやかなのに鋼のような強さを感じさせる黒光りする筋肉、ナイフのような爪、人とも獣とも違うが見る者を一瞬で恐怖させる顔、燃え上がっているように見える赤い髪の中からは二本のねじれた黒い角が生えていた。 その者はラウエルを冷ややかに見つめていた。
(これが魔王か・・・) ラウエルがそう思ったとき、その者の後から別の者が次々と出てきた。 その者達も最初の者と同様だったが、髪の色や体のつくりなど違っていた。 その内の一人は(人という言い方が妥当なのかは別にして)頭が二つあった。 6人が現れて終わりかと思われた時、穴の周りの光が一層輝きもう一人現れた。 その者は前の6人とは違い、人のように見えた。 身長は180センチぐらいで、体格も普通に見えた。 銀色の髪に金色の目、見た目は20代にしか見えなかった。 だがその見た目とは裏腹にその体からは圧倒的な畏怖のオーラが出ていた。
(こいつだ、こいつが魔王だ) ラウエルは確信した。 穴は縮小して消え、光も消失した。 6人の魔人たちは最後の者を取り囲むように跪いた。
「我を呼んだのは、お前か?」 魔王がラウエルを値踏みするような目で見た。
「その通りです。 魔王様」
「グレリュウスでいい。 それで、我に何を望むのだ」
「世界の破壊と恐怖。 私はこの世界を自分の思うように作り替えたいのです。 そのためには、既存の都市は破壊し従わない者達を一掃するつもりです。 それにお力をお借りしたいのです」
「なるほど、面白そうだな。 良いだろう手を貸してやる。 退屈しのぎにはなるだろう」
「ありがとうございます」
「それで、具体的には何をすれば良いのだ」
「ただ今、我等は敵対する勢力と戦争状態です。 戦況は膠着状態ですので、まずはそれらを蹴散らしていただきたいのです」
「良かろう。 敵はどれぐらいだ?」
「30万以上です。 中には手強い者も何名かおります」
「お前以上の者がおるのか? お前もかなりやるだろう。 ここにいる将軍達と良い勝負をするはずだ」
「恐れ入ります。 ですが向こうの大将は侮れません」
「そうか、それは楽しみだ」




