39-2 王会議
事件の一週間後、緑のレーギア
俺は王会議を招集した。 出席したのは10人の12王、今回シーウエイの他にサツカ、ザウローが参加していた。 更にアドルとアンドレアスは12王として出席していた。 話題は当然、3件の赤い光の球の件だった。
「あの赤い光の球は、紫の攻撃で間違いないのですか?」 ギルダは王都の上空を飛んでいく赤い光の球を目撃していたのだ。
「間違い無いでしょう。 それは“神威”と呼ばれる、12王の盟約で封印された秘術です」 俺はギルガズーラとの戦いのことを思い出しながら言った。 アドルは頷いた。
「でもなぜ、そこが狙われたのでしょうか? 我等への攻撃が目的であれば、直接緑のレギオンを狙うのではないでしょうか?」とアドル。
「報復だろう、裏切りに対する」とアンドレアス。
「なるほど、こちらに寝返ったギスガルとメルーニアに対する報復ですか。 だがそれならば銀の王都が攻撃されたと言うことは・・・」ヒョウマがシーウエイの顔を見た。 他の王達もシーウエイの方を見た。 シーウエイは何も言わず、顔をしかめた。
「しかし、いずれも王都の直撃は避けられたようですので、不幸中の幸いでしたね」とミーアイ。
「恐らく、狙いが外れたのではなくて、わざと被害が大きくなりすぎないように、人が少ないところに落としたのだと思います」とシーウエイ。 脇に控えていたユウキとスウゲンも頷いた。
「なぜ、そんな事をする必要があるのでしょう?」とサツカ。
「警告でしょう。 いつでも攻撃できるぞ、大陸のどこでも攻撃出来るぞという」とシーウエイ。
「それはつまり、『我々を攻撃すればこれを見舞うぞ』という警告と言うことでしょうか」とザウロー。
「いえ、その逆のような気がします。 私も詳しくその理由は分からないのですが」とシーウエイ。
「それについては思い当たることがあります。 スウゲン、説明してくれ」俺はスウゲンに言った。
「はい。 それについては、私見がございます。 しかしその前に、紫の王について分かっていることをお伝えしたいと思います」 スウゲンはラウエル王についての情報を説明した。 各王達はそれを聞いて、声が出なかった。
「これらの情報を踏まえた上で、私の推測はこうです。 ラウエル王はこの大陸を征服して、自分の思うような世界に作り替えようとしているのは間違い無いと思われます。 しかしその方法は、一度この世界を破壊し尽くそうとしているのではないかと考えます。 そしてそれに反対するであろう12王の勢力を一気に殲滅しようとしているのではないかと。 だから各12王達が争っている時には、積極的に出てこずに誰が王達をまとめるのか見ていたのだと思います」とスウゲン。
「しかし、それだったら、紫が白や金を攻めたのは、辻褄が合わないのではないか」とアンドレアス。
「それは恐らく、途中で部下達がどの程度やれるのかを試してみたのではないかと考えます。 その証拠に、白にしろ金にしろその保持にさほど執着しているようには見えませんでした。 どうしても守りたかったら、紫から更に援軍を送るのではないかと思います」
「なるほど」
「そのためラウエル王は、ここに来てカケル様を中心にまとまった軍勢が、紫に攻め込んで来るのを待っているのだと考えます」
「何だって、じゃあ大軍で攻めて来るのを待ち構えているというのか? 有り得ないだろう」とザウロー。
「いえ、その通り待ち構えているのです。 しかも多ければ多いほど良いと考えているのでしょう。 だから我々が紫の軍勢を甘くみて、少ない兵力で攻めて来ることに対して警告を行なったのです。 『攻めて来るなら、全力で来い』と」
「どこから来るのだ、その自信は」とヒョウマ。
「ラウエル王には、数万の魔王軍を召喚する力があるという話です」とスウゲン。
「何だって!」一同は言葉を失った。
「ラウエル王は、それで一気に数十万の敵を殲滅する自信があるのでしょう」
「何と言うことだ」とアンドレアス。
「では、我々はどう戦うのですか」とターニャ。
「それについては、まだ具体的な方策はありません。 ただ言える事は、我等が力を結集しなければ勝つことは出来ないと言うことです」俺は言った。
「いつ頃、戦いになるとお考えですか」とアンドレアス。
「まだ新体制が落ち着いていないところが幾つもあります。 最終決戦は来年の春になるだろうと考えています。 ですので、各王はそれまでに、出征の準備をお願いします」と俺。
「承知いたしました」 王達が応えた。