38-12 金への侵攻(2)
翌日、ガルバー王は驚いた。 昨日の時点では金とアストリアが東西に対峙し、タイロンはアストリアの南に、ボスリアは北側に布陣していた。 対してギスガルは金のレギオンの南に、メルーニアは北側に布陣していたのだった。 それが今は、メルーニアはギスガルに並びタイロンに対峙している。 ガルバー王が驚いたのはボスリアの隣、両軍勢の間の北側に緑のレギオン軍がいつの間にか布陣していたのだった。 その数、およそ2万。 そして整然とした緑の軍服の兵士達の威容に、自軍の兵との差を感じ取った。
「いつの間に到着したのだ? 縮地門を使ったのか? それでもこんなに大量の兵を移動などできないはずだ」とガルバー王。 種を明かせば、夜中にユウキが俺を迎えに来てこちらに着いた。 それから俺のゲートで2回に分けて兵を移動させたのだった。
俺は夜明けと同時に攻撃命令を出した。 エランの特殊部隊は、まずアデル族の兵達の真ん中にバズーカを次々に撃ち込んだ。 そして混乱しだしたところへ10台の機関砲の一斉射撃をくわえたのだった。 機関砲は三本の銃身を備えそれが回転しながら銃身の放熱を行なう方式に改良した。 これは銀のレギオンの加工技術の協力によって作成可能になったのだった。 強靱な体と驚異的な戦闘力を誇るアデル族の兵達でさえ、腹に大きな穴が空き、腕や脚が吹き飛ばされ、次々に倒れていった。 戦場には爆発音と機関砲の機械的な連続音、そして金の兵達の悲鳴が響き渡った。
緑のレギオンの攻撃が一段落したところで、アンドレアスは突撃を命じた。 金の軍勢は、出鼻をくじかれ混乱しているところへ、アストリアの攻撃を受けて、守勢に回ってしまった。 それと同時に緑のレギオンからは、ガーリンとゲランが歩兵部隊を率いて攻撃を開始した。
ガルバー王は目に前の光景に驚いていた。
「なんだこの戦いは・・・。 見たことも無い武器に、あの威力。 あの恐ろしい魔人族の兵達が次々に討ち取られていく。 信じられない」
「ガルバー様、いかがいたしますか?」 指揮する将軍が王に尋ねた。
「攻撃だ。 全軍攻撃だ!」 ガルバー王は我にかえると、将軍に命じた。
「どちらをですか?」
「ば、バカ者、魔人族に決まっている。 アストリアを攻撃して見ろ、あの恐ろしい武器がこちらに向って火を噴くぞ」
「はっ!」 将軍は全軍に攻撃命令を伝えた。
この展開に動揺している軍勢は他にもあった。 ギスガルとメルーニアである。 指揮している将軍は、どちらも国王から命を受けていた。 勝つ方を見極めて、そちらにつくように言われていたのである。 両軍とも戦闘が開始されてもしばらく軍勢を動かさなかった。 その様子を見ていたタイロンのグレオ王は、ギスガルとメルーニアを無視して金への攻撃を命じた。 これによって金は多方面から同時に攻撃され、一気に苦境に立ったかに見えた。 それを見てギスガルの将軍は、意を決して兵達に攻撃命令を出した。 攻撃先は金の軍勢だった。 そしてメルーニアの軍勢もそれに同調したのだった。
金の軍勢はこれで完全に孤立した。 背後を除く全ての方向から攻撃を受けていた。 金のレギオン5万に対して緑の連合軍20万である。 金の敗北は決定的に思われた。
「ここまではうまくいっているようだな」 俺はユウキに言った。
「そうだな。 うまくガルバー王の尻を叩いて戦闘に加わらせて、ギスガルとメルーニアをこちら側に引き込むことに成功した。 だが、ここからだ。 奴らもここで簡単に白旗を揚げるとは思えない」
「そうだな。 特にあのゲブラという男は要注意だ」
金の本陣
「何と言うことだ。 やってくれたな、緑の王め!」 ゲブラは怒りに、握った拳が震えていた。
「南のギスガルとメルー二アが寝返りました」兵が報告した。
「風見鶏め! ソアラに対処させろ」兵に命じた。
「ゲイブ、ここは任せる。 俺は前線の立て直しをしてくる」 ゲブラはそう言うと、騎竜にまたがり前線の方に出ていった。