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39-9 悲哀の大戦(1)

 俺は念話でヒョウマから報告を受けた。

「そうですか。 ご苦労でした」 俺はショックでそれ以上の言葉が出なかった。 レムの貯蔵装置を完全に破壊できなかったと言うよりも、正直なところレオンが死んだことにショックを受けたのだ。

(エレインに何と詫びよう。 ついこの間、エレインに子どもができた事を聞いて喜んだばかりなのに) ジュリアンが幕舎に入ってきた。 目の周りが赤くなっているのが分かった。 レオンの死をホーリーから聞いて、泣いたのだろう。


 「お呼びですか」

「ああ、レオンの件は聞いたようですね」

「ええ、先ほど・・」

「エレインには申し訳ないことをした・・・」

「カケル様が責任を感じられることはございません。 残念なことではありますが、レオンは任務の遂行中に殉死したのです。 本人も覚悟はしていたはずです。 これからまだ多くの方が亡くなるかも知れません。 ご自身をお責めになられてはお体が持ちませんよ」

「ありがとう」

(確かに、まだ戦闘も始まっていないのだ。 これから多くの人が死ぬだろう。 俺が落ち込んでいては、全軍の士気に関わる。 しっかりしろ、俺)

「済まないが、ユウキとスウゲンを呼んでください」 俺は気を取り直すと言った。

「承知いたしました」


 「そうか、そんなことが・・・」とユウキ。

「その黒曜石の柱を二本残してしまったのは、痛いですね。 その二本でどれだけの魔族が召喚できるのは分かりませんが」とスウゲン。

「そうだな、だが大幅に魔王軍を減らすことになったのは間違い無いだろう」

「問題はその魔王軍に銃やバズーカ砲がどの程度効くかですね」とユウキ。

「使える物で、やるしかない」

「そうですね」とスウゲン。


 三日後、紫との境界付近の荒野

 そこは、所々に雑草と岩が散らばった荒れ地だった。 遙か北側は全体的に霧がかかったようになって見渡すことができなかった。 その霧は自然なものなのか人工的に発生させたものかは分からなかったが、微かに紫がかっているように見えた。


 俺達はここに陣を設ける事にした。 中央の小高い丘に本陣を設け、緑の右翼に金、左翼に黒、青、黄が布陣した。 俺の本陣の後ろに対する備えとして、アデル族、エルビン族各5千が配置された。 そして1キロほど左右の斜め前にある丘に、右に銀、藍、橙が布陣し、左に白、水晶、赤が布陣した。 これもユウキとスウゲンが頭を悩ましたところだった。 各軍勢の装備や王同士の相性まで考えなければならなかったからだ。 うまくこの三角形内に敵を引き込めれば、お互いに連携して側面や背後から攻めることができる。 しかしこの連合軍は、ついこの間まで敵同士だったところもあるのだ。 一枚岩とは到底言えず、うまく連携がとれなければ、そこのほころびから崩れだし、なまじ大軍であるだけに収拾がつかずに大崩れする恐れもあるのだった。


 その日の夕方、霧の中から紫の大軍が現れた。 その数、約13万。 アデル族の中の様々な種族が集合していた。 装備も武器もバラバラだったが、その並々ならぬ戦闘力の高さは、姿からでも十分伝わって来た。 彼らは大きく3つの陣に分かれた。 ただそれは、整然と統制のとれた軍隊のそれと言うよりは、種族ごとに集まったものが大きな集合体をなすという感じだった。


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